コーチングのゴールと『12の物語』⑧【CBC】

今日は対人関係問題の落とし所について解説します

12の物語(3)

そもそも分かり合えないという前提


全ての悩みは対人関係の悩みである

『嫌われる勇気』

コーチカウンセラーをしていると、対人関係に関する悩み相談をたくさん受けます。全ての悩みに対人関係が絡んでいるというのは本当だな、と思うほどです。

そして僕たちの処方箋はいつも決まっています。

相手をコントロールしようとするのはやめましょう。相手の考えや行動を尊重しましょう。その上で適切な距離を取りましょう。

そしてあなたはあなたの人生をいきましょう。一緒に生きたい人と話し合って、何に向けてどう協力するのかを決めましょう

相手とあなたは違う人生を生きています。だから分かり合えないのは当たり前です。

少しでもわかり合いたければ、お互いがどんな人生を生きてきたのかを具体的にシェアしあう必要があります。そしてその体験の中で、何をどう感じたのか。人生をどう生きようと決めたのか。それを知ろうとしましょう。そしてあなたの人生についも相手に伝えましょう。

それが理解しあうということなのだと思います。

I do my thing, and you do your thing.
I am not in this world to live up to your expectations.
And you are not in this world to live up to mine.
You are you and I am I, and if by chance we find each other, it's beautiful.
If not, it can't be helped.
私は私のことをする。あなたはあなたのことをする
私はあなたの期待に沿うためにこの世に生きているわけではない
あなたも私の期待に沿うためにこの世に生きているわけではない
あなたはあなた。私は私。そしてもしお互いが出会うならそれは素敵なこと
そうでないなら、それは仕方のないこと

ゲシュタルトの祈り

フリッツ・パールズによる「ゲシュタルトの祈り」の最後の2行

「もしお互いが出会うならそれは素敵なこと」の出会うというのは、単に物理的な出会いではなくて、お互いを理解しようとしあって、その上でお互いの人生が重なっていくこと、それが素敵だと言っているのだと思います

そして

「そうでないなら、それは仕方のないこと」と言う部分も、お互いを理解し合おうとしてみたが、理解し合えなかった。もしくは、お互いを何らか理解し合えった上で、人生が重ならなかった。それは仕方のないことだ、という意味なのだと思います

そもそも私たちは人間は、全ての人と仲良くなる必要はないと思います。

一緒に生きていける人の数は限られていますし、全ての人とわかり合い、協力しながら生きていくというのは非現実的です。

お互いを尊重しつつ、それぞれにふさわしい距離を取ればいいのです。そして一緒に生きていきたい人とは、しっかりと理解しあって合意点を探っていけばいいのではないでしょうか

⑩この人なりの事情があった!◯◯の点では協力できる!

もしあなたが「相手と仲良くなりたい」「協力し合いたい」と思うなら、まずは

・あなた自身が大切にしたいこと
・どんな体験があったかから、それを大切にしたいと思ったのか

を明らかにしてみるといいと思います

そして考えてみてほしいのです。相手にも同じように

・相手が大切にしたいこと
・それを大切にしたいと思った体験

があるのではないか?と。

お互いにそれを伝え合ったら、何が起こるでしょうか?

お互いのことに関する理解が深まりますし、それだけではなくて、お互いに考え方が変わり始める可能性があります。

なぜお互いに考え方が違うのか?

それはお互いの体験が違うからです。だから体験をシェアしあったら、お互いの考えが変わっていくのです。

新しい体験をすると、私たちの考えが変わっていくことがあるように、相手がした体験をしっかりと聴くことでも、私たちの考えは変わっていくことがあります。

そしてそれは、あなたの体験をしっかりと伝えることで、相手にも起こるのです。

ポイントは相手を変えようとしないこと。お互いに「ただ相手をわかり合おうとすること」に徹するのです

変えようとするな。知ろうとせよ

カール・ロジャーズ

ですね。ただ知ろうとすることで、お互いが変わっていくのです。

私たちの無意識は、変えられることを望んでいません。

・何が大事か
・どう行動すべきか

ということに関するプログラムは、無意識にとってこれまでの人生の中で得てきた貴重な教訓だからです。

けれども無意識は、受け入れられ、理解しようとされるなかで、どんな経緯があってその考え方を得たのかということが明らかになれば、自らの意思で、必要に応じてそれを書き換え始めるのです。

ポジションチェンジでは何をしているのか

関係を変えようと思えば、本来は二人でそれぞれの体験をシェアしあいながら、相互理解を深め、協力に関する合意点(何が目的で、何を目標にして、それぞれどんな行動をするか)を見つけていくものなのです。

ところが多くの場合、コーチカウンセラーへの相談には、当事者の一人しかこないわけです。(妻だけがくる、上司だけがくる、など)

僕たちコーチはそんなとき、椅子を2つ用意します。
クライアントである奥さんの椅子と、相手方であるご主人の椅子です。

そしてまずは奥さん自身の椅子に座ってもらって、ご主人に対して言いたいことを言ってもらうわけです。

言いたいことを言ってもらうといっても罵詈雑言をしてもらいたいわけではありません。

「何をわかってもらいたいのか?」(理解)
「どうしてもらいたいと思っているのか?」(行動)
を言葉にしてもらいながら

「それはどうしてなのか?」の答えである、奥さんの目的や、背景となる体験を明らかにしたいのです。

ここまでのプロセスでも十分に価値があります。なぜかといえば、ご主人と話すときに

①理解したもらいたいこと②とってもらいたい行動③その目的と背景

をわかりやすく伝えられるなら、ご主人が理解し協力してくれる可能性があがるからです。

しかしさらにプロセスを続けて、僕たちは、奥さんに「ご主人の椅子」にも座ってもらいます

そして
「ご主人が普段言っていること」(言葉)
「やっていること」(行動)

の裏側にある、
「ご主人が分かってほしいがっていること」(理解)
「奥さんにしてほしがっていること」(行動)

を想像してもらおうとするのです。そしてさらには、その奥にある、ご主人の目的や背景となる体験にも想像を広げていきたいのです。

もちろん、椅子を座り変えただけで全てが分かるわけはありません。

けれども、相手の視点から相手を知ろうとする態度が大切なのです。そうしてみることで、ご主人が普段言っている言葉が意味していることに気づいたり、以前話してくれた話とのつながりが理解できたりして、ご主人への理解が深まっていったりするのです。

その上で大切なのは、こうやって生まれた仮説をもとにご主人とコミュニケーションを取ること。そしてどちらかが妥協するのではなく、お互いに納得できる合意点を探そうとコミュニケーションを続けることです。

ポジションチェンジではそのための事前準備をクライアントとしているのです。

そしてポジションチェンジで出てくる結論の一つが

⑩この人なりの事情があった!◯◯の点では協力できる!

なわけです


⑪この人なりの事情があった!適切な距離を取るのがよい!


とはいえこのようなプロセスを経ても合意点が見つからないこともあります。

例えば親子関係。親との折り合いが悪いというクライアントの話をきいていると、一方的に子どもを搾取しようとしてるケースなど、きちんと距離をとったほうがいいと思われるケースがあります。

もちろんその場合にも、親の側にも何らかの事情があるわけですが、それにしても、この状態であれば、適切な距離を取るのがよいという結論になることがあります。

上司との関係などであってもそうです。明らかに価値観が違ったり、お互いに協力しあうことが難しいケースであれば、適切な距離(異動や転職)を取ることを検討する必要があります。

置かれたところで咲きなさい

という考え方もありますが、今いる場所が全てではありませんから、必ずしもそこで頑張る必要はないのです。

もちろん、前提としてわかり合おうとすること。そのためにコミュニケーションをとってみることはしたほうが良いと思います。

そうしてみないと、そもそもお互いの背景も目的もわからないからです。けれどもそうした努力をしてみた上で、距離を取ろうと思うなら、次にいっていいと思うのです。

むしろケースによっては、コーチである僕たちから、距離を取ることを提案することもあります。

もちろん「離れるべきだ」と言うような言い方をすることはありません。それはクライアントの課題であり、決めるのはクライアントだからです。

けれども「このままいたらどうなるだろう?」「離れたらどうなるだろう?」などと問いかけてクライアントによくよく考えもらうことなどはしたいと思っています。

「今の場所で頑張れない自分はダメだ」「何があっても親の面倒は見なければいけない」などと思って頑張るのもクライアントの自由ですが、

離れた方が自分らしく生きられるなら、そうすることも悪いことではないと思うからです。

ということで、人間関係の悩みを相談された場合にやることの基本は同じです。

自分の椅子と相手の椅子を用意すること。
自分の椅子に座り、自分が望むこと(とその背景)を明らかにすること
相手の椅子に座り、相手の望むこと(とその背景)を明らかにすること
お互いの椅子を俯瞰しながら、協力できる方向性があるのかどうか明らかにすること

協力できる方向性がありそうな場合は、実際にそこに向けて相手とコミュニケーションをとってもらいますし

協力できる方向性がなさそうな場合は、適切な距離をとるためのコミュニケーションをとってもらうわけです

このときにアサーション(アサーティブネス)の勉強をしておくと、伝え方のバリエーションが増えて、やりやすいと思います。

アサーションについても、近く記事を書きたいと思いますが、書籍などもたくさん出ていますので、興味のある方は探してみてください

今回は対人関係の問題の落とし所を2つご紹介しました。

次回でこのシリーズもいよいよ最終回。問題の解決ではなく、解消というお話をしたいと思います。お楽しみに

僕たちと人生を変えるコーチングに取り組みたい方は以下をどうぞ


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