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大道芸ワールドカップ有識者会議についての解説と訂正 (2)


4.不適切会計問題             

【筆者:彦一(フリージャーナリスト)】

4.1.過去の会計を隠蔽

大道芸W杯には静岡市の公金が、およそ30年に渡って毎年約1億円、注ぎ込まれてきました。
(参考資料として「静岡市大道芸W杯補助金交付要綱」を置いておきます。詳しく知りたい方は、ご覧ください。)

公金の使いみちは、公共事業としての基準をもって、厳しく律されるべきものです。
言うまでもないですが、その莫大な公金が、W杯実行委内部の者や、近しい関係者に、精査もなく渡ることなどあってはなりません。
しかしながら、そのあってはならないことが、W杯では長年まかり通ってきました。具体例については次項で述べます。

昨年12月の有識者会議の中でも、W杯と業者との関係について議題に上りました。

大長事務局長
『それから”イベントを作る上で企画設営業者との関わり方”ですけれども、これに関しては私が担当しました 2022 年に関しては、設営業者であれ警備であれ、主な作業をしていただく方々に関してはですね、全てプロポーザルあるいは入札、競争入札、見積もり合わせという形で行っておりますので、全くご指摘を受けるようなものではないというふうには思っています。』

大道芸ワールドカップ in 静岡についての意見交換会」全部文字起こし

大長事務局長
あくまでも私が担当した 2022 年という、この 1 年に関してだけですけれども、実行委員会の中で受注企業と関係が深いという方はいらっしゃらないという認識でおります。』

大道芸ワールドカップ in 静岡についての意見交換会」全部文字起こし

バーバラ村田
『大長さん、今のお話で 2022 年は公正な...厳正に業者を選定されて、その結果、以前の設営会社は選ば れなかったということですか?』
大長事務局長
『設営業者に関しては過去 28 回、今年 29 回目ですけれども 2 回目ですね、今回担当して頂いた業者さ んはということになります。ですので、2019 年の担当された業者さんとは違う業者さんです。』
バーバラ村田
2019 年までの業者さんは厳正に選定した結果選ばれなかったっていう事ですか?』
大長事務局長
はい、その通りです。』

「大道芸ワールドカップ in 静岡についての意見交換会」全部文字起こし

大長事務局長は、ことさら〝2022年に関しては〟問題ないと強調されています。過去に問題があったことは認識しているようですね。
2022年、W杯はようやく競争入札や相見積もりを導入して、公正な業務委託を行うようになりました。着実に業務改善されているようでそれは何よりです。

しかしながら、それで過去の問題をなかったことにできるのでしょうか?
中心人物を辞めさせたら、組織ぐるみの問題も消えてなくなるとでも言うのでしょうか?

W杯実行委員会は「過去の問題について自分たちは知らなかった」というスタンスをとり続けています。
今年に入って日本中を騒がせた大きな事件で、何度か聞いたセリフですね。
知らないわけはない。
不正の実行者ではなかったとしても、隠蔽するというのはそれに加担しているのと同じことです。

W杯がこれから信用を築いていくために必要なことは、
まずは真摯な調査、そして情報公開でしょう。
それも第三者機関を入れて行わなければなりません。

4.2.元プロデューサーの会社への補助金流入

会計問題のひとつは、
2018年の〝ノーギャラ事件〟で辞任した元プロデューサーKさんの会社に、長年に渡って独占的に業務委託が行われ、多額の補助金が流入していた件です。
(ノーギャラ事件については、YouTubeにまとめておりますのでそちらをご覧ください。「大道芸W杯学#5 〜ノーギャラ事件の深奥〜」

これは、情報開示請求で入手した、Kさんの会社からW杯への請求書です。
毎年、ぴったり100万円(プラス消費税)が、「デザイン制作・ディレクション料一式」という名目でKさんの会社に支払われてきました。

また、この100万円だけではなく、他の名目でも業務を受注していたことも明らかになっております。

これらは氷山の一角だと思いますが、なにしろ実行委員会によって隠蔽されているため、全体像はわかりません。
毎年の108万円については、会計報告書の「ガイドブック制作費」という項目に計上されています。

大道芸W杯「2018歳出管理」

2018年と2019年(Kさんが辞めた後)とでガイドブック制作費を比較すると、2019年はほぼ108万円減っていることがわかります。
つまり、この108万円は本来必要のない支出だったのではないでしょうか?

YouTube「大道芸W杯学#5 ノーギャラ事件の深奥」より

参考資料として、2018年と2019年のW杯歳出の全体像がわかる「歳出管理」文書を置いておきます。より詳しく知りたい方は、ご覧ください。

プロデューサーという役職は、
本来は実行委員長に次ぐポジションとW杯の規約で定められております。
しかし元プロデューサーKさんは、
実行委員長を長く務められた (2002-2022年)杉山元さんの青年会議所時代の先輩にあたり、
実質KさんがW杯のトップとして権力を握っておりました。
そのトップが、独占的に自らに業務発注するという形で、長年に渡って〝利益相反〟行為を続けてきたのです。

4.3.組織のトップによる隠蔽

これら不適切会計について、
W杯実行委は現在に至るまで、隠蔽を続けております。

2021年9月、私はYouTubeチャンネル用のインタビューの中で、
当時実行委員長の杉山元さんに、このことを問いました。
ご覧いただければ、この件の本質が端的に分かるのではないでしょうか。(収録3分48秒)

このインタビューで語られた約束は、反故にされ、連絡は途絶えました。
私は、またかという思いで、そのまま放置していました。
都合が悪くなると黙殺するというパターンは、2018年のノーギャラ事件から何度か経験していましたので。
しかし、その後私がYouTubeに「大道芸W杯学#5 〜ノーギャラ事件の深奥〜」をアップすると、
杉山さんがあわてて私にコンタクトをとってきました。

その後、この方は委員長を辞め、
実行委員会のアドバイザー的な役職につきました。
一体何のアドバイスをしているのでしょうか・・・。

個人的な感情としては、
杉山さんが長年熱意をもってW杯に取り組んでこられたことには、敬意を感じております。
しかし同時に、不正の隠蔽のために様々な手段をとってきたこと、多方面からの情報開示の要望を黙殺し続けたことは、誠に残念です。

4.4.静岡市「まちは劇場推進課」の監督責任

W杯補助金の使い方については、
本来は静岡市がしっかりと監督すべき立場にあります。

しかし担当課の「観光交流文化局・まちは劇場推進課」は、
あろうことか、不適切会計の隠蔽に加担しております。
そのことについては以前YouTubeでまとめて報じました。
「大道芸ワールドカップ学#6 〜静岡市まちは劇場のブラックボックス〜」

YouTube「大道芸ワールドカップ学」チャンネルより

なぜ、静岡市は隠蔽を続けるのか?
この理由については私の推測になりますが、
一つは、
過去に不適切会計を黙認してきたミスを認めたくないということ。
もう一つは、
静岡市職員のW杯との不適切な関わり方を明るみにしたくないということがあるのではないでしょうか?
例えば、前述のYouTubeの中でも触れたフランス視察旅行
これは適切なものだったのでしょうか?

4.5.海外視察旅行

これは2018年のフランス・シャロンで開催されたフェスティバルに、
視察に訪れた関係者を連ねたリストの一部です。
W杯の関係者は、このように毎年海外のイベントに視察旅行に行っていました。一体、どのようなメンバーで行っているのか?

上の画像はリストの一部に筆者が赤字で数字を入れたものです。
「Daidogei World Cup」の代表者として訪れた5人、
どのような立場の方か、
順不同になりますが、公金の流れの上流から解説します。

まず③の方が、静岡市・まちは劇場推進課の職員(当時)です。
この方は公務ではなく〝プライベートで〟視察旅行に同行したため、報告書も特にありません。
まちは劇場推進課・現課長によると、これは「プライベートなので問題ない」とのことです。

そして④は、
静岡市から毎年1億円の補助金を受けているW杯実行委員会の、
元プロデューサーKさんです。

②は、
W杯実行委から業務委託を受けていたイベント会社C社の社長です。
この業者さんは、大道芸ワールドカップの主要業務を丸々請け負っており、
2018年にはW杯から6,167万円の業務委託費が支払われています。
どのような業務を行なっていたかは、
業務委託の内訳書を見るのが最もわかりやすいと思いますので、置いておきます。

①は、
②のC社から業務委託され、
海外パフォーマー関連の業務を行なっていた会社の社長です。
そして⑤は、お名前から察するに、この社長のご家族のようです。

この2018年フランス視察旅行については、
どこまで市の補助金が使われているのかは窺い知ることができませんが、
2018年の「歳出管理」文書を見ると、
3ページ目「研修・会議費」の「研修費」「海外プロモーション」に104万8,456円が計上されていますね。

また、海外視察旅行については、
まちは劇場推進課の別の職員が、別の海外イベントに同行している事実も確認されております。

4.6.海外視察旅行2023年度

さて、2018年の海外視察について解説しましたが、
直近2023年7月に行われた同じイベント、フランス・シャロンのフェスティバルについて見てみましょう。前項と同様のリストです。

一部抜粋して、分かり易いように編集しました。

驚くことに、なんと、2018年に続き2023年も、
W杯元プロデューサーKさんの名前があります。
今回は「大道芸ワールドカップ」の代表ではなく、
同じ「まちは劇場推進課」が担当している「ストレンジシード」というイベントのクリエイティブディレクターとして海外視察旅行に行っております。
Kさん、今度はポジションを「まちは劇場推進課」の類似イベントにスライドさせて、また行ってるんですね。

不適切会計について誰も何の説明もしないまま、
その張本人に静岡市の公金はいまだジャブジャブ注がれています。

まちは劇場、大丈夫ですか?
まちは劇場、公金を市民に望まれるかたちで使えていますか?

※第3部に続きます

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