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利用者からの頼まれ事

とある車椅子の利用者はご家族と二人暮らしだ。

 
そのご家族は夜勤がある方で
利用者は一人で留守番をしたり、過ごすことも多い。

 
送迎で来る職員は
ちょうどいい相手なのだ。

 
何がちょうどいいかというと
ちょっとしたお願いごとをするのにちょうどいい相手なのだ。

 
飲み物を冷蔵庫にしまってほしいとか
クーラーの調子が悪いから見てほしいとか
ポストから郵便物を出してほしいとか
宅配の牛乳を冷蔵庫に入れてほしいとか。

細々とした雑用だ。

 
この、ちょっとしたことができないというのは
背中が自力でかけないようなもどかしさだろう。

 
以前は言われてから手伝っていたが
すっかり慣れた今は
「入れとくね。」とか「やっとくね。」とか言って
自分から動いてしまう。

 
 
前の職場では
散歩している飼い猫を家に入れてほしい、という依頼があった。

 
そこの猫は人見知りしないし、甘えん坊だしで
猫好きにはたまらない猫で
私は送迎のたびに癒やされていた。

送迎車のバック音がすると寄ってくる
そんな飼い猫だった。

 
だけど
猫嫌いな職員からしたら最悪だよなぁ、とよく思っていた。

 
「フフッ。」

今思い出してもおかしい。
猫の世話が介護職の仕事なんて。

 
「どうしたの?」

「ちょっと…思い出してね(笑)」

私は思い出し笑いをしながら
アクセルを踏む。

 
今日はどんな一日になるかな。

空では太陽が輝いている。


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