讒文芝居


■読んで書の如く


著:劉慈欣(りゅう じきん)
翻訳者 監修:立原透耶
翻訳:大森望、光吉さくら、ワン・チャイ

「三体」(「地球往事」三部作)


 今更も今更、筆者が云う迄も無いのだが、日記代わりに認めるには、
夫婦して文化に聡く、当初から此の本を激推しして居たと謂う、
オバマ元・大統領も吃驚、今年最大の激売れSF「三体」読了。
此りゃ売れるわ。
大納得!シリアスもギャグも凡てを坦坦と平易に描き乍ら、
時に残酷に不条理に、高次学術をも凡夫や門外漢にも退け目を感じ然せず、
「解らすのでは無く、サラッと面白がらせる」
手際、相当に頭が良く無くっては、到底出来無い。

 東山 彰良「」の如き共産主義的抑圧に翻弄さるる青春と
新谷かおる「エリア88」の如き騙しに初まり、
鈴木光司「リング」小野不由美「残穢
の如き気味の悪いミステリ・ホラーに移行。
ウィリアム・ギブスン「ヴァーチャル三部作
の如き人の悪いブラック冗句を飛ばした乎と想えば、
シュールなVRでの三体世界は京極夏彦「書楼弔堂」の如き
妙に趣味的な歴史上重要人物のコラージュの釣瓶打ち。

 京極夏彦「魍魎の匣」の時の木場修太郎の様な
蛮カラ刑事が出馬して物語が推進力を得たかと想えば
中島らも「ガダラの豚」みたいな勢力図が明らかに為り、
星新一作品や
ダグラス・アダムズ「銀河ヒッチハイクガイド」の様な
頭のイイんだか悪いんだか解らぬ異星人(三体人)
の企みが徐徐に進行する……。

丸で満漢全席を食し易い一個のハンバーガーに圧縮し纏めた様な
荒業力業神業をいとも簡単に遣って退けて、苦呶い様だが、
正直サラっとヤバいので在る。第二巻も屹度、売れるわー……。

 解らんと想う向きには
「兎に角古今東西の面白い小説の要素凡て併せ持った挙句、
バカミスバカSFで在り乍ら、傑作ハードSFでも在り、
文学全体を底上げするアイデアを『坦坦と』盛り込んで、
普通の人にも易しく語って居る」
と御伝え為度い。

読んで居る最中も充分面白いが、寧ろ「後からじわじわ面白さが来る」
考える喃!読め!(ドント・シンク・リード!)