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#5 産業・労働領域での心理臨床1

私たち臨床心理士・公認心理師(以下「心理療法家」という。)は,実は様々な領域で働いています。

公認心理師を例に,その職域を図示しているページはこちらからご覧いただけます。

主要5領域(とか分野)と呼ばれているなかでも,私は保健・医療と産業・労働での臨床を専門としていますが,この記事では,産業・労働領域での心理臨床について綴っていこうと思います。

私が従事してきた,自治体病院内に開設された職員相談室の対象者は,県立3病院に勤める全病院職員です。全病院職員といってもそこには多種多様な職種が含まれます。医師,看護師等広義の医療職も,病院の運営等に従事する行政職員さんも,窓口対応等を担うクラークさんも,その対象範囲には幅広いものがあります。

総じていえることは,病院職員の皆さんは日々,高ストレスの環境下で働いており,心理的なサポートも不可欠であるということです。

自治体病院内職員相談室というその特殊性を挙げると,相談に来られる方の多くが医療職であるということがあります。お目にかかった医療職の皆さんの多くは,その職責からか,自らを“心理的支援を受ける必要のある者”として見ることに慣れておらず,心理的支援を受けることへの抵抗を感じておられることも少なくありません。

自発的に来談されるかたも多くいらっしゃいますが,所属の上司等に促されて来室されることも珍しくなく,例えばですが,「○○長から,ここに来るように言われたんですけど,別に困っていることはありません。」「何分かかります?忙しいんですけど。」という類いの言葉が発せられることも稀ではありません。

自発的な来室ではないご相談者さんとの関係構築では,それぞれの職種の組織図,付随する職責,勤務形態,職務内容等に対する理解が必要だと思っています。その上で,医療職それぞれの専門性を理解し,個々の職務や勤務状況に対するフラストレーションやプレッシャー,ストレス等を,想像も含め伝えることに努めます。

自治体病院内職員相談室のもう一つの特色として,行政職員さんも利用対象職種に含まれることが挙げられます。自治体病院に勤める行政職員さんは,病院の運営等に不可欠な役割を担っており,医療職とはまた異なるストレスを抱えています。

お目にかかった行政職員さんの多くは,自発的に来談されるかたの方が若干多く,自らを“心理的なしんどさを抱える者”,“心理的支援を受けた方がよい者”として理解をしておられるようでした。ただし,先に記した医療職のかたと同様に,精神科的な治療や心理的支援を受けることへの抵抗を感じておられる場合も少なくありません。

行政職員さんそれぞれが担う仕事の内容やその重要性,そして,それが生む心理的な負担を理解することが,我々には求められます。

産業・労働領域での心理臨床では,産業医等の産業保健スタッフ,相談者の上司・指導者等との連携も不可欠ですが,記事も長くなってきたので,連携等についてはまた別の記事で綴っていければと思います。また,心理療法家+両立支援コーディネーターの視点からも記事を綴れればと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

秘密保持義務を遵守しながら,今後も産業・労働領域における心理療法家の役割等について皆さんにお届けしていきたいと思います。

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