見出し画像

血液型はコミュニケーションツール?!

日本人は血液型による性格診断が大好き。自己紹介に、血液型を盛り込めば、なかなか当たっていると感じることも多く、良いコミュニケーションツールにもなっています。けれどもこれは、日本人はA型4割、O型3割、B型2割、AB型1割とバランスよく分散しているから成り立つのだとか。では血液型とは何でしょうか。輸血製剤とは? そんな話を、大同病院 輸血センターの稲生千絵美さんとしてみました。(2024年1月24日配信)

輸血センターで扱う血液製剤とは?

イズミン 輸血では血液製剤を使うということですが、まず「血液製剤」というのは何ですか。

イノウ 血液製剤は、人の血液から作り出される医薬品の総称です。「輸血」は人体の一部である血液を体内に入れるので、一種の“臓器移植”とも考えられています。
 血液製剤は、輸血で使う輸血用血液製剤血漿分画製剤の二つに大きく分かれます。輸血用血液製剤には、貧血のときにその状態を緩和するために使用する赤血球製剤とか、あとは止血を目的に投与する血小板製剤、あとは凝固因子を補充して止血しやすくする血漿製剤があります。もう一つの血漿分画製剤には、血管内の水分を保持してむくみや腹水を改善するアルブミン製剤や、体内の免疫機能を維持する免疫グロブリン製剤、あとは出血傾向を改善する凝固因子製剤などがあります。

 大同病院の輸血センターで取り扱っている血液製剤は、赤血球製剤と血小板製剤、血漿製剤、それにアルブミン製剤になります。アルブミン製剤以外の血漿分画製剤は薬剤部のほうで取り扱っています。

イズミン 血漿分画製剤の「分画」というのはどういう意味ですか?

イノウ 血液中の血漿成分をさらに分けて、一つひとつ分けていくことです。アルブミンやⅠ~ⅩⅢ因子まである凝固因子もそれぞれ分けて製品になっています。

血液型とは

イズミン ところで、血液型による性格の違い生物学的遺伝学的な特徴というのは実際にはあるんでしょうか?

イノウ 特にはないと思います。日本人はA型が40%、O型が30%、B型が20%、AB型が10%と分かれていますが、世界的に見ると、地域ごとの分布に大きな差があり、例えば中南米では9割以上の人がO型なので、そもそも血液型占いは成立しません。

イズミン 血液型っていうのは何ですか?

イノウ 皆さんがよくご存じのABO血液型で説明しますね。血液型には、抗原と抗体というものが関連しています。

イズミン 抗原と抗体って何ですか。

イノウ 人の免疫の仕組みには、抗原である病原体に感染すると体内で抗体を産生し、病原体を無毒化することによって生体を防御する作用があります。この作用を利用したのが、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などのワクチン接種です。予防接種で抗原であるインフルエンザウイルスを体内に入れ、抗体を産生させ、感染を防ぎます。
 ここでちょっとまた血液型の話に戻しますと、赤血球の表面にA抗原がついているのがA型、B抗原が付いているのがB型、両方付いているのがAB型。A抗原もB抗原も付いていないのがO型になります。

CC0

 また、ABO血液型は血漿中に抗原として存在しない抗体が、必ず存在するという特徴があります。A型の人は抗体の抗B、B型の人は抗A、O型の人はどちらも抗原を持っていないので抗A・Bが存在します。そしてAB型の人は抗体を持ちません。なので輸血の場合、例えばA型の患者さんにB型の赤血球を輸血してしまうと、A型の患者さんは抗Bを持っているので、輸血製剤のB型抗原を持っている赤血球を壊してしまいます。そのため、輸血の場合は、患者さんのABO血液型と輸血する血液製剤のABO血液型を合わせる必要があります。ただ、O型の赤血球にはA抗原もB抗原もないため、患者さんの血液型が何型であっても、赤血球が壊されることはない。そこで血液型が不明の場合や緊急輸血のときには、O型の赤血球製剤が選択されます。

シノハラ ほかにも血液型の分類法がありますよね。

イノウ はい。私たちの赤血球の表面には、ABO血液型以外にも他にたくさんの抗原が付いています。赤血球に付いている抗原の違いによって、Rh血液型やKidd血液型、Diego血液型などたくさんの血液型があります。
 中でも有名なのがRh血液型、その中でもD抗原のプラスとマイナスになります。先ほども言いましたように、ABO血液型は他の血液型と違い、抗原として存在しない抗体を必ず持っているという特徴がありました。この特徴を「規則抗体」と言います。 
 ABO血液型以外のRh血液型などでは、輸血や妊娠などで自身が持っていない抗原が入ってきたときに、それに対する抗体を産生したり産生しなかったりするので、「不規則抗体」と言われています。
 その中でもRhD抗原はこの抗体を産生する可能性が高く、ほぼ産生してしまうので、ABO血液型と同様に、RhのDがプラスかマイナスを合わせた製剤を必ず選択するようにしています。

シノハラ 不規則抗体を調べて、それに対応して製剤を選択するわけですね。

イノウ 不規則抗体があるからといって輸血ができないわけではなく、不規則抗体を持っている方には、それに対応する抗原がない製剤を選択して輸血すれば、輸血の効果が得られて貧血が改善します。

イズミン だからRhマイナスAB型には、RhマイナスAB型の血液しか輸血できない(お正月に見た昔のドラマを思い出しています…^^)

イノウ そうですね。もしくはAB型の人でもO型は大丈夫なので、O型のRhマイナスなら大丈夫です。
 あと、Rhプラスの人にRhマイナスの血液は輸血できますが、マイナスの人のほうが圧倒的に少ないので、血液製剤の在庫から考えて、基本的にはあり得ません。プラスの人にはプラスの製剤が十分に供給できます。

イズミン なるほど、わかりました。では次回は必要な血液製剤をどうやって充足させるか、供給するかというお話をしていきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。


ゲスト紹介

稲生千絵美(いのう・ちえみ)
大同病院 輸血センターの臨床検査技師。輸血センターでは、主に血液製剤の管理を行い、輸血の際に必要となる血液型や不規則抗体の検査、血液製剤と患者さんの血液の交差適合試験などを行っている。また患者さんへの輸血に関する説明や、病棟における輸血手順の確認など、病院全体の輸血療法が安全で適切に行われるよう働きかけを行う。
趣味は、子どもと一緒に日本各地の電車をマニアックに探訪すること。血液に関する仕事をしているだけあって「鉄分」豊富だ。


関連記事