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DXの大誤解。中小企業のDXで成果が出ない理由

カイロスマーケティングという会社で代表を務めております、佐宗(さそう|@dsasoon)と申します。

先日、出張の際に、ある都市の商工会議所の中小企業相談所の担当者さまと「DX」についてお話しする機会をいただきました。商工会議所でも、地域におけるDXの取り組みに重点を置いているだけでなく、地域の中小企業からDXに関する経営相談を多く受けているようでした。

DXについては、
「DXってどうやったら売上アップにつながるのか?」
「中小企業のDX成功方法はあるのか?」
といった問い合わせが多いそうです。わたしのところにも、このようなご質問をいただくことが多くあります。

多くの中小企業の経営者がDXを通じた売上の改善法に強い関心を持っていることがうかがえました。


DXでITツールの導入前にやるべきことがある

しかしながら、「DXは売上を直接改善する魔法ではない」ということが、中小企業の経営者には十分に理解されていない可能性があります。DXとは単にITツールを導入することだと考えがちですが、実際にはもっと包括的な業務改革を指します。

単にITツールを自社の業務に導入したからといって、それが直接、売上アップにつながるわけではありません。これらのITツールは、元々売上に貢献する「業務」を少ない人数でミスなく実行することを助けるものですが、それ以上のことは望めません。

要するに、DX導入による売上改善を目指す場合、まずは「売れる仕組み」をつくり上げることが肝要です。DXが売上改善の特効薬にならない根本の原因は、この業務プロセスの設計をしないままにITツールを導入することにあります。

DXに関するこのような誤解は、おそらくはITツールを提供する業者が主催するセミナーで、製品の宣伝を重視した結果、DXの本質よりもイメージづくりに偏重したために生じたのではないかと思います。その結果、DXの真の目的とは異なる認識が広がってしまったのです。


自社の優良顧客を定義する

とくに営業DXと呼ばれるマーケティングや営業の領域におけるDXでは、「売れる仕組み」を構築することが不可欠です。新しい販路の開拓や新規顧客の獲得も大切ですが、これらの施策には新たな人員を増やさなくてはなりません。それよりも前に、手軽に自社の人員だけで手がける方法から始めましょう。

まずは、自社の高利益商品や年間売上の大きい優良顧客に焦点をあて、売上順にお客様リストを整理してみましょう。お客さまの年間売り上げに基づいてA、B、Cなどのランクに分けることから始めます。

それぞれのランクに対して、心理的な「単純接触効果」と「質の違いによるコミュニケーション」を組み合わせます。

単純接触効果とは、お客さまとの面会や接触の回数が多ければ多いほど、お客さまが好意を持ちやすくなるという心理的な現象のことです。どのランクのお客さまにも単純接触効果を最大限に活用すべきです。法人間の取引では、長期にわたる関係性がとても重要であるからです。


ある領域の顧客接触に営業DXを活用する

お客さまとの関係性はとても重要ですが、自社の人員数の制約からすべてのお客さまに単純接触効果を使うことはできません。そこで、お客さまのランクに応じて、コミュニケーションの質を変えます。

コミュニケーションの質の高さは、対面、オンライン会議、電話、メール、そしてメルマガと順に低下していきます。対面では双方の非言語的な情報まで得られるため、コミュニケーションが豊かになります。しかし、訪問や移動のための時間が必要です。

一方で、デジタルツールを用いたオンライン会議などの面会では非言語的な情報は得られませんが、移動や訪問などの時間的制約が小さくなることで効率が上がります。しかしながら、コミュニケーションの質は減少するトレードオフが存在します。

すべての顧客に対面での接触を提供することは、中小企業にとって人員の面で制約があります。そこで大切なのは、顧客をランク分けしてそれぞれに合わせたコミュニケーションを使い分けることです。これにより、限られたリソースの中で最も効率的に営業活動を行うことが可能になります。


優良顧客への対応は役職者を巻き込んだ人海戦術

年間の取引が大きいAランクの優良顧客には、関係性を強化するためにできる限り対面での接触を増やします。1件あたりの取引額が大きいため、競合に奪われないように積極的に関係を築きます。法人取引においては、商品の価値も重要ですが、長期にわたる関係性を重視する傾向があるため、関係性の構築はとても重要です。

さらに、取引量の大きいお客さまほど大きな予算を持っていることが多く、将来的に取引量が増える可能性もありますが、大型の取引を失うリスクも忘れてはならないでしょう。

Aランクのお客様には、社長や役員が直接訪問するなど、社内の重要人物を巻き込むことが効果的です。自社の役職者が訪問することを伝えると、お客さまがわも重要な意思決定者を会議に参加させることがあり、購入の意思決定者に強い影響力を持つもの同士の対話を通じて、質の高い関係性を築くことが可能です。


すべてのお客さまへの接触数を増やす工夫が営業DXのカギである

しかし、Aランクの優良顧客に多くの時間と労力を投じると、BランクやCランクのお客さまへの対応が疎かになりがちです。ここにデジタル技術を活用することが営業DXの基本になります。

Bランクのお客さまにも、単純接触効果で接触数を増やすことを試みますが、Aランクのお客さまほどの訪問数ではなく、デジタル技術を活用して、オンライン会議や電話を組み合わせて接触の効率を高めていいます。すべての接触をオンライン会議などのデジタル技術を活用したものにする必要はありませんが、社内のリソースを考慮にいれながら、コミュニケーションの質が高い訪問や面会も取り入れることも大切です。

AランクおよびBランクのお客さま以外のお客さま(Cランク)には、メルマガを活用して、メルマガでお客さまの業務にお役に立てる情報をお届けすることで関係を維持します。オンライン会議や訪問など、メールよりも質の高いコミュニケーションが重要ですが、社内のリソースとの兼ね合いで調整します。

Cランクのお客さまには余裕がなくて全く接触していないという中小企業もあります。Cランクのお客さまとはいえ、情報提供をすることで、将来的にBランクのお客さまになることもあります。このようにデジタル技術を活用した営業活動を組み合わせることも営業DXの特徴です。


さいごに

このアプローチは、限られた人員で既存顧客との売上を最大化するためのITツールやデジタル技術の活用法です。優良顧客(Aランク)には従来の営業方法を続けつつ、BランクやCランクの顧客には効率的な営業DXを通じて関係性を築く仕組みとなっています。

本日紹介した営業DXの仕組みは、わたしの著書の「売上10億円の壁を突き破る! 営業DXの強化書(ダイヤモンド)」で詳しく紹介しております。

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