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面倒くさそうな未来を拭き進め

赤ん坊から勢いよく放たれた茶色と透明のそれを、ぼくはただ見守ることしかできなかった。
奥さんも椅子からただぼくと赤ちゃんを眺めて、顔は冷静でいながら、頭の中ではきっと、これからどういう風に片付けていこうか思考が巡っていたのだと思う。
ただ巡っていたのは赤ちゃんの腸内も同じで、ぼくがこれをああしてと考えている内に、第二陣が尻から放たれ、思考が停止した。

おむつを取り換え中にスタンディングした赤ちゃんは、小さい足で茶色の上をピチピチチャプチャプ、ただランランとは行かず、ワーワー泣きながら、ぼくの右腕に上半身を委ねていた。
どうにもならないため、奥さんにどうして欲しいか伝えられないぼくと、どうにもならないから、どうしたらいいのかわからず椅子に座り続ける奥さんと気付けば口論になっており、空気が雰囲気の面でも臭いの面でも最悪であった。
とりあえず左手を伸ばした先にあった、おむつ替え時に敷くマットを赤ちゃんのお尻に押さえつけて、そのまま茶色が落ちないように風呂場に駆け込んだ。

赤ちゃんの放出先以外にすすがなきゃいけないのは、赤ちゃんの服、赤ちゃんのオムツ替えマット、赤ちゃんのプレイマット、そしてぼくのズボンだ。
風呂場には気付けば、洗剤や漂白剤、赤ちゃん用の保湿クリームなど全て揃っていて、抜け目のない奥さんからは学ぶことが多い。
雰囲気の方の空気はとりあえずすぐに浄化された。

ゴム手袋を装着した手で洗剤を患部につけてゴシゴシと洗い流し、落ち切らないものは漂白剤でつけ置き。
大きなプレイマットは頑張って洗い流した後にスプレータイプの漂白剤で狙い撃ち。
奥さんはアパレル関係の仕事をしていたので、服の汚れを落とすためのものは大体揃っていた。
諸々を風呂場で洗い終わった後は、最近赤ちゃんが胃腸炎にかかっていたので、おむつ替えをした周辺全てを除菌スプレーをして拭いた。


気付けば2時間経っていて、時刻は朝の10時。
色々と綺麗さっぱりして、気持ちは清々しかった。
何より、洗い流している時も、気分がよかった。
気分が悪かったのは、茶色が飛散したものを眺めて、めんどくさそうな未来を想像している時だけであった。
しかし、いざ片付け始めると、気分が乗り始めて、綺麗になっていく服やお風呂場、家の中を見ていく内に、どんどん心が元気になっていた。

この前の日記で書いたが、苦手を克服したり、何かを習慣づけたりしたかったら、「小さな報酬」が必要だと書いた。
掃除はわかりやすく、あたりが綺麗になるという小さな報酬を得られる。
だからやったら楽しい訳だ。

めんどくさそうな未来を想像しても、小さな報酬が得られるようだったら、すぐにやってしまおうと思った。

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