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ふみ

愛猫を亡くして8年が経つ。名前はピース。名づけ親は私の母だ。

家庭内カーストをよく理解していた猫で、私をカースト最下位と感じたのであろうピースは、しょっちゅう私と遊んでくれた(正:遊ばれていた)。

当時、ピースは家も外も行き来できる「放し飼い」をしており、完全室内飼いはしていない状態だったのだが、

ある日。私が学校帰りに自宅の鍵を忘れて玄関前で落ち込んでいると、外で遊んでいたピースが私の隣にスッと並び、

ただただ鍵の持ち主(親)が帰る頃まで傍にいてくれたこともあった。そんな妙な落ち着きようも好きだった。

(……そんな日もあったが、私が鍵を忘れることはしょっちゅうあったので、共に待機することに飽きたピースがスタスタ去っていくことも山ほどあった。ムチャクチャ寂しかったな!)

(ピースが家の中・私が家の外にいて、窓越しに対面しながらも知らん顔して遠くの部屋へ去っていくことも山ほどあった。ムチャクチャ寂しかったな!)

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語り始めたら終わりが見えないくらい数々の思い出をくれたピースの死因は、野良猫から噛まれたことによる影響を受けた猫エイズだった。

ピースが家の外へ出たがるようであれば出して遊ばせる「放し飼い」をしながら共に暮らしてきたことが災いした。

今でこそ放し飼いは怖いと思えるが、当時は知人の飼い猫たちも放し飼い中心であったり、実家も比較的のどかな場所にあったりしたので、あまり危機感を覚えることがなかった。

そして何より、猫エイズに関する知識が皆無であったのだ。

ピースがだんだんと弱っていく様子を見届ける日々は苦しかった。

なぜ完全室内飼いを一度でも検討しなかったのかと何度も悔やんだが、いくら悔やんでも時間が戻ることはなく。

大切な家族がひとつの小さな命を終えてしまうことは、こんなにつらいものなのかと痛感した高校時代だった。

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その後も、何度か生き物と暮らしたくなることや、飼うことを人に勧められる機会はあった。

だが、ピースの最期を思うと背負うものがあまりにも重く感じ、もう生き物と暮らすことはできないと強く思っていた。

なのに、ふと。ピースを亡くして8年が経ち「もう一度猫と暮らしたい」と考えた瞬間があった。

忘れないように書いておこう。
2019年8月2日。昼下がりのことだ。

我ながら不思議だった。

もしかすると、その前日に恩師宅を訪ねて飼い犬や家族との団欒を見ていたので、羨ましく感じたのかもしれない。

いつも友人宅で見かける飼い猫のコナさんが、とても可愛らしいことも関係しているのかもしれない。

とにかく、後になって考えれば思い当たる節が色々あるにはあるけれど。突然、我が家に猫を迎え入れたくなったのだ。

これまで頭を抱え、悩み、踏み止まった約8年は何だったのか?……

そんなこんなで、いざ猫に関する情報を調べてみると(急展開)たまたま見かけた保健所のホームページに「譲渡希望猫」の欄があり、

ピースの小さい頃にそっくりな子猫の画像が掲載されていた。

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ものすごくカワイイ……!運命!?

これは運命に違いない。急に思い立って調べ始めたばかりなのに、ここまでピースそっくりな子が載っているなんて……等々、色々なことを思った。

もう、飼う・飼わないを決断するよりも前に保健所に連絡だけ入れて、まずは実際に子猫の様子を見に行くことに。

保健所に辿り着くまでは考え事の多い道中だった。

やはり頭を過ぎるのは、愛猫ピースの最期だから。

こんなにも突発的な行動をしてよいものだろうか。

画像で見たあの子猫を一目見るのが楽しみである反面ネガティブなこともたくさん考えてしまったが、そうこうしているうちに保健所へ到着する。

ありがたいことに、ホームページに掲載されていた子猫を触らせてもらえることに。

その子猫を実際に触れてみると、とても大人しく、腕の中で小さく抱かれてくれて。

そして何より、ピースの小さな頃と本当によく似ていた。生まれ変わりなのではと思ってしまうくらい。

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思い悩んでいたことがスッと消えた気がした。その場で引き取ることを決めたと同時に、名前も考えた。

「ふみ」と名づけようと思う。

実のところ、保健所へ向かう以前にホームページを見た段階で、もし名づけるとしたらどんな名前がいいだろう?と想像もしていたのだ。

保健所までの道中は色々悩んだはずなのだが、もう自分の中では引き取ることが決まっていたんだろうな。今となってはそう思う。

ここ数ヶ月は、あまりよくないことが続く日々で、落ち込んでばかりいた。

そんな中、この子と巡り会えた幸せがただただ嬉しい。これ以上に嬉しいことは、これから先そうないだろう。

とにかく、8月2日!
とても素晴らしい日をありがとう。

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(あ、ちなみに引き取りに参るのは8月13日以降でして、まだ我が家には来ておらず!待ち遠しい!)

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