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名優・寺田農さんを悼んで…忘れられない宇宙人

先日、俳優・寺田農さんの訃報が入ってきました。

60年近い芸歴を持つ、日本の映画・ドラマを支えてきた名優でありアニメ・特撮ファンにも親しまれた方です。
報道ではやはり「天空の城ラピュタ・ムスカ役」がピックアップされていますが私のような特撮フリークにとってはウルトラシリーズでの数々の役に、仮面ライダーWの園咲琉兵衛が思い起こされますね。
ご冥福をお祈りします、と共に印象深かった出演作を挙げてみようと思います。

出会いは、不良刑事

ラピュタは小学生の頃に観てましたし、初代ウルトラマンの14話にトラックの運転手として出ていたそうですが寺田さんと認知してはいませんでした。初めて「寺田農」として認識した役は、97年のVシネマ「雀魔アカギ」の安岡刑事でした。

原作よりも渋かった、安岡刑事です

ご存じ、有名麻雀劇画の実写化作品で、主人公アカギの味方である刑事の役でした。刑事というと、それこそ仮面ライダークウガの一条さんのような正義感の強い真面目な男をイメージしがちですが、この安岡刑事は金儲けの為にアカギの偽物を立ててヤクザに売り込みにいく…というとんでもない「とっぽい」刑事なんですね。アカギにも「金に目が眩んだのか?」と言われるようなワルです。
ですが原作ではあまり悪い一面が見えず、気付けばアカギの理解者、頼りがいのある男として描かれている印象でした。で、この実写版の寺田さんですが、「あ~実際にいそう、こんな腹黒いオジサン」って思わせる説得力がありました。基本的に良い人、な柔らかさがありつつどこか信用できない腹の読めなさを併せ持つ人物像の見事さがあり、実写版の方がそれっぽい…とまで思ったものです。それもあって「寺田農さん」という名前を覚えるに至った、27年前の作品でした。

昭和エピソードの続編を彩った、有名宇宙人

寺田さんはウルトラシリーズにも多数出演されており、何より最新のウルトラマンブレーザーで物語のキーマン・ドバシユウを演じられてましたね。
でも、私的に一番印象深いのは2005年、ウルトラマンマックスの第24話「狙われない街」のメトロン星人人間態でした。

何気にこの回、実相寺監督の遺作なんですね

ご存じの通り、ウルトラセブン第8話「狙われた街」の続編で、侵略目的で来たメトロン星人がセブンに敗れた後密かに北川町で暮らしており、退化していく地球人を憂い「もはや侵略する価値は無い」と見限り、マックスとも戦わず自分の星へ帰っていく…という異端のエピソードです。
オリジナルのセブン8話は珠玉の名作回ですが、監督が自ら手掛ける続編として特に印象深く残る回でした。

眼兎龍茶(めとろんちゃ)というネタと併せ、皮肉・ユーモアたっぷりの寺田メトロン星人はとても魅力的でした。さりげなく、過去にあったエピソードの続編というのもこれが初めてだった気がしますが、ただトレースしただけの続き物、ではなくキチンと現代版になっている物語に敬服したのを覚えていますね。

元のセブンでは人間態がなかったので、よりインパクトがあったんですね

一応、メトロン星人の人間態は平成セブンのTVスペシャル版2作目に出てきたのですが、そちらはなんかキャラが違うな、って感じだったのでやはりこのマックス版を本家メトロン星人だと認識しています。

思えば寺田さんの特撮における役は「悪役だけど、良い人にも見える。でもそのためにより怖く見える」というものが多かった気がします。仮面ライダーWでは巨悪の風格がありましたよね。
つまり、寺田さんは役の魅力を何倍にも増幅させて届けてくれる俳優さんだったと言えます。また、マックス24話を観直したくなりました。


寺田農さん、長い間、本当にお疲れ様でした。
魅力的なメトロン星人をありがとうございました。
こういうベテラン俳優の訃報があると「昭和が遠ざかる」とよく言われますが、もう平成も懐かしい時代になりつつある…そんな感覚がありますね。

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