見出し画像

光の暴食(日記の練習)

2023年7月27日(木)の練習


 朝、あまりの暑さに駅にむかって通り抜ける路地の端で鼠がのびていた。四肢をだらしなく方々にのばしていて、もしかして車に轢かれでもしたかと思ったが、瞳はきょろきょろと動いている。鼠さえのびてしまう暑さよ、と駅までの道を歩いていたが、よく考えると鼠ののびていた場所はクリーニング店の裏口で日陰になっていた。ただ涼んでいただけなのかもしれない。

 蔵前のCielo y Rioで友人とお昼を一緒にする。ランチタイムはやや過ぎていて、勤め人よりは家族連れで賑わっている。ゆったりひろがるオープンテラスもあるが、さすがにこの暑さだからわざわざ外で食事をしているひとはいない。おかげでテラスに面してガラス張りの窓からは、さえぎるものなく隅田川が見下ろせる。人工照明はほとんどなくて、窓から射す夏の陽光が明るく照らしている。人工照明は光から逃げ場をつくってくれないけど、陽光はかならず空間のどこかに薄暗がりをつくってくれる。それが心地よく感じる。
 家族連れにかこまれて、こっそり生ビールで乾杯する。

 今日一日がんばったご褒美に、御茶ノ水の竹やに行く。木曜日とは思えない賑わい。隅の席でひとまず生ビール、それとコンビーフとキャベツ炒めを頼んだものの、生ビールはきても料理は一向にこない。いつもならどれほど遅くても十分ほどでくるのが、三十分が経ってもこなくて、ビールもほとんど干してしまう。最近注文がスマートフォンでQRコードを読みこむ方式に変わったので、そもそも注文が通っているかしらと試しに追加でタコの唐揚げも頼んでみたら、ようやく唐揚げと一緒にキャベツ炒めもくる。そのあとはカンパチの刺身と真澄。
 そうしていると閉店の時間もちかくなって、〆のうどんをどうしようかメニューを眺める。冬季は牡蠣みそうどんという完全な正解を見つけているものの、夏季はまだ正解を決めあぐねている。困ったら名物の海老天カレーうどんを頼むが、日本酒との相性は可もなく不可もなくという感じ。先日注文した夏季限定の冷やし和風坦々うどんはししとうのてんぷらも乗っていて美味しかったけど、日本酒にはあわないだろう。普段は頼んだことのないものにしようと、鴨南うどんに勢いでお餅もつける。鴨肉の香りがほんのり漂うおつゆがお餅ともよく合う。日本酒とは言わずもがな。しかし、日本酒を飲んでいるものあってかお雑煮を食べているような感覚がある。暴食。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?