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献血にご協力をお願いします!

輸血のための血液製剤は、いまだ人工的には生産することができません。それは、無償で提供される人の血液、すなわち「献血」からしか作ることができないのです。
その「献血」について、大同病院輸血センターの臨床検査技師、稲生千絵美さんとお話しました。(2024年1月26日配信)

血液製剤は献血が頼り!!

イズミン 血液製剤は、やはり献血が頼りなんですね。

イノウ はい、血液はまだ人工的に作ることができず、研究段階です。そのため輸血する血液製剤は、健康な人が無償で血液を提供してくれる献血からのみ、作られています。しかし少子高齢化の影響により、主に輸血を必要とする高齢の患者さんが増加し、一方で献血できる若い世代が減少しています。特に10~30代の献血協力者数は、この10年間で31%も減少しています。あとは近年では、血漿分画製剤の適用疾患が拡大したことに伴って、必要量が急激に増加しています。
 しかも、赤血球や血小板に関しては長期保存もできませんので、今後も患者さんに血液を安定的に届けるためには、今まで以上に若い世代の方の献血へのご理解とご協力が必要となってきます。

イズミン なるほど、かなりピンチですね。そしてこの献血は特に冬場に足りなくなる傾向があるそうですが、それはなぜですか?

イノウ はい、冬場はインフルエンザや風邪などの感染症にかかる方が多くなりますが、発熱や体調不良などの場合は献血ができません。また献血に使用する針は、通常の採血で使用する針よりも太いため、細い血管には刺せません。夏は暑いので血管がよく出るという方も、寒い冬には血管が収縮して細くなり、お断りする場合も多々あります。

イズミン なるほど、わりと単純な理由の積み重ねなんですね。

イノウ あとはお正月休み9連休などがあって、企業さんに献血車が訪問できないとなると、長期保存ができない製剤はその9日分足りなくなります。

イズミン 輸血を必要とする高齢者が増加するというお話がありましたが、血液のがんや貧血になる方は、年齢とともに増加するんですよね。

イノウ 若い方の「白血病」のイメージが強いのは、著名人がかかったときにやはり衝撃的でショッキングだからではないかと思います。でも高齢になればなるほど血液疾患は必然的に増えますし、他の臓器のがんも増えてくるので、どうしても貧血になりやすくなります。

献血について

イズミン いま献血は200ミリ、400ミリ、それから成分献血と3種類ありますよね。

イノウ はい、200ミリ、400ミリは「全血献血」です。これは血液中の全ての成分をパックの中にいただきます。これを血液センターのほうで分けます。ただ実際に病院で使用する製剤は、400ミリの全血献血の製剤を使用することが多いです。なぜかというと、1人の患者さんに使われる輸血用の血液製剤は、より少ない人数の献血によって賄われていればいるほど、輸血を受けた患者さんの発熱や発疹といった輸血の副反応の可能性が低くなるからです。
 もう一つの「成分献血」は成分採血装置という機械を使って、血小板や血漿といった特定の成分だけを採血して、体内での回復に時間のかかる赤血球は再び体に戻します。

イズミン 人工透析システムみたいな感じですか。

イノウ そうですね。必要なものを必要な分だけ抜き取ってまた戻すので、特別な器材が必要で、街で見かける献血車には積んでいなくて、赤十字社の献血ルームに行っていただくことになります。

イズミン 200ミリの献血はあんまりお役に立てないんですか。

イノウ あんまりお役に立てないっていうと語弊はありまして、小児や新生児の患者さんに輸血する際などには、少量でもよいので200ミリ献血の製剤を使ったりします。

イズミン 大同病院にも年に何回か献血車が来ますね。

イノウ はい、夏と冬に2回来ています。職員さんにも声掛けして協力していただいていますし、地域の皆さんにもどんどん参加していただきたいです。

献血ができない場合

イズミン 私は実は献血がどうやらできなくて、ある時期にヨーロッパに通算半年以上いたからなんですが、あれは一生ダメなんでしょうか。

イノウ 狂牛病が話題になった時期ですね。それ以外は基本的には海外渡航された場合、帰国日から4週間は献血をご遠慮いただいています。
 ただ日本では流行していないさまざまな血液を介する感染症があるので、献血をご遠慮いただく条件や期間というのも異なります。献血をご希望の方で、海外渡航歴のある方は、献血の前に赤十字社のスタッフにお聞きいただけば、献血ができるかどうか教えてもらえます。

イズミン あれから20年、私は無事に生きているんですけれども、なかなか緩和されないんでしょうか。

イノウ 感染症の病原体の中には、場合によっては数年から数十年、体内で潜伏した後に発症するものもあるので、やはり大事をとって、献血をご遠慮いただいている状態ですね。4年前の新型コロナウイルスのように新しく感染症が発見されるケースもあるので、海外渡航に関してはいろいろな基準が設けられています。

シノハラ でもその分、感染症に関しては輸血の安全性は担保されてるってことですね。

イノウ はい。献血していただいた時点で、肝炎やHIVなどの検査が行われていますし、そうした輸血によって新たな問題が発生しないように、可能な限りの対策はとられています。また、さまざまな感染リスクを考慮した問診があります。少し質問の量が多くて大変ですが、嘘・偽りなく記載していただき、輸血の安全性の担保にご協力ください。

イズミン あと、せっかく「献血します」と来ていただいても、低血圧とか、体重が少ないとか、貧血などの理由でできないことも結構ありますよね。

イノウ はい。いろいろ基準がありまして、400ミリ献血の場合ですと、年齢は男性が17歳~69歳、女性は18歳~69歳、体重は50キロ以上ないとできません。200ミリ献血では、男女ともに16歳~69歳、体重は男性45キロ以上、女性40キロ以上となります。それ以外にも細かく血圧やヘモグロビン濃度、あと献血の間隔、つまり前回の献血からどれぐらい経っているかなどの基準が設けられています。
 あとは先ほども言いましたけど、実際に病院が必要とする製剤は400ミリの血液製剤の方がほとんどなので、院内の献血日にせっかく来ていただいたのに、その日の200ミリ献血が充足すると、体重50キロ未満の方はお断りすることもあります。

シノハラ なるほど、なかなか難しい問題ですね。血液製剤は足りないけど、結構人を選んでしまうわけですね。でも、献血していただく方の健康状態も考えないといけないですしね。献血しようと思っていただける方にできることとしては、しっかり体力をつけて健康に生活していただくということですね。

大同病院に献血車が来ます!

イズミン 大同病院では2024年2月27日(火)に、赤十字社の献血車が来ますので、ぜひお近くの方、ご協力いただけるとありがたいです。場所は大同病院1階の東玄関から入ってすぐ、スターバックスのあるところになります。
 また名古屋市内などには成分献血もできる献血ルームも数カ所ありますので、ちょっと時間があって社会貢献したいなというときには献血という方法もあるということを覚えておいていただければと思います。

イノウ はい、献血ルームは名駅や栄にありますので、お出かけの際に立ち寄っていただけるといいと思います。見晴らしがすごく良かったり、あとはジュースやお菓子がもらえたり、動画が見れたりと、いろいろ工夫が凝らされていますので、ぜひご協力していただきたいです。
 今は特に愛知県内、O型の赤血球が不足しているという情報があるので、O型の方ぜひお願いしたいです。


ゲスト紹介

稲生千絵美(いのう・ちえみ)
大同病院 輸血センターの臨床検査技師。輸血センターでは、主に血液製剤の管理を行い、輸血の際に必要となる血液型や不規則抗体の検査、血液製剤と患者さんの血液の交差適合試験などを行っている。また患者さんへの輸血に関する説明や、病棟における輸血手順の確認など、病院全体の輸血療法が安全で適切に行われるよう働きかけを行う。
趣味は、子どもと一緒に日本各地の電車をマニアックに探訪すること。血液に関する仕事をしているだけあって「鉄分」豊富だ。


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