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あなたが主人公の物語(vol.2)


*ビギナーズ・チョコミント・ラック*


「後頭部に外傷、鈍器で殴打された形跡あり・・・なるほど。」

私が警察から事情を聞いている横で、助手であるケビン君が慌てた様子で手帳にメモをとっている。

【ヒガイシャ、後頭部、ドンキ】

その程度ならメモは必要ないんじゃないかとツッコミたくなる気持ちを何とか我慢できた。

褒めて伸ばす教育方針を、私は大事にしたい。

それに、新米探偵である私のもとにやっとのことで助手が入ったのだ。それだけでも他人に探偵として認められたような気がして私は嬉しかった。

この子とは仲良くやっていきたい。
また独りぼっちに戻るのが嫌だ、とかそういうことではないよ、決して。

「ほらほら、新米のお前たちに渡せる情報はこれくらいだ。さぁ、帰った帰った。」

「待ってください。新米でも3分だけなら家宅捜索に立ち会えるはずです。ちょっと、失礼しますよー。」

助手を連れて部屋に入っていく。

後ろから刑事が押すストップウォッチの音が聞こえた。


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事務所に帰ると、ケビン君の不満が爆発した。最近買った牛革のソファーに寝転んで、ジタバタしている。

こらこら、そこは依頼人の座るところだぞ。

「本当に3分きっかりで追い出されるんですねー、あれじゃ何も分からないですよー」

「いや、1つだけ分かった。加害者はチョコミントが好きだよ。それも並大抵じゃない。ゴミ箱にチョコミントアイスのカップがあった。それに、懸賞でしか手に入らないチョコミントTシャツがクローゼットに。小さかったから、女性サイズ、つまりあれは被害者と同棲していた彼女のものだと考えられる。」

「へ、チョコミント・・・。センセは何言ってやがるんですかー。」

ケビン君の言葉遣いを直したい欲をグッとこらえる。

「アイスも只のアイスじゃない。去年の夏に限定で売られたもので、もちろん今は手に入らない。おそらく、去年の夏に大人買いしたんだろうね。それで、最後のひとつを被害者である彼氏に食べられてしまった。もう冷凍庫にはアイスが残ってなかったからね。それで激昂してチョコミントハンマーで、これも懸賞のプレゼントだけど、食べてる後ろから襲いかかったんじゃないかな。被害者もアイス食べてる途中で抵抗できなかったんだよ。」

どんどんケビン君の目が小さくなっていく。というか寝ちゃってる、ケビン君。

私も途中から面白くなっちゃってペラペラ話しちゃった。ごめんね、ケビン君。

はぁ、私もひと眠りしようかなぁ。


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「センセ、もう起きてくださいよ、ほら。テレビ見てくださいよ、これ。センセったら。」

「なにさ、もう。わかった、わかったから。」

私はテレビの画面に釘付けになった。


【先程からお伝えしております殺人事件ですが、犯行の動機は自分のアイスを食べられたことによるーーーー。】


あらら、当たったわね。


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