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俺とギター 第5話

40年以上ギターを弾いてきて、分かったことがある。ギターは練習すればうまくなる。でもそんなに練習しなくてもうまいヤツもいる。
俺はあまり練習をしない。その場で聴こえてきた音に反応してギターを弾くのが好きなのだ。だからギターを練習するというより音作りの方に力を入れる。「良い音やね」って言われるのが一番うれしい。

もちろん苦手はある

昔からアコースティックギターも何度も挑戦している。でもすぐにイヤになる。なんかやりにくい。まずアコースティックギター(以下アコギ)はボディが大きくて厚くて好きになれない。深みのある音を出すためには仕方ないのだが、アコギを抱えてストロークをしようとすうとなんかやりにくい。
1番イヤなのは、3弦がプレーンじゃなくて巻弦だということ。それにアコギ弦は太い。とにかくチョーキングがやり辛い。
それからコードがややこしい。エレキはフレットの位置関係でコードを押さえるが、アコギはコードによって指の形が変わる。とても抑えられないようなコードもある。アコギは嫌いなんだけど、時々アコギの音が欲しくなる。

grass roots G-ACシリーズ

写真のようにボディをエレキと同じくらい薄くしたアコギもいくつか存在する。でもそれほど売れていない。それは中途半端だからだ。いくらボディをレスポールくらいにしても、アコギとして弾くのなら音が弱くなるだけで意味がない。

俺が欲しいのは・・・

アコギとエレキの両方の音が切り替えられるギターなのだ。フェンダーは以前からそういうギターを模索している。

Fender Telecoustic
Fender Stratacoustic Deluxe

かのFender社も、Acoustasonicに行きつくまでにはとても長い道のりを辿った。ボディシェイプだけテレキャスターやストラトキャスターにしたものから始まり、それにエレキ用のピックアップを付けてみたりと需要を探すのに相当苦労したことは想像に難くない。TelecousticやStratacousticの発売当時(2,008年)の8万円台は、すでにギターを持っている人たちがおもちゃとして買うには少し高かった気がする。失敗を恐れ誰も買わない。いやうまくいく筈がない、みんなそう思った。

欲しい人たちが見えてこない

挑戦を続けるFender社だが、この時点で需要層が見えていなかったのではと思う。アコギ+エレキがどういった人たちに望まれるのか。誰も分からなかった。というか曲の途中にアコギのバッキングからエレキのソロに切り替える必要性を誰も求めていなかったのだろう。
でも俺はFender社のこういった姿勢が好きだ。バイオリンの製造法にヒントを得たあくまでも高級手工芸品のようなGibsonのギターより、合理的に工場生産できる手ごろな価格のギターを提供したいというFender社に魅かれた。その上で新しいジャンルを切り開こうとするFenderのチャレンジ精神が好きだ。

Fender acoustasonic jazzmaster

満を持して登場したAcoustasonicシリーズは、280,000円程度という思いのほか高額だったにも関わらず、世間が受け入れた。時代がようやくFender思想に追いついたのかも知れない。かなり気合の入った設計で、色んな音が出せすぎて操作が煩雑だった。それでも世間に受け入れられ、Jazzmasterのボディシェイプも追加してようやくFenderギターの1シリーズとして完成した。

みんな同じだったのか

最初にAcoustasonicを手に入れた時はうれしかった。けれど同時に使いこなせないもどかしさも同じくらいあった。とてもステージで使いこなせる気がしない・・・。そう思った。Tabby's Guitaerの店長も「もっとシンプルな回路にすればいいのに・・・」と言っていた。
もしそうなったとしても問題は残る。アコギアンプとエレキアンプを用意しないとAcoustasonicの本領を発揮することはできない。
そんな話をしていたらシンプルなヤツが出た。製造をメキシコに移し、シンプルな回路にして価格を10万円以上抑えた新バージョンだ。欲しくなった。
で、手に入れた。早速いつものエレキ弦に交換して弾いてみた。生音は高いバージョンのと同じ。頼りないアコギの音が出る。エレキアンプに繋いで弾いてみると、ほぼ期待通りの音が出た。高い方の独特の癖が消えているように思う。エレキ用のピックアップも変えたのか。アンプをLINE入力にして、ギターの切り替えスイッチをアコギ側にして弾いてみた。普通にアコギの音が出た。いーんでねーの!
TONEツマミは、回路的にアコギの時はボディの厚みを変えてくれる。エレキの時はクリーンからハードに切り替えられる。
俺はTONEは1番絞って使っている。その方がアンプでの音作りが楽なのだ。
コイツが来てからEVHは触っていない。それより早くアコスタに慣れたいのだ。

EVHもAcoustasonicも

トップグレードじゃないけど、とても気に入っている。別にトップグレードのギターが最高の音が鳴るとは限らない。一番大事なのはどれだけ自分との親和性が取れるかなのだと思う。もう俺の人生も終わりが近い。ここら辺でギター選びも終わりにしないとと思うのだった。

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