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脳に電極挿したらダメなのか

2015年のブログ記事に加筆修正を施したものです。

ピクサー映画は面白い。面白すぎる。という話を聞いた。

作り方が特殊なのだそうだ。

まず複数人に脚本を何本も書かせ、それぞれの面白い部分を抽出して一つにまとめているらしい。構成もたくさんの人で練りに練って、最高のものを出す。一人のひらめきに頼らなくても、大人数で面白い話を確実に作れるシステムができているわけだ。

「そんなん客をくすぐってるのと同じじゃないですか。ズルい」
と僕はその話を聞いて冗談交じりに言った。

でもよく考えていることがある。

人間が「面白い」と感じる要素は限定されている。
だから、面白のツボを突くものさえ書けば、(技術的な難しさは別として)確実にウケる。理論的には。ハリウッド映画の構成が似ているのは、そのパターンが一番面白いと思われやすいからだ。

だったら、脳を直接いじくればいいんじゃない?
人が「面白い」と思うときは、脳の特定の部位が活動しているはずだ。そこに電極かなにかを突き刺せば

「あぁ~~~面白い、面白いよぉ~~~!
 おもしろが直接流れ込んでくるよぉ~~~!! うきゃきゃきゃきゃ」

ってなるんじゃない?
今の技術では無理でも、理論的にはありえると思う。

問題は、そういう技術ができてしまったとき、全てのエンタメはその装置のできそこないに過ぎないものに成り下がってしまうのだろうか、ということだ。

ショートコントを見せるかわりにワキをくすぐって笑わせたとする。それには「体が反射してるだけで本当に面白くて笑っているんじゃないからダメだよ」と言える。
だが「脳に電極」の場合は、脳のおもしろ検知回路を直接フル稼働させてるのだから「本当に面白くて」笑ってるのだ。それともそういうものは、「本当に面白い」とは言えないのだろうか。

なにかしらワンクッション挟まないと「本当」じゃなくなる?

「ドラッグで得る快楽は本当の幸せじゃない」という話に似ているな。
もちろん、ドラッグで得ているのも本当の幸せだ。多少下品かもしれないが。

ピクサー映画の製作法が究極的に効率化したら、そういうドラッグじみた装置になっていったりしないだろうか。画面の規則的なフラッシュで観客をトリップさせ始めたりして。

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