コーチングのゴールと『12の物語』③

コーチングカウンセリングの落としどころ集である『12の物語』。今日もいきましょう

再掲:12の物語(1)

今回は④をご紹介します。

④人生で大切なのは◯◯だ!私は△△をする人だ!

価値観とアイデンティティですね。

これらはとても大切です。GROWモデルだけをしていると忘れがちですが、SMARTゴールを思い出してもらうと、価値観やアイデンティティの大切さに気づくかもしれません。

SMARTのRはRelevant(関連性のある)ですね。大目的と関連性のあるゴールかどうかをチェックしようということです。

大目的について、事例付きで理解したい方はこちらの記事をどうぞ

価値観やアイデンティティは、ゴールを描く際の指針になるものです。

価値観は

価値=大切なもの
観=ものの見方

ですから、何が大切かに関する見方・考え方のことです

別の言い方をすれば、価値観は人生の指針になるものです。例えるなら、あなたの人生の北極星。迷ったときにも、自分の価値観がわかっていれば、それにしたがって進んでいけるわけです。

早速チェックしてみましょう。以下のリストは僕が作った価値観リストです。クライアントから出てくる様々な価値観を一覧にしています。

ぜひ、リストの言葉一つ一つをゆっくり読み上げながら、あなたの人生にとって大切なワード、ベスト5を作ってみてください。

価値観リスト

どうでしたか?

宮越のベスト5

例えば僕のベスト5はこんな感じ。中でも発見という価値観がベスト1です。中でもコロンブスの卵のような、見過ごされがちな単純なアイデアへの情熱があります。

このように自分の価値観が明確になれば、それが人生の指針になるわけです。

例えば僕は仕事を選ぶときに、

「この仕事をすると発見があるだろうか?」「どんなふうに取り組むと発見があるか?」

などと問いかけるわけです。こうやって、価値観が指針となって人生の選択をしていくわけです。

※ちなみに多くのコーチが活用してくれている『目線切り替えMAP』も僕の発見への情熱から生み出されたフレームワークです。※目線切り替えMAPについては以下の記事をどうぞ

ということで、ぜひ、コーチであればクライアントの価値観を明確にすることを手助けしてください。

そのためにはまず相手の価値観に興味をもつことです。それを言語化しようとあなたがすることです。

そもそも指針としての価値観というコンセプトをもっていない人、価値観を言葉で表現しようとしたことがない人もたくさんいます。

だから「あなたの価値観はなんですか?」とたずねても、うまくいかないことが多いと思います

相手の話を聞きながら「この人の価値観は何かな?」というところに意識を向けるのです。

CL「私は旅に出かけるのが好きで、中でも自然が多い場所に出かけるのが好きです。開放感を感じたり、何か普段の自分を超えて、ちょっと怪しい言い方ですけど、自然との一体感みたいなのを感じるのが好きなんです」

例えば、このような話を聞きながら相手の価値観を知ろうとするのです。たぶん旅行は価値観ではありませんね。手段だからです。開放感とか一体感を感じられることがあるなら、旅行以外でもいい可能性が高い。

では、開放感とか一体感は価値観でしょうか。そうかもしれませんし、他にあるかもしれません。例えば

自由、調和、あるがまま、本物、共鳴、多様性、つながり。。。。。

これは先ほどの価値観リストからピックアップした言葉です。こんなふうに「この人の価値観はなんだろう?」とコーチであるあなたが興味を持つのです。

そして「あなたにとって大切なのって◯◯なのかな?」などと問いかけてあげてほしいのです。そうやって、自分の大切にしたいものにぴったりくる価値観ワードに出会っていくのです。

本格的にやりたかったら、クライアントの人生を振り返ってもらって、心が動いた出来事ベスト5。などを出してもらうのです。

子供の頃のことから思い出してもらって、

嬉しかった
夢中になった
幸せだった
感動した

ような出来事をピックアップしてもらってください。

そして、その話を一つ一つ聞きながら、その中に含まれている価値観を探していくのです。

例えばこんな感じです

 文化祭で僕のクラスは演劇をやることになりました。みんなが頑張って準備をしていました。斜に構えた高校生だった僕は、不参加を表明して、練習に出ずに帰っていました。本番1週間前。体育館で最終の舞台稽古があるというので、何気なく見に行っていみました。ボロボロでした。セリフは飛ぶ、音楽は流れない。大道具は出てこない。。。。みんな落ち込んでいました。その様子をみて僕はなぜか「大丈夫だよ!絶対になんとかなるよ」とみんなに言っていました。みんなが僕をみました。
 「ちょっと調整すればなんとかなるから」。そう言って僕は、それぞれの担当者と話をしていきました。全体のタイムテーブルをつくって、どのタイミングで誰が何をするか、それをどう管理したらいいかを決めていきました。それで安心感が得られたのか、みんなどんどんクリエイティブにアイデアを出せるようになっていきました。みんなに笑顔が戻っていました。もちろん本番は最高の舞台になりました

文化祭の思い出

2005年に29歳だった僕は10年以上前の高校時代のエピソードを、コーチの導きで思い出したのです。

そしてこのエピソードの中から「笑顔」「クリエイティブ」「一体感」などの大切な指針に気づき、会社のチームメンバーとの関わりが大きく変わることになりました。

じつは、大切なエピソードであっても忘れていることもたくさんあります。ですから、

「保育園、幼稚園」「小学校」「中学校」「高校」「専門学校、大学」「20代」「30代」「40代」など年代を区切って、その中で感情が動いたエピソードを探していくのがよいと思います。

感情が動く

というのが大切なんですね。身体が反応していることが。

頭で「これがいい」と考えたというより、身体が「これが好き!」と反応しているような出来事。それが自分が大切にしたい価値観と関係している可能性が高いのです

ということで、このようなワークをやったことがない人は、ぜひまずは自分史の棚卸し作業と思ってやってみてください。

そして各エピソードからいくつかづつ価値観を発見して、それらを全てまとめて、ベスト5を作ってみてください。より納得感のある指針になると思います。

人によっては、子どもの頃の記憶にほとんどアクセスできないことがあります。無理に思い出す必要はありませんが、思い出せる範囲でよいので、古いものからエピソードを探していくのがおすすめです。

どうしてでしょうか?

仮にこの5年に起こったエピソードだけ使って、自分の価値観を知ろうとしたとしましょう。

これだと、出会っている人、体験していることの範囲が狭いのです。だからその範囲でしか自分が理解できないのです。

自分を理解するためには、いろんな人との関係の中で自分を理解していく必要があります。

ある国会議員の先生はコーチングを受けるなかで、何十年も前の学生時代。そのときの師匠とも言える人との出来事を思い出して、忘れていたとても大切な価値観に気づきました。

このように自分の歴史を振り返り、いろんな人との中で、様々な体験をした自分。それらを多角的に見つめながら、人生を通じて大切にしたい価値観を探していきたいのです

文化祭のエピソードは、拙著「人生を変える!コーチング脳のつくり方」にも載せています。よかったらどうぞ!


次にアイデンティティです。

アイデンティティ=自己認識。自分(たち)は何者であるか?という意識

これもあまり考えたことない人が多いですね。

「あなたのアイデンティティは?」

そんな質問を人生で一度もされない人もたくさんいます。

ただ、アイデンティティに気づくというの大きなことです。

コーチングに出会う前、僕は自分のことを

仕事を一生懸命やる人

だと思っていました。

そしてその背景には

一生懸命にやるしかない人、不器用な人、不真面目な人

という自己認識があったわけです。

だからマネージャーになっても、一生懸命に仕事をするしかなかったわけです。そしてチームメンバーのことも不器用な人、不真面目な人のようにみてしまっていたので「もっと一生懸命やれ!」と叱咤するパワハラ上司になってしまいました。

ところが、コーチングを受けるようになって、過去のエピソードから忘れていた大切な価値観に気付いたり、それに基づいて、未来を描いたりする中で、自分のアイデンティティ(自己認識)も変わっていったのです

コーチは問いかけてくれました

「だいじゅは、本当は誰としてチームメンバーに関わりたいの?」
「本当のだいじゅはどんな存在なの?」

そのとき出てきたのが「大きな樹のようなコーチ」のイメージでした。

大きな樹は「大樹」という名前からだと思いますが、僕は自分の名前があまり好きでなかったんですよね。子どものころから大人に「名前負けしてる」とか「おまえはせいぜい小樹だ」とか言われたりした記憶があったのです。(なんかの事情があったのでしょうが、ひどい言い方だと思います)

でも、コーチに真剣に問いかけられて、自分の深い部分に降りていったときに、出てきたのが、大きな樹のイメージだったんです。

そして、その周りにはたくさんの人がいて、思い思いに過ごしている。何かに熱中している人もいれば、ゆっくりと休んでいる人もいる。そんな人たちに居場所を提供しながら「いいね!」とか「大丈夫だよ!」とか「もっとやってみて!」とか言ってる自分。

ああ、コーチだな。と思いました。

僕はコーチなんだ。と

それで自分のアイデンティティがコーチに切り替わりました。

そうなるまでは、がんばってコーチングやっている側面があったのですが、その日から変わりました。チームメンバーにじゃなくても、会社外で出会った人でも、自然と勇気づけの声がけをしている自分に気づきました。

チームメンバーの話をきくときも、まずはコーチとしてしっかり相手の考えを聞ききってから、マネージャーとして彼らと結論を出していくというスタイルになりました。

コーチがアイデンティティで、マネージャーは1つの役割みたいに変わったのです。

ここが自分のチームが大きく変わったきっかけだったと思います。

ぜひまずはご自身に、アイデンティティを問いかけることから始めてください

「私は誰だろう」
「私の使命はなんだろう」

海外のコーチの定番質問に「墓碑銘になんと書かれたい?」というものがあります。

「亡くなった後、どんな人だったと言われたい」
「どんな人だったと覚えていてもらえたら嬉しい」

のような意味ですね。

「何をした人だと言われたい?」
「何を生きた人だと言われたい?」
「なんのために生きた人だった言われたい?」

もいいですね。あと少し角度が違いますが

「本当のあなたは、どんなグループに属する人か?」

というのも大切な質問です。

亡くなった後に天国で、あなたが所属していたチームのメンバーと会うことになったら、そこには誰がいるのでしょう?

そんなことを考えてみることでも、あなたの本当の姿やミッション(使命)が見えてくるかもしれません。

ぜひ、過去に体験した出来事や出会いを思い出しながら、自分に問いかけてみてください。

そして、クライアントにも問いかけてほしいのです。

「あなたは誰ですか?」と。

そして直感があれば

「本当のあなたは◯◯な存在ではないですか?」などと

感じことを伝えてみるのもありです。クライアントと一緒にアイデンティティに目を向け、言語化を進めてください。

今回ご紹介した価値観やアイデンティティは、コーチングに命を吹き込んでくれます。これらは人生の意味そのものだからです。

そして、大切なことであるからこそ、なかなかピンとくる言葉がみつからずに難航することもあります。

そんなときにお勧めするのが、

仮決めすること

です。

価値観はコレ!
アイデンティティはコレ!

と仮決めしてしまうこと。そしてそれを書き出しておいて、何度も見てみるのです。

そうすると、そのことが刺激になって他のアイディアが出てきます。

とにかく不完全なままでいいので、仮決め力でつくった、今現在の仮説を持ち続けてください。

次回に続きます

僕たちと人生を変えるコーチングカウンセリングを学びたい方は以下をどうぞ




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