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【67枚目】Frank Zappa『Hot Rats』

Frank Zappaのソロ2枚目のアルバム『Hot Rats』(1969)

ロックでもないし ジャズでもない・・・ポップでもない
じゃあ一体 何なの? ”ザッパ”よ

映画『ZAPPA』の予告です。痺れますね。私の住む福岡はまだ上演されてないので気になってます。今回はザッパをより知るため深堀してみました。

フランク・ザッパはアメリカ合衆国のシンガーソングライター、ギタリスト、作曲家。音楽のルーツは、二十世紀の現代音楽とブラック・ミュージック。ジャンルは前衛ロック、アートロック、ジャズロック。”ザッパ”にしか表現できない摩訶不思議な音楽です。

ザ・マザーズ・オブ・インヴェンション (The Mothers of Invention)のバンドリーダーとして活動。1971年「モントルー・カジノ」での公演中に、火災事故が起こり、ザッパとマザーズはその機材すべてを失う。この火事を見た「Deep Purple」が作った曲が「Smoke on the Water」。火事の翌週、公演中に聴衆の一人がザッパをステージから突き落とすという事件が起きる。彼はコンクリートのオーケストラ・ピットの上に転落して全身に複雑骨折を負う。骨折によって高音域の発声が圧迫され、特徴的なロー・トーン・ヴォイスとなる。

クセの強いエピソードが多く調べていて面白いです。
他にもサイケ全盛期の時代にデビューするもドラッグ嫌い。ドラッグはやらないがヘビースモーカー。厳格なオーディションにより凄腕のミュージシャンを集める。通称「ザッパ・スクール」を開校。採譜係のスティーヴ・ヴァイエイドリアン・ブリューなど実力派ミュージシャンを輩出しています。

多作家としても有名なザッパ。生前に60作以上のアルバムを発表し、今なお未発表曲が新作として発表されています。有名な数枚しか聞けてないですが『Hot Rats』は比較的聴きやすく評価も高いイメージ。ザッパワールドの入門に最適です。

あと変な邦題を付けられることでも知られてますね。

『The Man From Utopia(邦題:ハエ・ハエ・カ・カ・カ・ザッパ・パ)』
『No Not Now(邦題:いまは納豆はいらない)』
『The Booger Man(邦題:鼻クソマン)』
『DON'T EAT THE YELLOW SNOW(邦題:黄色い雪の下にはウンコがあるから食べちゃだめ)』

これはひどい。原題にも問題あるけれど。『Shut Up 'n Play Yer Guitar(邦題:黙ってギターを弾いてくれ)』は割と好きです。『Hot Rats』は運よく?邦題がないみたい。

『Hot Rats』に話を戻します。ほぼインスト曲。ポップな作りで聴きやすい。ジャンルはジャズロック。プログレの匂いもします。可笑しいサーカス、遊園地に来たような高揚感があります。好奇心をくすぐられる音楽というか。様々な音がモリモリで足し算の音楽って感じです。長尺なソロが熱い。息継ぎせず繋ぐような演奏が印象的です。

ちなみに本作は本国アメリカよりもイギリスで売れたそう。1969年はThe Beatles『Abbey Road』やKing Crimson『In The Court Of The Crimson King』がリリースされた年です。当時のイギリス人の耳は鍛えられていたのかもしれない。ザッパのお友達、Captain Beefheartの『Trout Mask Replica』も同年にリリースされています。

曲やエピソードのせいか天才/奇人/変人のイメージがあるザッパ。音楽への異常な情熱を感じる。『ZAPPA』の予告にあった下記の言葉は純粋にかっこいいですね。ザッパの言葉はユーモアもあって好きです。

おれの願いは単純だ。
作った曲全てのいい演奏といい録音をする。
そしてそれを家で聴く。
聴きたい人がいたらすばらしい。

特に好きなのは「Peaches en Regalia」「Son of Mr. Green Genes」「Little Umbrellas」です。

1.Peaches en Regalia

軽快なドラムから奇妙で煌びやかな世界観の曲がスタート。淡いピンク色なイメージの一曲です。ところどころ和風?中華?なアジアンなメロディーが流れる。1:45~、盛り上がりが好きです。目まぐるしい展開が楽しい。薄くなってるシンセとか聴きこむと楽しいです。2:35~、静かなパートがジャジーでかっこいい。

2.Willie the Pimp

本作で唯一のボーカル曲。ボーカルはキャプテン・ビーフハート。投げやりな歌い方ですね。曲はだらっとしたリフで進んでく。これはブルース?途切れなくギターがぐわんぐわん鳴ってて面白いです。ギターが前に出て自由にやってる感じ。リズム隊の演奏も熱くてかっこいいです。8:00~、「ぴゃっぴゃっぴゃ~」ってキメが好きです。

3.Son of Mr. Green Genes

イントロのズダダダってドラム好きです。ポップ。ワクワク感ある。カラフル。1:20~、牙を剝きだして激しくなってくる。2:00~、無駄にキラキラしたシンセが良い。2、3曲目とも9分近い曲ですが、3曲目は展開が激しく、数十秒ごとに止めどなく音が押し寄せてきます。情報が多い。個人的に3曲目の方が好きです。全編サビ。ダレる瞬間がありません。

4.Little Umbrellas

ここからB面。この曲はジャズですね。ゆらっと綺麗。妙に怪しい。可愛げも感じます。ウッドベースの渋い音にシンセがドカドカ入ってきて激しくなってきます。3分でビシッと綺麗にまとまってる。

5.The Gumbo Variations

声のデカい野郎がやってきた感じ。元気な一曲です。伸び伸びしたベースラインが良い。サックスの演奏がロックです。4:05~、ヴァイオリンの演奏も優雅ではなく必死。死闘感あります。ドラムも炸裂してる。シンバルがシャンシャン響きまくってます。Spotifyのverだと12:07~、急にズドン!と終わるのが印象に残りました。

1987年にCD化された際、リミックスが施され、オリジナルLPでは短く編集されていた「ガンボ・ヴァリエーションズ」は、17分近いロング・ヴァージョンとなった。

6.It Must Be a Camel

本作で一番変、クセがある曲かも。ギリギリ危ういラインを攻めてる。掴みどころがないです。ちょこちょこ「おっ!」となる瞬間があって気持ちの良い曲ではあります。ジャジーで綺麗、危ういピアノ。ベースのねっとりしたプレイ。エフェクト?かかったドラムが気になります。

※『Hot Rats』の意味を調べても出てこなかったんですが、ネズミ捕りのことなんでしょうか?少し不気味なジャケットは映画『IT』のペニーワイズが水路にいる構図に似てる気がします。

レコードの見開きジャケットのデザインはカル・シェンケル(Cal Schenkel)が行った。写真は表、裏ともにアンディ・ナサンソン(Andee Nathanson)が撮影した。赤外線写真を効果的に使っている。表のジャケットに写っている女性はクリスティーン・フルカ(通り名はミス・クリスティーン)。ミス・クリスティーンが身を沈めている穴は、ハリウッド・ヒルズにあるエロール・フリンの別荘のスイミング・プールである。


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