【文化財紹介】昭和初期のモダンビル ~細野ビルヂング~
【2023年9月1日/大阪歴史倶楽部】
残暑お見舞い申し上げます。
残暑の厳しい日が続いております。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。連日の猛暑の疲れも出てくる頃だと思います。ご体調を崩されませんよう、充分にお気をつけください。
今月は大阪市西区にあります、昭和初期のモダンなビル「細野ビルヂング」をご紹介いたします。
細野ビルヂングは、現在の長堀通の北側、鰹座橋交差点のすぐ西側にあります。
この細野ビルヂングは、もとは建設会社「細野組」の本社ビルとして1936(昭和11)年に建てられました。現在はテナントビルやイベントビル(イベントのために部屋を貸し出しているビル)となっています。
外観の写真
以下は細野ビルヂングの外観の写真です(2023年8月 大阪歴史倶楽部 撮影)。
建物の特徴
細野ビルヂングは、1936(昭和11)年に建設会社「細野組」の本社ビルとして建てられました。すなわち大阪市が歴史上で最も繁栄していた時代(大正時代の後半から昭和10年代)の「大大阪時代」に建てられたことになります。このビルは鉄筋コンクリート造り地上3階、地下1階建で現在は長堀通に面して建っています。
この長堀通は、もともとは長堀川という運河で、その岸を大阪市電が走っていました。またこの細野ビルヂングのすぐ東側には長堀川を渡る鰹座橋という橋が架けられていました。
建物の外観は、全体的に直線と曲線を組み合わせた「アール・デコ」様式のデザインが採用されています。南東側の角部分はアール(曲面)を持たせて、そこに正面玄関を設けています。
また、建物の東側壁面には丸窓を配しています。
この細野ビルヂングは、現在は無機質な灰色のコンクリートむき出しの外壁となっていますが、竣工当初には全面に白く輝くタイルが貼られていて、とても美しい建物でした。現在も一部に僅かに竣工当初の白いタイルが残っています。
細野ビルヂングへの行き方
細野ビルヂングへは、大阪メトロ千日前線または長堀鶴見緑地線の「西長堀」駅4-C出口から西へ約30m(徒歩約1分)です。
行き方の目安は「西長堀」駅4-C出口を出てそのまま真っ直ぐ長堀通を西へ30mほど進むと右側(長堀通の北側)に細野ビルヂングがあります。
「西長堀」駅4-C出口から地上に出るとすぐに細野ビルヂングが見えます。
おわりに
今回は大阪市西区の細野ビルヂングをご紹介致しました。
この細野ビルヂングは、1936(昭和11)年に建てられました。外観全体にアール・デコ様式を用いて、建物の角部分はアール(曲面)で仕上げ、そこに玄関を設けています。また建物東側には丸窓を配置しています。さらに竣工当初は全体が白く輝くタイルで覆われていました。
これはまさに、当時の最新・最先端のデザインと技術を盛り込んだ、白く輝く美しいモダンなビルだったと思います。
いまでは残念ながら白いタイルはほとんど残っていませんが、それでも当時のモダンなスタイルをよく伝えていると思います。
なお、ここで紹介いたしました細野ビルヂングの建物を見学したり写真や動画などを撮影されるときには、所有者さんや管理者さん、周辺の方々に不快感を与えたりご迷惑にならないよう充分なご配慮をお願い致します。
また許可なく他の人の敷地内に入ったりしないようお願いいたします。とくに建物内部を撮影される際にはセキュリティの関係もありますので必ず所有者さんや管理者さんなどの許可を得てくださいますようお願いいたします。
今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。
【参考にした資料】
◎高岡伸一 他『大大阪モダン建築』青幻社 2007年
◎「細野ビルヂング」『ノッテオリテ』 vol.11 大阪市交通局 2011年
◎「細野ビルヂング」『大阪建築』 2014年
(『大阪歴史倶楽部』第2巻 第9号 通巻17号 2023年9月1日)
©2023 大阪歴史倶楽部 (Osaka Historical Club)
剽窃・無断引用・無断転載等を禁じます。
※次号は2023年10月1日に投稿する予定です。