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『トロッコ問題』について聞かれたらこう答えるといい。

『トロッコ問題』とは。

『トロッコ問題』。
耳にした事がある人はいるだろうか。
ご存知無い方のために、まずその内容を解説したい。

あなたの目の前には線路がある。
一方からはトロッコが迫ってきており、その先では5人の作業員が工事作業中である。
このままでは5人は確実にトロッコに轢き殺されてしまう。
しかし、あなただけは目の前の分岐器を切り替える事ができ、それにより5人の命を救う事ができる(5人の命を救う事ができる唯一の方法)。
だが、切り替えた先でも1名の作業員が工事作業中であり、切り替えるとその作業員は確実にトロッコに轢き殺されて死んでしまう。
というのがこの問題の内容である。
テーマは「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」だ。

これは倫理学の問題であって、道徳などが絡む思考問題である。
その為、絶対的な正解は存在しない(というか、したら問題にならない)。

だが、この問題は現実に起こり得ないとは言えない。
我々日本人がこの状況に直面した場合、どのような判断をすべきか。現実的に考えてみたい。

実際に考えてみる。

とは言え選択肢は2つしか無い。
①分岐器を切り替える。
②分岐器を切り替えない。
である。

どちらも倫理学的にはありうる選択肢である。
しかし、『現実的に』これを考えるなら答えは一つだ。
②である。
何故だ。
この点について解説していきたい。

我々日本人が現実的にこの問題を考えるにあたって避けては通れないのが「法律」だ。
日本は法治国家であり、究極的にはその行動の是非は法律によって結論づけられるからである。
そこで法律的なアプローチを入れて選択肢を見ていこう。

①分岐器を切り替える。

この場合、確かに5人を救う意思で5人を救ってはいるものの、それとは別に、1人が死ぬ事を分かって分岐器を切り替えて、それにより1人の死という結果を引き起こしている。これはまさに殺人罪に該当してしまうのだ。

②分岐器を切り替えない。

ではこれはどうか。
確かに5人は死亡してしまうだろう。
しかし法律上あなたが何らかの罪に問われることはない。
何故なら、あなたは5人を助ける義務がないからだ。
(ここでポイントなのが、自らトロッコを動かしてしまった等の場合には5人を助ける義務が発生してしまう。→過失致死罪などが成立。)
法律は無闇に人を助ける義務を我々に負わせることはない。
そうでないと何もしていないのに気づいたら義務違反で犯罪者となってしまい、我々は自由な行動ができなくなるからだ。法的作為(何かをする)義務が存在しないということである。

終わりに。

いかがだっただろうか。
トロッコ問題。現実に全く起こり得ないとは言えない話であるため、現実的に考えてみたということだ。倫理問題に法律で回答するというのは無粋の極みであるが、読者の方々の知識になってもらえたら嬉しい。

参考条文

刑法199条(殺人罪)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
刑法210条(過失致死罪)
過失により人を死亡させた者は、五十万円以下の罰金に処する。
刑法211条(業務上過失致死罪)
業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。

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