ジャカルタのデモをイスラムのみで語ってはいけない

昨今、日本のメディアも騒がせている、インドネシア・ジャカルタでのイスラムを旗印にしたデモや集会の動きだが、2016年11〜12月の一連の動きをイスラムの観点からのみ捉えるとミスリードになる。

アホック知事(現在は州知事選立候補のため休職中)を嫌う勢力(以後、「嫌アホック派」とする)は、以前からずっと彼を追い落とすきっかけを探し続けていたが、これまでなかなか良い機会を得られなかった。アホック氏の暴言癖だけでは不十分だった。

この勢力は、アホック氏が華人・クリスチャンであるということも暗に批判材料にしてきた。そんななか、ビデオで流布された「宗教冒瀆」というイメージは格好の機会となり(あるいは、あえてそのような機会を人為的に作り出し)、アホック氏を攻撃できるようになった。

アホック氏を攻撃するのは、もちろん、彼がジャカルタ州知事に選ばれないようにするためである。彼らのアホック氏攻撃は必ずしも市民の広範な支持を得ているわけではないので、大衆動員で圧力をかけるイメージ作りが重要で、そのためにイスラムが使われたと考えるのが筋である。

この動きに、州知事選挙でアホック氏に対抗する政治勢力が加わり、彼らもアホック氏のイメージダウンを狙った。さらにそこへ、ジョコウィ政権に反発する勢力もデモを利用しようと加わってきた。

11月4日のデモは概ね平静だったものの、終了時に暴徒化したことから、

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