コーチングのゴールと『12の物語』⑨【CBC】

このシリーズも最終回です。

今回は⑫「なんだ問題じゃなかった!」について考えます

12の物語(3)

まずはケースをつかって考えてみましょう

「ぽ」が書けない娘

40代男性からの相談で小学校高学年の娘が「ぽ」が書けないことに気づいてびっくりした。どう関わったらいいのか?

と言うものがありました。

親御さんの心配はわからなくもないですが、やや深刻にすぎる雰囲気だったため、僕は早々にこんな問いかけをしました

現状のことは一旦おいておいて、お嬢さんが20代になったときのことを想像してみてください」

そして、就職して楽しく人生を生きている娘さんのことを一緒にイメージしてみたわけです。

そのうえで次の質問をしました

「このときのあなたが、現在のあなたにアドバイスするとしたら何と言うでしょう?」

クライアントから出てきた言葉は
「そんなこと気にしなくても大丈夫だよ」

というものでした。

「ぽ」を書くくらいのことは、すぐにできるようになる。深刻な問題ととらえずに普通に関わったらいい。それよりも、娘が夢中でやっているバスケを応援してあげたり、一緒に楽しんだり、それを大切にすると、望んでいる未来にくることができるよ。というメッセージだったのです。

このセッションから何年も経って、現在そのお嬢さんは高校生になっていますが、あいかわらずスポーツ、そして勉強も頑張っているようです。クライアントは「あんなに心配するようなことでは、やはりなかった」と笑っていました

今の自分から見たら大したことはないこと

子どものころのあなたが悩んでいたこと。若い頃のあなたが悩んでいたこと。そのときには大きな問題だと思っていたけど、現在の自分からみたら大したことではない。そんなことってありませんか?

渦中にいたら大変だと思うけど、過ぎてしばらく経てば大した問題ではないことは、よくあることです

だから、今の自分が大問題だと思っていることも、未来の自分からみたら大した問題でない可能性がありますね

だとしたら、いまの自分から抜け出して、未来の自分の視点から見てみる。そうすると問題の見え方が変わってきます

これが12番目の落とし所⑫なんだ問題じゃなかった!の正体です

問題の「解決」と「解消」

問題の解決とは

問題の現状を明らかにして、それをあるべき状態へと変えていくことです

問題の解消とは

問題だと思っていたものが問題ではなかった、もしくは問題は存在しなかったことに気づき、問題が消失してしまうことです

全ての問題は解決しなければいけないわけではありません。そもそも問題が存在していないのに、問題があると思い込んでいるだけのこともあるのです。

問題解消には大きく分けて2パターンあります。

1つ目は、現場検証によって解消されるパターン
2つ目は、目的から考えたときに解消されるパターン

現場検証による解消

例えば「好きな相手に嫌われている。どうしよう」という悩みについて考えてみましょう。

CL「どうも彼女に嫌われているみたいで」
CO「どういうこと?」
CL「こないだあったときに、話しかけてるのに上の空だし、関心なさそうで」
CO「どうしてそれで嫌われてるってことになるの?」
CL「うーん。そういわれたらそうだけど、でも今まではしっかり話をきいてくれる子だったから」
CO「彼女が上の空だったのは、あなたを嫌っているという理由以外に、どんな可能性があるかな?」
CL「。。。体調が悪かった」
CO「それはありそうだね。あとは?」
CL「なんか嫌なことがあった」
CO「うん。あとは?」
CL「悩み事があった。。。」
CO「どれが本当の理由だと思う?」
CL「。。。。わからない」
CO「じゃあ、どうしたらいいんだろうね」
CL「彼女にきくしかないけど」
CO「けど?」
CL「嫌いって言われたらどうしよう」
CO「そう言われたら、まずは彼女の話をしっかりきいてきたらどうかな。必要なら、そのあと相談にのるからさ」
CL「ありがとうございます」

そしてこのクライアントが勇気をもって相手に尋ねてみたら「いや別に嫌ってないよ」と言われたなら、それで問題は解消しますね。

クライアント「え、じゃあどうしてこの間ムスッとしてたの」
彼女「ごめんね、あなたが嫌だったわけじゃなくて、仕事で嫌なことがあっただけ」
クライアント「そうだったんだ。もし今度そんなことがあったら、よかったら話聞くからね」
彼女「ありがとう」

そもそも問題は存在してなかったのです。クライアントの脳内で問題を作り上げていたのだとも言えます

このケースは「不安」に関するケースでもあります。「嫌われているんじゃないか」という不安ですね。不安は現実を直視することで解消することがあります。逆に直視しないでいると、どんどん不安が増していきます。要注意ですね

目的から考えることによる解消

こちらはすでに紹介しました。

さきほどの「ぽ」が書けないのケースも、目的から考えることによる解消ケースです。

10年以上後の理想の状態を思い描いて、その状態から振り返ってみることで「ぽ」が書けないこと自体は大した問題ではない、と思えるようになったわけです。

僕は別に問題をなくしたいわけではないのです。むしろ10年後から見たときに、それがしっかり取り組むべき問題なのであれば、しっかりと取り組めばいいわけです。

ゴルファーとスポンサー

別のケースだと、プロゴルファーの方から「スポンサーの方との関係が悪くなってしまった。そのせいで試合にも集中しずらい。なんでこうなったのか」と相談を受けたことがあります。

スポンサーとの関係が悪くなったことは問題で、その原因を明らかにした上で解決したいという話です。

でもこれが問題かどうかは未来から見てみないとわからないのです。

だから僕は彼に問いかけました

CO「その問題は一旦置いておいて、あなたは何のためにゴルフをやっているんですか?」
CL「なんのため。。。。ですか?」
CO「はい。何を目指してゴルフをしているのか、プロゴルファーをやっている目的が知りたいのです」
CL「。。。。目標みたいなことでいいですか」
CO「はい。きかせてください」
CL「今期勝ててないので、まずはツアーで1勝したいです」
CO「いいですね。でも、もう少し、本当はどうなりたいのかきかせてもらえますか」
CL「。。。。。賞金王になりたい、と思ってます」
CO「いいですね!もう一声」
CL「もう一声?」
CO「はい。だって、お金のためにゴルファーやってるわけじゃないでしょう」
CL「。。。。本当はいつか、マスターズに出場できたらと思っていて」

というような展開になり、

「マスターズでどんなプレイをしたいか」「どんな結果が出せたら最高か?」などを一緒に考えてみました。

コーチングというものは、このように理想の未来を描いてから、それを起点にしてゴール(今期は何を目指すか、など)を考え、

次いで、そのゴールに向けて、何を課題として取り組んでいくのか考えるのです。

このような進め方をバックキャスティング(未来から逆算する)と言いますが、問題に関してもバックキャスティングで検討したいわけです。

マスターズに出ている自分から見たら、そのスポンサーとうまくいっていないのはむしろチャンスかも知れないのです。だったらはやく離れて別のスポンサーを見つけた方がいいのです。

何が問題で、何がリソースであるかは、未来から見てみないとわかりません。

相撲取りになりたいなら、太っているのはリソース

このように、目的から見てみたときに、問題が消えてしまう(解消する)ことがあるということを忘れないでください。

だからクライアントがセッションに問題を持ち込んできたときには、すぐに解決しようとせずに、まずは「目的は何か」を明らかにするというのは大切な態度です。

スピリチュアルについて

スピリチュアルな視点を持つことも役にたちます。

スピリチュアルな視点を持つということは、自分のやっていることや、現在所属している人間関係を超えて、「命とは何か」「宇宙の中で、自分とは何ものなのか」「人生とは何か」など考えることです。

そのような大きな視点で、生きることの意味について考えてみると、それまで問題だと思っていたことが、小さなことに思えたりします。ここでも問題が解消する可能性があるのです。

私たちは現実の人間関係や、その中で大切にされている考え方に影響を受けやすいので、そこから一度離れてみるのは大切です

アドラー心理学では、このような視点を持つことをスピリチュアルタスクと呼んでいます。一度スピリチュアルな視点で目的に気づいてから、現実の人間関係の中で何をどうするか考えることを勧めています。


ノーマライズ(普通化)のことも知っておこう

問題が解消される別パターンにノーマライズ(普通化)があるのでそれについても触れておきます。

ノーマライズ=悩んでいることや困っていることが、一般的なこと(普通のこと)であると認識してもらうこと

例えば、幼い子どもを育てている親が
「うちの子がご飯を食べなくて心配です」「下の子のことを叩くのですが、こんなに粗暴で大丈夫なのでしょうか」「友達の家からおもちゃを盗ってきてしまって。。。」

などと言った場合を考えてみましょう

もちろん心配な気持ちになるのはわかりますが、よほどのことでない限り、それらは子どもがとる普通の行動であるとも言えるわけです。

だから、
「うちの子がご飯を食べなくて心配です」
 →食べられるときに食べられるものを食べてもらう
「下の子のことを叩くのですが、こんなに粗暴で大丈夫なのでしょうか」
 →叩く代わりに言葉で伝えることを促す、一緒に仲良く遊ぶ
「友達の家からおもちゃを盗ってきてしまって。。。」
 →一緒に謝りに行く。欲しいものがあったら相談するよう伝える

など普通の対応をしていたら、問題は起きなくなったりするのです。

ですから、育児サイトを調べたり、専門家に相談したりした結果、それらが普通のことであり、自然と変化していくということに気づけば、それで問題が解消してしまうのです。

コーチカウンセラーはノーマライズのことも覚えておきたいですね。調べてみたら実は普通のことで、問題だと騒ぐ必要のないこともあるからです

まとめ


今回のシリーズでは、コーチングカウンセリングをしていく上での12のゴール(落とし所)を紹介しました。

いろんな落とし所へと持っていけるケースもありますし、一回のセッションの中で複数のゴールの達成を狙えるケースもあります。

ぜひ、セッションをしながら、どのゴールを目指せばいいのか考えたり、セッション後の振り返りで、どのゴールを目指したらよかったのかを検討したり活用してみてください。

もちろん唯一の正解がないのがコーチングカウンセリングですが、ゴールを想定せずに進めていくよりは、さまざまなアイディアが出てきたり、プロセスが仮説検証できたりと良いことがあると思います。

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