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コラム・エッセイ「特筆すべき点P」(無料)

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脈絡のない思いつきを長々と書いているシリーズです。
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#倫理

社会と芸術の間には相互詐欺関係がある

 芸能人が薬物使用で逮捕され、携わってきた作品が次々と回収されている。やめてよ。  やめてよと思うと同時に、作品の権利元である企業の立場を想像すると、そりゃ自粛したくもなるよな、とも思う。「犯罪者が関わった作品を販売することで、間接的に裏社会に寄与している」という指摘は、たしかに正しい。問われるとすれば指摘の真偽ではなく、それを踏まえた上で容認し作品を販売し続けるべきなのか否かだろう。  企業が自粛を選ぶ動機はとても単純明快だ。社会の中で商売をするうえでわざわざリスクを取

なぜ「愛される厄介者」が存在するのか

「愛される厄介者」とでも言うべき人がいる。  実例をフィクションに絞れば、たとえば『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両津勘吉であるとか、『男はつらいよ』の車寅次郎、『天才バカボン』のバカボンのパパなどが挙げられる。  彼らはみな自分勝手、欲望に素直で、周囲に迷惑ばかりかけている。なのに、人々に愛されているように見える。事実、読者には愛されている。 「どうしてあんな迷惑なやつが愛されているのかわからない」という人もいるが、それはむしろ基本的に彼らが愛されているから出てくる