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俺の地元店 -秋吉ー

福井県が誇る「やきとりの名門 秋吉」は、昭和34年に福井市で産声を上げた。現在に至っては、福井県27店舗・石川県14店舗・富山県14店舗以外にも、東京に12店舗・大阪に17店舗と全国で100店舗以上を誇る1大チェーンへと成長した。
やきとりの名門と謳うだけあって、焼き鳥のメニューはとてつもなく多い。他にも串カツをはじめとする揚げ物や、きゅうり・キャベツ・トマトなどのサイドメニューも豊富だ。もちろん酒もある。

秋吉へ行くということ

「やきとりの名門 秋吉」は、それほど安い訳ではない。しっかり食べればしっかり取られる。それでも福井県人は定期的に足を運ぶ。旨いからだ。注文は5本からとなっていて、他県の焼き鳥や串焼きの店とは趣を異にする。1本はそれほど大きくはなく、ちょっと食べても50本くらいは食べてしまう。

俺の秋吉仲間たち

俺の家の近所に大工の山ちゃんがいる。でかい体にスキンヘッド、上下白のジャージが彼の制服だ。釣り目のグラサンをかけてちっちゃいカバンを持って俺の後ろをついてくる。当然店に入った瞬間に、列をなして順番を待っている客たちはその圧倒的な迫力に、まるで『モーゼの十戒』で海が割れるシーンのように左右に分かれて向こうを向いてしまう。

画像はイメージです

俺と山ちゃんに続いて登場するのが、みっちゃんと呼ばれる謎の男。みっちゃんは背が低く髪もあるが、年齢もそこそこいってるので落ち着いている。そんなおっさんが俺と山ちゃんの後ろを黙って歩いているのは、周りから見たら怖いのだろう。「あの最後の人が親分やな」そんな声が時々聞こえる。他の客たちに聞こえるようにわざとでかい声で「あにきぃ、ちょっと待っててください」そう言って山ちゃんが店長に声をかけると、順番を待っている人たちを無視して「こちらどうぞ」と席をこじ開ける。実は店長もオレたちとグルなのだ。だから俺たちはすぐに座れるのだ。


なんでこうなったかと言うと

俺と山ちゃんとみっちゃんは近所に住んでいる。町内の集まりではいつも一緒にいる。そして悪いことを企む。次の区長はアイツにやらせてみようとか、新年会はどこでやるとか、班長を無視してこっちで決めて班長を呼んで「こういうことになったから」と強引に押し切る。
山ちゃんもみっちゃんも大酒呑みだ。ただどれだけ呑んでも潰れたのを見たことはない。強いんだろう。俺は31歳で酒を止めた。酔って人を殴ったからだ。留置場に入れられる前に酔っぱらうのを止めねば、そう思ったのだ。
酒を飲まない俺は酒呑みにとっては非常に好都合のようだ。運転手なのだ。どうせ呑まない俺は、晩飯程度にしか食べないので安くついて、俺におごる方が行き返りのタクシーよりうんと安いらしい。だから俺は秋吉で金を払ったことがない。

俺の好きな秋吉メニュー

串カツと玉ねぎ・蓮根フライ

実は俺はあまり焼き鳥が好きじゃない。いまさら言えないだけだ。秋吉へ行くとまず頼むのが「串カツ50」。みんなは「ほんなよーけ食えんて」というがムキになって頼む。案の定20本くらいで「もーいらん」と言う。その次に頼むのが「ご飯大盛り・赤だし・漬物」だ。他にもカルビとかロースも頼みたいが、他のヤツが嫌がるので我慢する。串カツの残したのは山ちゃんとみっちゃんが食べてしまっているので、「玉ねぎフライと蓮根フライ、あとシイタケの焼いたの」を頼む。山ちゃんとみっちゃんに半分くらい取られる。
山ちゃんとみっちゃんは大声で笑いながらビールを吞んでいる。俺がご飯セットを頼む頃に焼酎に切り替える。早く酔わないと俺が「もう帰る」と言い出すからだ。それでも2時間くらいは店にいる。俺はとっくに飽きているが、置いて帰るわけにもいかないのでしょーもないのを少しずつ頼む。
キュウリ・キャベツ・トマト・ピーマンなど、軽く食べられるものが多いけど、山ちゃんもみっちゃんも取るので次々と頼むのだ。

終わったら二人を家まで連れて帰る

得してるんだか損してるんだか・・・


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