見出し画像

ヒーローの時代

昭和30年代に生まれた子どもたちの

楽しみと言えば、ようやく普及が始まった家電製品の3種の神器だった。初めて我が家に白黒TVが届く日には、学校で授業を受けている場合じゃなかった。TVがない頃は、一般家庭の情報ソースと言えば新聞かラジオ。小学生にとってはどちらも近づき難い相手だった。
近所の電気屋には道路に向けてTVが置いてあり、購入意欲を掻き立てていた。プロレスの放送が始まる頃には、黒山の人だかりとなり大変な賑わいだった。あの頃次々と開発され販売されていく家電は、庶民にとって最早それを買うために働くような構図となっていった。
昭和30年代生まれの子供たちにとって、最初のヒーローは力道山だった。外国人レスラーを次々と倒す姿は、とても新鮮でカッコよく見えた。

TVが一般家庭に普及し始めると、放送される番組も工夫され子供向けのものも制作されるようになっていった。「ウルトラQ」などは、観ないと次の日学校で誰も相手にしてくれない程の人気番組だった。その「ウルトラQ」は毎回怪獣が出てくるのだが、それを倒すヒーローは登場しない。怪獣も街を破壊するような巨大怪獣ではなく、人間の欲望が具現化したような等身大の怪獣が人間の子どもたちとその悩みを解決していくようなストーリ-だった。どちらかというと「ゲゲゲの鬼太郎」のようなストーリーで、妖怪を怪獣に置き換えたものだった。

快獣ブースカ

は、子供たちに大人気で怪獣ではなく快獣と書くのだが、小学校の宿題の日記に快獣と書いたら赤ペンで怪獣に直され、それ以来学校に対する不信感を抱くようになった。TVアニメが普及し始めると、ようやく等身大ヒーローが登場し始める。
「8マン」は、簡単に言うと日本版のロボコップのようなものだった。オープニングムービーで8マンが新幹線を追い抜くシーンに子供たちは心を奪われた。
「サイボーグ009」はサイボーグという新しい概念を子供たちに植え付け、「鉄腕アトム」「鉄人28号」は、等身大ロボットと巨大ロボットのどちらが好きかで真っ二つに分かれて論争を繰り広げた。とにかく夢いっぱいの子供時代だったと記憶している。
「仮面ライダー」の登場は、等身大ヒーローの決定打となり、現在まで続く金字塔を打ち立てた。初代1号や2号を知っている者にとっては、今のライダーは理解不能ではあるが、親子孫と3世代が同じヒーローを好きというのは、平和な日本のなせる業なのかも知れない。
「人造人間キカイダー」は、主役のキカイダーよりも敵役のハカイダーの方が人気が出てしまうというダークヒーロー系の始まりだったのかも知れない。アニメでも「ガッチャマン」は特別な存在で、小学生男子なら誰でも見ていたと思うが、女子は専ら「リボンの騎士」に夢中だった。

昭和末期に始まった「ドラゴンボール」の孫悟空や、平成に連載がスタートした「幽☆遊☆白書」の浦飯幽助などは、新しいスタイルのヒーローなのかも知れない。

これからも時代に合わせた見たこともないヒーローが次々と登場するだろう。しかしいつの時代でもヒーローは子供たちの思いを胸に秘めて悪と闘っていくだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?