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CBC⑫「去ねババァ!と言いたかった自分」

毎日読んでくれてありがとう。「ちょっとなげーよ」と思われる方、ぜひ流し読みを!ということで今日も書きます。

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過去と他人は変えられない

これは交流分析の創始者エリック・バーンの言葉です。

You cannot change others or the past.
You can change yourself and the future.

有名な言葉なので、知ってる方も多いと思います。

過去に目を向けるよりも、未来に目を向けよう。
他人を変えようとするより、自分がやれることをやろう。

そんなふうに解釈するなら、コーチとしての僕は大賛成です。
けれどもカウンセラーとしての僕は、

とはいえ必要なら、過去も他人も変えることはできるよ

とも思っています。より正確には過去も他人も変わるよ、かな
なぜなら過去も他人もあなたの解釈に過ぎないからです。

以下のケースを読んでみてください。とあるクラスでの公開セッションのシーンです。

「せっかく引越ししたのに。。。」

と、彼は話し始めました。今回のクライアントは、40代男性。好奇心旺盛で行動力あるタイプ。最近「やっと念願の田舎暮らしを始めた」と言って喜んでいたのにどうしたのでしょうか。

僕「どうしたの?」
彼「隣の家のおばさんとうまくいってなくて」
僕「あら、そうなの?どういうこと?」
彼「なんか文句ばっかりいってくる感じで。。。最初は些細なことだったんだけど」
僕「うん」
彼「なんか、ゴミを出す場所がとか、焚き火の煙が〜とか。それがだんだんエスカレートしてきて」
僕「エスカレート?」
彼「はい。なんか、毎日のように粗探ししながら文句言ってくる感じで、これまでは僕がいるときに来てたんだけど、最近はいないときに来てるみたいで、どうしたらいいか」

僕は椅子を2つ持ってきました。そして言いました。
僕「一つは、あなたの椅子。もう一つは隣の女性の椅子です。どんな風に文句をいってくるのか、二つの椅子を使って表現してくれますか」

彼は一瞬悩んだのち、1メートル弱の間隔をあけて、二つの椅子を向き合わせました。

僕「これはどんな状態を表しているの?」
彼「いろいろ言ってくる相手に対して、僕は向き合って話をきいています」
僕「なるほど。どんな風に?」
彼「相手はちょっとおかしいんだと思うんです。でも僕としては冷静に一通り話を聞いた上で、こちらの考えを伝えています。こちらも非難されるようなことをしているわけではないので」
僕「なるほど。。。あなたが望んでいることはなんですか?」
彼「相手と考えは違うかもしれないけど、こちらにはこちらの言い分があることを理解してもらいたいです」

なるほど。。。。と僕は思いました。少し隣家の女性の気持ちがわかった気がしました。

僕は彼に、椅子に座るようにお願いしました。自分のほうの椅子に座り、正面の隣家女性の椅子を見てもらいます。そして問いかけました

僕「ギャーギャー言われて腹は立ちませんか?」
彼「。。。腹を立てても仕方ないので」
僕「だから冷静にきこうとしている?」
彼「はい。冷静にきいています」

うーん。やっぱりちょっと怒っている気がするんですよね(笑

ここで僕はとんでもないことを言いました

僕「すごいな〜。僕だったらこんなに言われたら、死ねババァ
くらい思っちゃうかもしれない」
彼「(笑)。。。いやーさすがにそこまでは。。。」
僕「あはは!そこまでは思わないとしても、どう思ってます?」
彼「。。。。。去ねババアですかね(笑)」
僕「なるほど!すいませんけど、変なお願いしていいですか?」
彼「はい。なんでしょう?」
僕「目の前の椅子にむかって『去ねババア!』と言ってもらっていいですか?」
彼「去ねババアと言うんですか?」
僕「お願いします」
彼「去ねババア!」
僕「もう一度。感情をより込めて」
彼「。。。。。去ね!ババア!!」
僕「どうして、普段冷静なあなたが、そんな風に思ってるんだろう。。。」
彼「。。。。。。。。。。。」
僕「何がそんなに嫌なのか。。。。」
彼「。。。。娘が怯えていて。。。。隣の人が玄関先で喚くので、外に出たがらなくて」
僕「。。。。。。。」
彼「。。。。。半分は娘のために、田舎で暮らそうと決めたのに」
僕「お嬢さんのため?」
彼「自然の中で自由に、豊かな体験をしてもらいたくて」

ちょっと過激なやり口でしたが、ようやく本音が聞けました。

もう少しマイルドな質問でやるなら「怒ってるように見えるけど、あなたの中では何が起こってる?」「怒っているように見えるけど、何に怒ってる?」「一番嫌なのは何?」とかでも良かったかもしれません。

彼にはまだ小学校に入る前のお嬢さんがいました。田舎ぐらしはその子のためでもあったのです。

僕「そっか。文句言ってくるのも困りものだけど、お嬢さんが怯えるようなことは許せない?」
彼「。。。。そうですね。冷静に言ってくれたらいいのに、玄関先でギャーギャー言うし、最近は僕がいないときに来るから、奥にいる娘が怯えることになる」

だいたいの目星がついたので、僕は彼にお願いしました。

僕「なるほど。。。。わかりました。。。しかし相手の女性に何が起きているのかな。。。。ちょっと立ち上がって、相手のほうの席に座ってくれますか?」
彼「はい」
僕「また変なお願いをします」
彼「(笑)今度はなんですか」
僕「彼女がやってるみたいに目の前の男性に向かって文句を言って欲しいんですけど。。。。」
彼「え(笑)」
僕「彼女と同じ熱量で!!」
彼「本当にやるんですか?」
僕「お願いします!」
彼(女性)「なんだあなたは××××!!!なんどいったら××××××!!この地域では××××!!文句言わずに従わないと××××!△△△△!!いい加減××××!!!」
僕「そんなふうに喋ってるエネルギーを感じて!!そのエネルギーは何て言いたがってる??」
彼(女性)「。。。。。。。。。」
僕「その内側で爆発してるエネルギーは、何ていってる?」
彼(女性)「。。。。ムカつく。。。。ムカつく。。。。」
僕「なにがムカつくの?」
彼(女性)「。。。。こいつがすかしてるから!」

言った後、彼は笑いました。彼女の立場にたったらそうですよね。何を言っても暖簾に腕押しで、きいてるようで、きいてない。だから腹を立てて、毎日のように言いにきた。それでも埒が明かないから、いないときを狙って、奥さんとお嬢ちゃんの前でやっていた。そんなことだったようです。

僕「すかしてるんだ?」
彼(女性)「すかしてる!親切で言ってるのに、理屈ばっかりで。。。頭いいのか知れないけど。。。」
僕「そっか。話が通じない。。。」
彼(女性)「通じない。何考えてるかわからない」
僕「そっか。あとは何がムカつく?」
彼(女性)「。。。。。。。。。。。。。。」
僕「。。。。。。。。。」
彼(女性)「。。。。。あ。。。。楽しそうだからムカつく」
僕「楽しそう?なんのこと?」
彼(女性)「。。。なんか友達とか頻繁に訪ねてきて、わいわいやってるし、地域のものともうまいことやってて。。。。」
僕「だめなんですか?」
彼(女性)「そうじゃないけど。。。。」
僕「けど?」
彼(女性)「。。。。私のところには誰も来ないから」
僕「そっか。。。。寂しい?」
彼(女性)「。。。。寂しいです。。。ずっと1人だし。。。」

他には?をきいて良かったです。おかげでこのセッションは大きく動きました。

僕は、ここで彼に立ち上がってもらいました。そして少し離れたところから二人の椅子を見てもらいながら、問いかけます。

僕「ねぇ。いまは彼女のこと、どう見える?」
彼「。。。。。うーん。寂しかったんですね。そういえば最初は親切で色々してくれてて助かってたんです。でも僕は他の人とも仲良くなったり、友達も結構訪ねてきてくれるので、隣とはあんまり関わらなくなったんですよね。。。思えばその頃からです。文句を言ってくるようになったのは」
僕「なるほど。。。。そして、ちょっと文句をいったらスカした反応されて(笑)。。。それで意地になっちゃったのかしら」
彼「。。。そうですね。寂しかったんだな。。。結構癖がある人だから、地域の人ともうまく行ってないっぽくて。だから僕とはうまくやりたかったのかな。。。」
僕「なるほど。。。。。」

はい!他人が変わりましたね!!

隣人=おかしい人

隣人=さびしい人

です。このように解釈が変わるということは起こり得るのです。

そしてこの変化はこんな風に展開します。

僕「ねぇ。。。。本当は、この人とどうなったら理想ですか?」
彼「うーん。。。。隣の家だしなぁ。。。。穏やかな感じで関わってくれて、こちらも苦手意識がなくなったらいいのだけれど。。。」
僕「なるほど!いいじゃないですか!!ちなみにそれが10点だとすると、現状は何点ですか?」
彼「。。。2点」
僕「2点の心は?」
彼「0点でもいいけど、静かにしてるときもあるし。。。」
僕「あるし?」
彼「一人で寂しいのが原因だから」
僕「そうか。。。。寂しくなくなれば変わるかもってこと?」
彼「そうかもしれない。。。。」
僕「ねぇ。。。どんなことでもいいですけど、今の状態を3点とかにするためにできることって、どんなことでしょう?」
彼「。。。。。今はこちらから話聞きに行くとかはハードル高いですけど」
僕「うん」
彼「。。。。。雪かきかな」
僕「雪かき?」
彼「はい。この時期、家の前を雪かきするんですけど、そのとき少しだけ、彼女の家の門の辺りまでしてあげようかな。。。一人で大変だと思うので」

僕は彼の優しさと器の大きさに打たれました。

僕「そっか。もしそうしたら、何が起こりそうですか」
彼「彼女がどうなるかはわからないけど」
僕「うん。だけど。。。」
彼「少なくとも僕は、いい状態でいられる」
僕「どういうこと?」
彼「僕は、自分ができる範囲ではあるけど、隣人のためにやれることはやる。相手が文句を言ってくるとしても」
僕「やれることはやる。。。」
彼「はい。僕は相手とのいい関係に向けてやれることは、やっている。そう思える」
僕「そっか!そして、お嬢ちゃんに、その姿勢を見せてあげられる!」
彼「。。。。。はい。。。。そうですね!!!本当にそうだ!!」
僕「いいですね!あと1つ提案なんですけど、せっかくだから隣家を気にせずにお嬢ちゃんにもっと自然の中で楽しんでもらうことって出来ませんかね」

彼は、とりあえず雪かきをしてみること。それからどうするかは、その時考えるが、関係をよくするために何かをしてみたいこと。そして娘を連れて遊びに出る機会を増やしてみる、と言い残して家路につきました。

数ヶ月後再開したとき「だいじゅさん。あれからすごいことが起きました。何日か雪かきをしていたら、久しぶりに彼女が僕のいるときに来たんです。また何かを言われるかと思ったら『お菓子が余っちゃって』と持ってきてくれて。。。普通に世間話をして。。。それからは世間話したり、野菜とか果物を持ってきてくれたり。。。今では娘も普通に話をするようになりました」

今度は彼の行動によって、彼女の行動が変わりました!!

すごい話で僕も感動しました。

彼は彼女とのポジションチェンジのワークによって気づきました。相手は「おかしい人」ではなく「さびしい人」だったのです。

おかしい人だと思っていたときは、道ですれ違うと「またどっかに文句いいに行くのかな?」と思っていたかもしれない。昼間から相手の家のカーテンが閉まっていると「隙間からこっそりこちらを覗いているんじゃないか」と思ったかもしれない。

寂しい人だとわかったら違います。道ですれ違うと「あら、また今日も一人だ。寂しいだろうな」と思うかもしれない。昼間から相手の家のカーテンが閉まっていると「大丈夫かな、ひとりで寝込んだりしてないかな」と思うかもしれない。

相手への見方が変わると、こちらの感情や思考が変わり行動が変わります。

雪かきも効果的だったと思います。しかし彼の彼女に対する見方が変わったから、彼の感じ方が変わり、自然と彼女に対する振る舞いが変わったのだと思います。彼女はそれに気づき、応えてくれたのではないか。そう思います。

続く





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