クリモノ4タイトル入

クリスの物語Ⅳ #67 生い立ち

『それでは、外でお待ちしております』
 クルストンを部屋の中央に浮かぶ円盤にセットすると、アラミスは一礼して部屋から出ていった。

 カフェテリアを後にして、ぼくたちはアラミスにマザーシップ内の図書館へと案内してもらった。
 図書館といっても、セテオスのように巨大なものではない。それでも相当な広さがあるし、マザーシップ内にはこのような図書館が百以上はあるということだ。
 そして図書館では、宇宙のあらゆるデータを調べることができるし、クルストンの閲覧もできた。
 クルストンを閲覧するための装置は、セテオスにあったマルガモルのように情報元の本人の記憶を擬似体験するというものではなく、情報の中へ意識を飛ばして客観的に見るだけの“コルソモル”というものだった。

 マルガモルだと、ひとりの情報を体験するだけで体力をかなり消耗する。
 しかし、銀河連邦の人たちにはわざわざそうしてまで人の記憶を体験する意味はないし、できるだけ多くの情報を瞬時に解読する必要があるので、クルストンの閲覧にはコルソモルを利用しているのだそうだ。

 コルソモルは、フリスビーほどの大きさのクリスタルの円盤だった。
 それが円形の部屋の中央に浮かんでいて、コルソモルを中心に部屋の壁に沿って12脚のゆったりとしたシートが向き合うように並べられていた。
 そこへぼく、クレア、ラマル、エランドラ、間を空けてハーディ、桜井さん、沙奈ちゃんという順に腰かけた。
 マーティスとはカフェテリアですでに別れていた。ベベやエンダには、グリフォンやフェニックスのお守りをしながら外で遊んでもらっている。

 アラミスが出ていくと部屋が真っ暗になり、コルソモルが高速で回転を始めた。たちまち何も考えられなくなって、目の前が真っ白になった。

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 地底都市、ホーソモスの街はずれ。緑の多いアラニ地区に、ロズウェル家の長女としてアルタシアは誕生した。

 父親は名の知れたマージア研究家で、カンターメルの研究開発をしたり、魔法道具の開発をしたりしている。
 母親は音楽家で、クリスタルで奏でる音楽で人々のチャクラ調整をしたり、傷ついた地球のエネルギー層を癒したりしていた。

 アルタシアには、兄弟がひとりだけいる。5つ歳の離れた兄、アーロンだ。
 アーロンは面倒見がよく、アルタシアのことをとても可愛がった。そんな兄のことを、アルタシアも大好きだった。どこへ行くにも一緒についていって、アーロンがやることはなんでも真似した。

 アーロンが友達とチャンバラごっこをすれば、アルタシアも棒切れを拾ってそれに交ざった。
 しかし、まだ幼いアルタシアではあったが、剣術のセンスは抜群だった。相手の何歩先も動きを読んで裏の裏をついて攻撃する、ということが自然とできた。

 自分よりも年上の男子を打ち負かすことに快感を覚え、アルタシアはチャンバラにどんどんのめり込んでいった。
 本気になってチャンバラごっこに取り組むアルタシアには誰もついていけなくなって、いつしか誰ひとりとしてアルタシアとはチャンバラをしたがらなくなった。
 でも、アルタシアにはそんなことはおかまいなしだった。公園で、ひとりででも特訓をした。

 見かねたアーロンが、それにつき合ってあげた。
 心優しいアーロンは、アルタシアの相手を少しでもしてあげられるようにと、さほど好きでもない剣術の腕を自分も磨くようになった。
 いつかアルタシアは、養生校で剣術の先生にでもなるのだろう。そのために、自分に協力できることがあればしてあげようとアーロンは思った。

 やりたいことは何でも伸ばすというのが、ロズウェル家の教育方針でもあったので、剣術にのめり込むアルタシアのことを両親とも喜んだ。

『探求心が止むまで取り組みなさい』といって、魔法を引き出すことのできる剣“マージアディグス”をアルタシアと、それにアーロンにもプレゼントした。
 そしてアルタシアは、アーロンとともに父親から魔法も教わった。

 アルタシアは、魔法のセンスも抜群だった。
 なぜか生まれつき生命エネルギーが強かったので、あっという間に大人でも使いこなせないような魔法をアルタシアは習得した。
 そんな妹に対して、アーロンは悔しいという思いを通り越し、誇りに思うようにさえなっていた。



お読みいただき、ありがとうございます! 拙い文章ですが、お楽しみいただけたら幸いです。 これからもどうぞよろしくお願いします!