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新天地

夏の終わり。

暑さと都会の喧騒から逃げるように、長野県木曽福島に友人3人と向かった。二泊三日、友人Y(Iが二人いるため)の父親と友人K(彼は来ていないが)の父親が数年かけてリノベーションした小さな小屋にお邪魔した。うねうねとした山道を数十分登ると、その道沿いにヒョコッと建物が現れる。小屋と呼ぶには勿体ないほど中はかなり立派で、思わずすげえな…と声が出たのを覚えている。

余談だが僕も大人になったらリノベーションとかしてみたいので今のうちに知識を蓄えておこう。あと友人Yにはたくさん手伝ってもらおう。

家の周りは静かで涼しいし、住み心地はメチャクチャいい感じだし、何より三日間何の予定にも束縛されてないしで、気持ちは常に最高潮だった。

コロンブスがアメリカ大陸を発見したとき。
in to the wild のクリストファーがアラスカに到着したとき。
マーク・ヴォネガットがヒッピーコミューンの誕生を確信したとき。

きっと彼らだって、誰からも縛られることのない永遠の自由を手に入れた喜びに胸を躍らせていたのだろう。僕もそれのそれだった。

来月にでも1週間空きができたら全ての時間をあの場所に注ぎたいほどだ。

振り返った時にやはり一番良かったのはメンバーである。全く予定を入れず、もはや行って生活することが予定であり目的だったため、雰囲気が悪くなり始めたら厄介だと少しは心配していたが、そんな心配は全く必要なかった。各々がしたいことを自由にして大人な時間を…と書きたいところだが、むしろ逆でずっとワチャワチャ一緒に何かをしていた。

焼肉をして酒を飲んで自分たちがあんまり肉を食べれなくなってることに老いを感じたり、友人Iの方法でカレーを作ったら宙を舞ったスパイスが喉に入り呼吸困難になったり、途中で買ったトランプで神経衰弱をして皿洗いを決めたり、と、まあ飽きることなく、ただそこまで素晴らしく特別なイベントをこなす訳でもなく、淡々と濃密で楽しい暮らしをすることができた。やっぱりみんな6年間寮という自由と平等を欠いた場所で生活していただけあって、集団生活への適合は早かった。また同じメンバーで行きたいね♡なんて今思うと恥ずかしい約束までした。本当に行きたいね。

次に良かったのは20歳以上という点だろうか。まだ22歳なので、口が裂けても「大人の余裕」などとは言えないが、自分たちも大人になったなぁとしみじみ感じた。食べる量が減った分ビールを飲みようになったし(僕はあまり食べる量も減ってなかったが)、誰かが本を読んでいても茶化すことはしないし、コーヒーは朝必ず飲むし、口から煙はよく出るし、毎晩銭湯に行くし。このメンバーでどこかに泊まるというのが初めてだったので、男子部の時の記憶と今の記憶の差異にちょっと驚いたし面白かった。

最後に良かったのはタイミングだろうか。
人間関係・就活・その他諸々から、無自覚のうちにかなりストレスが溜まっていたらしく、7月頭には心の底からどこか行ったことのない自然の中に身を投じたかった。いいリフレッシュになった反面、あんな素晴らしい場所を知ってしまったことを若干後悔している。もう激しく帰りたい。

少し降りたところにある街もまた良かった。不思議な名前のお店が沢山あり、川も綺麗だった。

次は冬にでも、なんなら少し顔を覗かせている秋にでも、あの場所に帰りたい。

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