見出し画像

エンドラインからの景色 vol.40 ELITE8 サンロッカーズ渋谷U18 vs 名古屋ダイヤモンドドルフィンズU18

 エンドラインからは選手たちの熱く激しいプレーや、そこからしか見えない表情がある。ダブドリ編集部が撮影した中から厳選し、写真とともにゲームを振り返っていく。vol.40では、10月22日に行われたB.LEQAGUE U18 ELITE8のサンロッカーズ渋谷U18 vs 名古屋ダイヤモンドドルフィンズU18をピックアップ。最後に両チームのヘッドコーチ、選手の会見を掲載。(写真・文 = 宮本將廣)


名古屋ダイヤモンドドルフィンズU18 大西順ヘッドコーチ

宮本 SR渋谷U18はBユースの中でサイズが大きいチームであり、U18日清食品ブロックリーグにも出場しています。名古屋DDU18にとっては自分たちの力を証明する、現在地を把握する試合でもあったと思うですが、ヘッドコーチはどのような捉え方をされて試合に向かったんでしょうか?
大西 お互い色々な立場があって、様々な経験は積んできていると思います。一番フォーカスしたのはこの試合がELITE8の初戦であり、リーグ戦、そして高校生のゲームということですね。なので相手をスカウティングするというよりは、自分たちらしさをいかに表現できるを大切にして準備してきました。
宮本 僕の印象論になりますが、若野選手、今西選手がメインというか、彼らが素晴らしい選手でありつつも、彼らの個により過ぎた時間帯もあったように見えました。自分たちらしさを出すために彼らの個を強調したのか、それとももう少しチームバスケットをしたかったけど、苦しい場面で彼らに偏ってしまったのか。その辺りはどうでしょうか。
大西 なるほど、そうですね。3クォーターで20点ぐらい離したところでは自分たちらしいバスケットができたと思います。その中で、最後の局面ではそのゲームの一番いい選手がゲームを占めるべきだと考えているので、若野や今西のような選手がボールを持つことは必要であるとも考えています。一方で試合を通してそればかりでは勝利することは難しいと考えています。キャプテンの佐藤も今日は当たってなかったですが、チームのベストシューターですので、その日に調子のいい選手が柱になってプレーすればいいと考えています。サブのメンバーも含めて、彼らの特徴はコーチである僕が一番わかっているので、その選手たちを輝かせるためにはどうすればいいか。選手はみんな試合に出たいと思いますけど、当然5人しか同時にコーチに立つことはできない中で、今日のようにベンチでも盛り上がってくれてたことはすごく良かったと思います。僕らのプレーで盛り上がっているのはベンチだけみたいな感じありましたからね(笑)。
大西・宮本 ハハハハハ。
大西 そういう意味で、これがアウェーだっていうところも彼らは感じてくれたと思います。ELITE8はホームアンドアウェーがあるので、アウェーの環境で自分たちらしいプレーをすることはすごく大切だと思うので、そういったところにフォーカスしましたね。
宮本 アウェーでの戦い方は、選手たちに準備の段階から伝えていたんですか?
大西 そうですね。今、トップチームも自分たちらしくあるということを掲げています。今回はアウェーなので、僕らへの応援はそんなにないよということをしっかりと伝えて、練習をしてきました。もちろん僕らも試合は県内だったり、東海地区の部活動さんなどと様々な試合をこなしています。なので、ここだけにフォーカスするわけではないんですけど、ELITE8に関しては初戦だったので、この1、2週間はここに向けて準備をしてきたというところですね。
宮本 初戦が終わったタイミングで聞くのも少し気の早い話なんですが、ELITE8からU18CHAMPIONSHIPが続く。INTERNATIONALCUPも含めて、集大成としてどんな積み上げしていきたいとお考えですか?
大西 おっしゃる通りで、リーグ戦が開催されているところにトーナメントが入ってくる日程になります。リーグ戦の中に天皇杯が入ってくるような形で、それはむしろトップチームと同じだと考えています。当然ですがその難しさはあって、一発勝負のトーナメントは選手起用もリーグとは変わってくると思います。ただ育成という側面があるので、全体を通して勝ち切ることを大切にしながら、多くの選手に経験を積んでもえるようにすることが大切だと考えています。今日もアウェーの環境でベンチにいるだけでも感じることがあったと思うし、コートに立てばより感じることがあったと思います。それを体感してまた日々の練習に活かしてほしいと伝えましたし、名古屋に残っている選手もいるので、ここに来た選手たちにはそれを残っている選手に伝えてほしいと思っています。

名古屋ダイヤモンドドルフィンズU18 佐藤遼乙キャプテン

宮本 勝利おめでとうございます。試合を終えて、率直にどうですか?
佐藤 今までなかなか勝てていない渋谷さんが相手ということで、彼らの強みであるリバウンドとゴール下のプレーに対しての練習をしてきました。リードし続けて試合を進めることも過去にはなかったので、結果以上に自分たちの成長を感じることができました。
宮本 4クォーターで追い上げられましたけど、最後はそれをしっかりとはねのけることができたのはそのあたりの準備で自信を持つことができたんですか?
佐藤 そうですね。僕たちは展開が悪い時の傾向として、ガードのボールプッシュが遅かったり、リバウンドが取りきれなくて相手にセカンドチャンスを与えてしまったりして、試合のテンポを上げられないことが多いんです。その結果、ハーフコートのオフェンスでボールを持つ選手が固定されてしまって、周りの動きもなくなってくるっていう悪循環になってしまう。4クォーターで追い上げられた場面はそんな自分たちの悪い展開に持っていかれそうだったんですが、この試合に関してはしっかりと自分たちのやるべきことに集中できたので、最後に自分たちの流れに持っていけることができたと感じています。
宮本 そこを耐えて、自分たちのやるべきことに集中できたのはキャプテンとしては何が良かったと感じていますか?
佐藤 まずはコーチやスタッフの方が丁寧にスカウティングをしてくれて、練習の時からみんなでコミュニケーションをとってできたことが大きかったと思います。あとは試合の中で、苦しいときも選手同士で気づいたところを話したり、いい声かけができていました。コートの中でも「ここは我慢しよう!」とか、チーム全員で声をかけてメンタルを保てたことがすごく良かったと思います。


サンロッカーズ渋谷U18 森茂達雄ヘッドコーチ

宮本
 第1クォーター序盤に5人全員交代をしました。僕としてはネガティブだったと捉えています。スタートの5人がゲームのトーンセットができなかったと感じたのですが、ヘッドコーチとしてのあの交代の考えと意図を伺いたいです。
森茂 実は昨日から早めに5人を交代することは想定していました。昨日の練習でセカンドチームが良かったので、スタートがあまり良くなければすぐにセカンドチームを投入してリセットしたいと思っていました。
宮本 ゲームプランとして考えていたことだったということですが、並行している他のリーグ戦で勝ちきれないという経験から、スタートのメンバーに自信がなくなっているのかなとも感じたのですが。
森茂 私としては、おそらく対応の仕方をどうすればいいかという部分だと思っています。正直かなり多くの情報が上がってきて、彼らに与えられています。U18日清食品ブロックリーグ、東京都リーグと様々な相手の情報が1週間の中で入ってきて、3日ぐらいの練習で落とし込まないといけない。今回の名古屋戦も3日ぐらいで対応の仕方を落とし込みました。今まではあまりなかった環境に彼らは置かれています。その中で、かなり迷いが生じているなと感じています。それは情報を与えて落とし混んでいる僕らの問題でもあるので、コーチ陣も整理をしないといけないと思っています。もう少し単純に彼らの持っている能力をコートで出せるような状況にしてあげたほうが、相手にいいところを出されたとしても彼のポテンシャルでやり返せるところがあるのかもしれない。ただプロのユースである以上、そこのクリエイティブや質ですよね。そのあたりにこだわりを持たなければいけないと思っているし、それを彼らには身につけてほしいと思っています。目の前の試合を絶対に勝たないといけないのであれば、方法論は変わって来ると思うのですが、一番は今シーズンが終わった時に彼らがクリエティブに物事を考えて、バスケットボールをすることを覚えてほしい。そうすれば、来シーズンはさらにいいバスケットができるのではないかなと思っています。正直、コーチとしてもそのあたりの葛藤はすごくあります。
宮本 そうですよね。みんなの成長は感じますが、だからこそスタメンが試合のトーンセットをしてくれないとセカンドチームも勢いを加速させるというよりは、トーンをセットし直すという形になってしまうのかなと……。
森茂 そうですね。だからこそ甲斐はこのチームにとって貴重な選手だと思います。彼は流れを変えることのできる選手です。サイズはないですが、クリエイティブにゲームをコントロールすることができて、強度の高いディフェンスやオフェンスができるようになれば、彼はより個性を出していけると思います。Bユースで中でサンロッカーズ渋谷U18はサイズが大きいので、サイズの大きな5人を揃えるべきと思われるかもしれませんが、5人で試合をするわけではありません。スモールと言われる選手たちも甲斐のように個性を表現できるようになれば、より良いチームなっていくと考えています。

サンロッカーズ渋谷U18  甲斐達弘

宮本 今日の試合の総括からお願いできますか?
甲斐 今日の試合は緊張もあったのかもしれないですけど、試合の入りがソフトで、それが相手に流れを持っていかれる要因になってしまったと思います。やっぱりリバウンドだったり、ルーズボールだったり、自分たちのアイデンティティの部分で負けていたところがありました。自分たちが後手に回ってしまって、それがプレーにも現れてしまったと思います。ただ、その中でもしっかりと追い上げられたところもあったので、いい部分を最初から出せるように来週に向けて修正していきたいと思います。
宮本 この試合に限らず、かなりゲームチェンジャーとして甲斐選手はいい働きをしていると感じています。前半に甲斐選手がコートに入ってから、オフェンスのエントリー、ディフェンスのキャッチアップも速くなった印象がありました。そのあたりは意識してコートに入ったんですか?
甲斐 そうですね。自分がコートに入る時はディフェンスの強度をあげたいという狙いが多いです。コーチの考えをしっかりと理解して、それを遂行できるように意識しています。今日だったら、キャッチアップのところで遅くなってしまっていたのでそこは意識してプレーしました。
宮本 ポイントガードという部分では、スタートの松下選手とはタイプが違う。そこのコントラストが僕はすごくいいなと思っているんですけど、彼と変化をつけていこうみたいな意識は持っているんですか?
甲斐 (松下)湊人くんは攻撃的なポイントガードでスコアができる選手です。自分はどちらかというとコントロールするタイプなので、チームの狙いをしっかりと遂行できるようにやろうと思っています。
宮本 今日の後半はプレータイムがなかったですが、ベンチから見ていて、自分が出ることができたらこういう風にプレーしたなとか、感じたところや考えがあったら聞きたいです。
甲斐 後半も必要ないターンオーバーが目立っていたので、そこはなくさないといけないなと思いました。ただターンオーバーが続いても、前半よりも強度高くプレーできていたと思うので、負けてはしまいましたけど、前半の反省点は修正できていたんじゃないかなと感じています。

サンロッカーズ渋谷U18 小川魁斗

宮本 高校バスケから7月のトライアウトでサンロッカーズ渋谷U18に加入したということですが、小川選手の中で、高校バスケからBユースに加入してアジャストしたところがあれば伺いたいです。
小川 インサイドにボールを入れること、入れ方はかなり意識しています。プレースタイル自体はそこまで変わらないんですが、高校の時はセンターが1人であまりポストプレーが得意なタイプではなく、アウトサイドのプレーが得意だったのであまりインサイドにボールを入れることがなかったんです。サンロッカーズ渋谷U18にはいいインサイドプレーヤーがいるので、インサイドフィードの練習は入団してから師玉コーチにかなり教えてもらっています。高校バスケの時はポイントガードだったので、アウトレットパスをもらってトランジションのところを大事にして、勢いでバスケットをしていました。サンロッカーズ渋谷U18では、ハーフコートのオフェンスもすごく大切にしているので、相手を見てプレーをする意識がすごく高くなりました。
宮本 話してくれたように、高校バスケはボールプッシュがかなり速いと思うのですが、特に今日のサンロッカーズ渋谷U18はちょっとトランジションが重くて、エントリーもいい流れでフロントコートに入れない時がありました。コーチ陣もベンチからかなり指示が飛んでいたように見えたんですが、どちらのバスケットも経験している小川選手はそこのスピード感の違いで感じていることはありますか?
小川 正直、全体的には少し遅いなと感じることはあります。ただ名古屋ダイヤモンドドルフィンズU18さんのディフェンスがかなり前からプレッシャーをかけてきていた印象です。その中でガードが孤立すると良くないので、まずは安全に運んでそこからプレーを作っていく方が重要ではあったと思うので、今日に関しては遅いなということはなかったと感じています。

日本バスケの原石たち サンロッカーズ渋谷U18 松下湊人

ダブドリVol.18 10月27日に発売!

ダブドリ有料コラム「ブリッジ」毎月更新中!
最新号「Bリーグで一番ハングリーな男」岡本飛龍の切り開く力

THE RISE 偉大さの追求、若き日のコービー・ブライアント 発売中!

ダブドリのもう一歩内側へ!メンバーシップはこちら👇
有料記事の「ブリッジ」「みやもんのバスケットnote」他、有料コンテンツを月額500円で全て読めちゃう!


この記事が参加している募集

Bリーグ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?