コーチングのゴールと『12の物語』④
迷路を解くコツはゴールを押さえて、ゴールから逆走することです。コーチングカウンセリングもゴールを押さえることができれば簡単になります。
コーチングカウンセリングのゴール集『12の物語』。今回は5と6をご紹介します。
⑤「まず◯◯を目指そう!△△が使える!××ならやれる!」
これは言わずと知れたGROWモデルですね。
ちなみに、ここまでのおさらいをすると
シンプルに言えば
①コーチとの関係性に勇気づけられる
②自己受容と成長可能性を感じる
③自分軸で生きることにOKを出す
④自分軸に気づく、目覚める
こんなかたちで進んできたわけです。逆に言うと、GROWモデルに入る前に、①から④の課題があるなら、そちらを扱うことを先行してからGROWモデルに入る方がいいわけです。
GROWモデル的なコーチングからスタートしたとしても、①から④の課題を感じたら、一旦そちらに戻ることもおすすめです。
⑤「まず◯◯を目指そう!△△が使える!××ならやれる!」
をセッションのゴールにする場合というのは、ゴールを描いて、アクションを決めたら、クライアントが動き出せそう!と思える場合です。
そのように判断したなら、ぜひ堂々とGROWモデルで関わってください。
狭義のコーチングは、GROWモデルに代表される、バックキャスティングで新しい行動をとることを支援することです。
バックキャスト=まず理想の未来を描き、そこから逆算することで、行動やその優先順位を決めこと
多くの場合クライアントは、現状の中で「取れそうな行動」「問題に対処うするための行動」「取るべきと思いこんでいる行動」「周りから取ることを求められている行動」などを選択しているわけです。
そんな状態から一度抜け出して、まずはゴールを押さえてから、そこに向けて効果的な行動をとっていくことを支援すること。それが大切なわけです。
コーチングの祖の一人。ティモシー・ガルウェイは言います
「だからSTOPが大切だ」と言うのです。
Stepback 後ろに下がる(俯瞰する)
Think 考える
Organize まとめる(考えを整理する)
Proceed 前に進む(新しい行動をする)
そしてこのThinkの中でもゴールについて考えるというのが大切です。人の脳は魅力的かつ具体的なゴールイメージを持った時にクリエイティブになりパフォーマンスを発揮するからです。
現状に対応する行動をとっているだけでは、理想の未来に辿り着くことはありません。一旦自分の状態を俯瞰した上で、理想の状態を描いてみること。そこからバックキャスティング(逆算)して、理想の未来のための行動をとっていく必要があるのです。
それをするのが狭義のコーチングです。これこそがコーチらしい仕事だと言えると思います
クライアントが大変な状態にあるとき
ちなみにクライアントが大変な状態にあったり、精神的に落ちているときでも、GROWモデルで対応できることもたくさんあります。一般に考えられているよりも、コーチング的なアプローチは汎用性が高いのです。
カウンセリングの中にも、ソリューションフォーカスアプローチ(SFA)に代表される、まずは望む未来を描いてしまうやり方が存在するくらいです。
大変な状態にあるクライアントに、コーチング的な取り組みをする場合の最大のポイントは
ゴールを小さく、現実的なものにする
ということです
・自分の心の状態が少し良いものになること
・相手との関係が最悪を脱すること
みたいに、起こると良いことで、目指すことが可能な状態をゴールにするのです。そして、そこに向かって取れそうな行動を取ることを支援すればいいのです。
お勧めの1つは、クライアントが自らのニーズを満たすことを最初のゴールにすることです。
ニーズ=必要としているもの。現在の自分に欠乏しているもので、それが満たされると、自分の状態がよくなるもの
https://nvc-japan.net/data/Feeling&Needs+intention.pdf
例えば、このリストの2ページ目に載っている「ニーズのリスト」などを参考にしてみてください。まずは現在のクライアントが必要としている「ニーズ」を特定すること。そしてそのニーズを満たして、クライアントが良い状態になることをゴールにするわけです。
ゴールが描けたら、そのニーズを自らの行動で満たすために「自分でできることは何か?」「人に頼めることは何か?」を可能限り洗い出してみて、取りやすそうな行動からとってもらうのです。
GROWモデルというと、大きな(制約から自由な)ゴールを描いて、そこに向かって行動をとっていくイメージを持っている方もいると思いますが、このように近くて低いゴールに向かって小さな行動を積み重ねるのもありなのです。
ぜひ活用ください
⑥××が起こっても、◯◯で乗り越えられる
6つ目の物語は障害対策です。未来に予測される問題を織り込み済みにしてしまうパターンです。
これは、ゴールは描けているけど、うまく動けていない時に目指すといいゴールです。
漠然とした不安。それをそのままにしないのです。未来の不安を明確にした上で、きちんと対策を決めておくと、不安は薄まったり消えてしまうのです。そうすると気持ちよく進んでいくことができます
ベストセラー作家でもある、リチャード・ワイズマン博士の調査では、重要な目標を達成できるのはたった10%の人で彼らの特徴は①目標を望むこととして肯定形で述べ②達成のための過程で起こるだろう困難な状況を考慮していた。ということです。(『その科学が成功を決める』)
これはガブリエル・エッティンゲン博士のWOOPモデルとも符号すると思います。
Wish 望み、願い
Outcome 目標
Obstacle 障害
Plan 対策
の4つを考えることで、成功確率が2-3.2倍になるというモデルです。
メンタルコントラスティングという考え方ですが、楽観と悲観とをコントラストをつけて、しっかりイメージすることが、モチベーションを上げ、未来を変えるために必要な行動をとることを助けてくれるのです。
最初のWishは「できるかどうか、どうやるかは度外視した、純粋な望みや希望」です。まずは夢を見るように、希望を描くのです
その次にOutcomeです。これは目指すゴールです。制約のないビジョンを描いてから、現実的に狙うゴールを決めるイメージですね。
ここまでは楽観系の未来ですが、ここから悲観系の未来を描きます。それが
Obstacle「ゴールに向けてのプロセスで発生しそうな障害、問題」です。
理想の未来を思い描いても、勝手に実現しないのです。人にはこれまで採用してきた行動パターンというものがあるので、基本的にはその行動パターンの結末に向かってしまうのです。そしてその途中で何かの問題に捕まってしまったら、そこから抜け出すことができないのです。(正確に言うと、自分が抜けられなくなってしまうような種類の問題があって、それが障害の正体です)
このような未来の障害を明らかにした上で
Plan「障害が起こってしまった場合の対策」を明らかにするのです。そうすることで障害は対策も含めて織り込み済みになるのです。そしてこれまで対応できなかった問題が起こっても、今回はちゃんと対応できると思うことでモチベーションもあがりますし、実際に障害にぶち当たっても、計画通り対策して、再びゴールに向かって動けるわけです。
このようなメカニズムにより、成功確率が2倍〜3.2倍も向上するのです。
GROWモデルのアプローチだけでうまくいかないときは、WOOPモデルも使ってください。クライアントが障害にはまって動けないことが予測されるときは、
メンタルコントラスティングを描き、障害を乗り越えて進んでいける状態になることをゴールに関わるのです。
ちなみに障害に関しては主に2系統考えてみると良いと思います。
・自分の思考や行動により障害にはまり込むパターン
飛ばしすぎてしまい息切れする、すぐに成果がでないと諦めてしまうなど
・対人関係により動けなくなるパターン
ネガティヴなことを言われて間に受ける、頼まれごとを断れずに時間がなくなるなど
こうやって、いくつかの主要な障害を出しておいて、それらに対して対策案を出しておけば万全ですね。
また、障害が回避できないときは、一人で抱え込まず相談したり助けてもらうのも大切で、もしコーチが相談を受けられるなら「はまったらすぐにコーチに連絡する」ように取り決めておけばいいわけです。それが難しければ誰にどのように連絡するかを決めておいて、可能な限り機械的に対応してもらうと良いでしょう。
WOOPに関しては、こちらの記事でも紹介しています
ということで、12の物語の前半部分①から⑥までご紹介してきました。これらはどちらかというとコーチング系の話でした。⑦から⑫まではカウンセリング系の落とし所になります。
これらを理解すると、辛い状況にいるクライアントや、問題の中から抜け出せないクライアントにどう関わっていけばよいのかの指針になると思います。お楽しみに
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