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クリスの物語Ⅳ #22 ハーディの使命

 その後ぼくたちは夕食を取り、到着してからの簡単な説明を受けた。といっても、現地に到着してからは闇の勢力の本部を張り込みするだけで、具体的な計画はまだ立っていなかった。
 とにかく出入りする人物をマークし、まずは様子見をするということだ。それから隙を見て侵入し、クリスタルエレメントを奪い返す。
 警戒態勢にあるだろうから十分注意する必要はあるが、闇の勢力もクリスタルエレメントをすり替えたことがばれているとは思っていないはずだとマーティスは話した。

『実際、わたしたちが全部やるんですか?つまり、その・・・他に手伝ってくれる人たちはいないのですか?』
 沙奈ちゃんが質問すると、マーティスは表情を変えずにうなずいた。
『ええ。あまり人数が増えても連携が取りにくくなりますし、ほころびが生じやすくなりますので』

 要は、どこに闇の勢力とつながっている人がいるかわからないから、あくまで信用のおける確実なメンバーを揃えたということだろう。

『でも使用人はいくらでも用意できるし、ヘリでも船でもなんでも移動手段は手配できるよ』

 食後のコーヒーを飲みながら、安心させるようにハーディがいった。
 すると、桜井さんが疑問をぶつけた。

『ところで、ハーディってなんで銀河連邦とつながりを持っていたの?』

 いわれてみれば、たしかにそれは不思議だ。
 ハーディはこれまでずっと銀河連邦に協力をしてきたとマーティスがいっていたけど、そもそもなんで銀河連邦に協力することになったのかまでは聞いていない。

『それは、生まれてくる前からそういう風に決まっていたからだよ』

 手にしていたコーヒーカップをソーサーに置くと、ハーディは桜井さんを笑顔で見つめた。
 見つめられた桜井さんは、照れるように頬を赤く染めてうつむいた。

『君たちが今回こういう役割が与えられたのと同じように、地球をアセンションさせるために僕は望んでこの地球(ほし)に生まれることを選んだんだ』
『それじゃあ、生まれる前は銀河連邦の人間だったっていうこと?』
 ぼくが質問すると、ハーディは首を振った。

『いや、そういうわけではないよ。元はシリウスという星の人間さ。でも、地球も僕のふるさとのひとつなんだ。その地球が今まさに次元移行する過渡期にある。だからその後押しをするために、銀河連邦に協力することを約束して、この時代の地球に生まれてきたのさ』

 そういって微笑むと、ハーディは手を差し出した。
 ぼくたちは再び握手を交わすと、闇の勢力の手から地球を救い出すことを誓い合った。



お読みいただき、ありがとうございます! 拙い文章ですが、お楽しみいただけたら幸いです。 これからもどうぞよろしくお願いします!