見出し画像

ノンサッチ自警団新聞/Vol.14

【2019年11月12日】Vol.14 速報!クリス・シーリー、The Current出演

2019年11月11日、クリス・シーリーがミネソタ公共ラジオの音楽番組"The Current"の中のライヴ・スペシャル<MicroShow>に出演。マンドリン一本勝負の完全ソロ・パフォーマンスで全6曲を披露した。
これがあまりにも素晴らしかったので、当自警団としてもひとりでも多くの方にお知らせする使命を感じてあわてて号外を発行した。
収録はミネアポリスのライヴ・スペース"the Fine Line”で、番組リスナーを招待しての公開録音としておこなわれた。

▼公開録音の完全版(全6曲)はこちら。

1.My Oh My(パンチ・ブラザーズ)
2.Atta Boy(ゴート・ロデオ・セッションズ)
3.True Love Waits(レディオヘッドのカヴァー)
4.Dionysus(LIVE FROM HERE "Song of the Week"より)
5.バッハ: 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ集から"ジグ"
6.Rabbit in the Log(モンロー・ブラザーズほか)

▼放送から1年後、The CurrentのYouTube公式チャンネルには後半の「Dionysus」、バッハ、「Rabbit in the Log」の3曲だけの編集ヴァージョンがアップされた。アップされた理由が1周年記念なのか何なのかわからないが、せっかくなのでリンクさせてもらっておく。なお、この映像の概要欄にはクレジットなど詳細も掲載されている。

●本紙でもセトリを掲載したが、短い時間ながら見事な選曲だった。パンチ・ブラザーズとゴート・ロデオのレパートリーをソロという形態で演奏し、レディオヘッドとバッハとブルーグラス・スタンダードをひとつのステージの中で演奏するというシーリーらしい"幅”を見せ、そして当時は彼の活動における核となっていた自身の番組からの新曲を披露するという、まさに2019年のクリス・シーリーという現状を30分間に凝縮したような素晴らしいステージだった。

Instagramに投稿した本紙にノンサッチ公式さんがコメントしてくれて、で、素晴らしいパフォーマンスだったねー、ねー、とちょっと盛り上がってしまった。いかに、この時のシーリーが凄かったかを証明するエピソードである……かどうかはわからないが、とにかく、めちゃ興奮した。そして、公式さんも同じくだったと思われる。ので、これも記録として貼っておく。

●そして。偶然にしてもすごいタイミングだと思うのですが、今回、このアーカイヴを投稿する直前にクリス・シーリーが今年(2021年)6月に新作『Laysongs』をリリースするというニュースが飛び込んできた。しかも、初めての完全ソロ・アルバムだという。つまり、この番組と同じく、歌とマンドリンだけの弾き語りスタイル。
ということで、当団としても非常にもりあがっていてまたしてもソッコーで速報を発行したばかりだった。ので、よろしければそちらもご覧ください。

そして、久しぶりにこのThe Currentの映像を鑑賞しながら、ふと、もしかしたら、この番組を収録した頃、すでに彼の中では完全ソロ・アルバムの構想が温められていたのではと思った。

そう考える根拠のひとつは、言うまでもなくThe Currentでのパフォーマンスが特筆すべき素晴らしい出来だったということ。この時期、パンチ・ブラザーズとしても高い評価を得ていたし、久しぶりに集結したゴート・ロデオ・セッションズでも大きな手応えを感じていたはずなのだが、自身の成長をもっとも如実に見せることができるソロ・ステージへの挑戦にも、そういった凄腕プレイヤーたちとのセッションと同じくらいの可能性を感じていたのではないか。

根拠、ふたつめ。その新作『Laysongs』はオリジナル6曲(うち3曲は組曲形式の模様)とカヴァー3曲とで構成されているが、オリジナル曲の中にはThe Currentでも演奏された「Dionysus」も含まれているのだ!

●昨年、パンデミックの影響により運営が困難となり、惜しまれながら終了してしまった最高の音楽バラエティ・ラジオショウ"LIVE FROM HERE"。ホストであるクリス・シーリーが毎回、番組のために作ったオリジナル新曲を披露する"Song of the week”のコーナーは番組の目玉企画のひとつであり、この「Dionysus」も19年9月21日放送の同コーナーで演奏された新曲だった。

余談になるが、この曲にはファンの間で「かわいい!」と話題になった楽しいエピソードがある。
"ディオニューソス(Dionysus)"とは豊穣と葡萄酒を司る、ローマ神話では"バッカス"と呼ばれる古代ギリシャの神。この時の番組収録はカリフォルニアの有名なワイナリーに近い会場だったらしく、ワイン好きのシーリーはすかさず、この神様の名前を歌詞におりこんだ歌詞を書いたのだが…出来立ての曲をハウスバンドとのリハーサルで演奏していた時に、メンバーたちの微妙な表情から、自分が子供の頃からDionysusの発音を間違って覚えていたことを知る(笑)。
このあたり英語が難しくて正確に説明できないのだが、しかも、その間違った発音で韻を踏んだ歌詞だったらしく、何とか本番までに歌詞は修正したものの、最初に書いた美しい韻のあたりがモニョモニョになってしまった。

その後、シーリーがハウスバンドのメンバーに「みんな、ディオニューソスって知ってた?知ってた?」と訊ね、みんなが黙って頷くと「僕は学校に行かずにホーム・スクーリングで勉強していたから、ほら、誰とも話さず、文字で読むだけだったから…」と半笑いで弁解していたのが、もぉ、もぉ、あまりに可愛くて
今思い出しても、まだ萌える
当時、番組ファンの交流SNSでも「世界一かわいいマッカーサー賞受賞者!」とか言われて(笑)大ウケだった。

ちなみに、この曲が演奏されたLIVE FROM HEREの放送は19年9月だが、収録は7月20日。つまりシーリーはパンチ・ブラザーズの日本〜オーストラリア・ツアーから戻ったばかりということで、この演奏には、あの熱狂の日本公演での余韻もちょっと残っているんじゃないかと想像しながら聴くと、ホントにそんな気がしてきてまた楽しい。
当団が信頼する極秘情報筋の話によると、番組収録時のシーリーはまだまだ超時差ボケ状態で、当初はこの日のSong of the weekはお休みにする予定だったらしい。ところが、熱い要望があったのか、急にインスピレーションが降ってきたのか、急遽"Dionysus"を書き上げたのだとか。
そんなわけで、時差ボケだったから間違えたんだよー説もあるが、もしかしたら時差ボケという夢うつつ状態だからこそ、こんなにも不思議な浮遊感の名曲ができたのかもしれない。ピンチはチャンス!

ニュー・アルバムでは、この曲がどんな風に仕上がっているのか。発売後、あらためてThe CurrentやLIVE FROM HEREのヴァージョンと比較してみるのも面白いかもしれない。

●なお、シーリーは過去にもthe Currentに出演している。2016年のミネソタ・ステート・フェアで行われた番組イヴェントでの、これまた公開収録ライヴ。そして、この時もひとりで登場してソロで歌っている。ミネソタといえば、もともとLIVE FROM HEREの前身である長寿番組"Prairie Home Companion”の本拠地。シーリーがホストになってからも、19年秋にNYに引っ越すまではミネソタが本拠地だったので縁は深い。

●本稿執筆時点(21年4月)でのシーリーの最新ソロ・アルバムは、Song of the weekの曲を集めた『Thanks for Listening』ということになる。番組終了時点で新曲もかなりたまっていたので、次のソロ・アルバムは長らく期待されていた『Thanks〜』の第二弾になるのではないかという噂もあった。が、さすがシーリー。第2弾などという安易な予想のずっと先をゆく、次なるステージを目指していたようだ。
結局、番組からの曲は1曲のみだったものの、当団の分析どおりThe Current出演時の選曲や演奏スタイルが、ニュー・アルバムに向けてのひとつの伏線になっている…のか。答えは6月4日に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?