見出し画像

下駄箱からラブレターが溢れ出す描写

『まんがくらぶ』2015年9月掲載のコラムを加筆修正したものです。

 最近、学園もののマンガに登場する「ものすごくモテる人」が気になっている。理由はいくつかある。 


 まず容姿だ。マンガの「ものすごくモテる人」は、ほとんどみんな美男美女という設定だ。だがマンガは絵なので、「美男美女」と「そうでない人」に現実ほど見かけの差がない。人によっては髪型しか違わなかったりする。 

 だから、脇役たちが「あの人カッコイイ!」とか「あこがれる~!」とか噂したり、背景に花を背負っていたりして、やっと読者は「ああ、こいつは美形の設定なのか」と分かるわけだ。

 すると今度は「美形でない人」として登場するキャラクターの扱いが問題になる。

 えっ、読者からしたら同じくらい「かわいい/かっこいい」見た目のキャラクターだけど、作中の扱いが違うってことは実際はそうじゃないの? 読者にはそう見えてるだけなの? と少し混乱してしまう。マンガに限らず、実写ではこの混乱はより強くなる。美男美女の役者が、「冴えないやつ」を演じているドラマなんかは多々あり、似たような違和感をおぼえる。 

 もう一つ気になること。「ものすごくモテる人」が下駄箱を開けると大量のラブレターがバサバサと落ちてくる描写だ。

 あれの、ラブレターを入れる側の心理が気になる。最初の1人めはいい。2人めは、すでに1通ラブレターが入っている下駄箱に自分のラブレターを追加したはずである。

 でも、それは気分的にどうなんだろう。自分より前の奴のラブレターをコッソリ捨てたくなりそうなものだが、そういうことは起こっていないらしい。それと、扉を開けるだけでバサバサ落ちるほど詰まっているということは、終盤に手紙を入れる数人も開けてバサバサ落としているのではないか。それを拾い集め、自分の手紙を加えて下駄箱に詰め直す。律儀な連中だ。


 いや、おそらくこういうことなのだろう。皆が好き勝手にラブレターを渡せると、必ず抜け駆けなどの謀略と混乱が起きる。私たちは争うために団結すべきだ。そう誰かが提言したのだ。

 そして、手紙を回収する代理人システムを構築したのだ。代理人がラブレターを回収し、全員分のラブレターを下駄箱に同時に一気に詰めこむ。そうすれば純粋にラブレターの質だけが評価され、不正は行われにくくなる。代理人が裏切る、懐柔されるなどの懸念点はあるが、基本的にすばらしいシステムではないだろうか。


 だが、現実は(マンガは)無情であり、そのようにして投函されたラブレターがまともに扱われることは全くない。いきなり現れた部外者(主人公)が手柄をかっさらってしまうのだ。

 月額の『ウーロン茶マガジン』か『黒ウーロン茶マガジン(50円高い)』を購読している人は、同日更新の日記で軽いあとがきを読むことができます。

スキを押すとランダムな褒め言葉や絵が表示されます。