「大統領ケーキ」

Gâteau " Le Président"

リヨンでしか味わえない絶品ショコラと
「大統領ケーキ」

 ローヌ左岸の新興ブルジョワ地区、リヨン6区。メインストリートであるフランクラン・ルーズヴェルト通りにリヨンが誇るショコラティエ、ベルナションBernachonがあります。ここは、クーヴェルテュール*から独自につくっているフランスでも数少ないショコラティエの一つ。約10種類ものカカオ豆をブレンドし、ローストしてオリジナルのクーヴェルテュールを生み出しています。
*原料用チョコレート(chocolat de couverture)のこと。

 このお店のショコラでは、「パレ・ドール(Palet d'or)」が有名ですが、ケーキで有名なのが、その名も「大統領(ケーキ)Le Président」。このケーキの誕生にはこんなエピソードがあります。1975年2月、リヨン出身のシェフ、ポール・ボキューズが、ヴァレリー・ジスカール・デスタン大統領(V.G.E)からレジョン・ドヌール勲章を授与されました。大統領官邸のエリゼ宮で開かれた晩餐会で、ボキューズが、「V.G.E.に捧げるトリュフスープ」を作ったのは有名な話ですが、その時のデザートをボキューズに依頼されたのが、モーリス・ベルナション。このショコラティエの創業者で、現在の当主フィリップさんの祖父です(ちなみに、フィリップさんの母親がボキューズの娘、つまり、ボキューズは母方の祖父にあたります。)

 こうして、この「大統領」が生まれました。特徴は、カーネーションの花びらのように薄いショコラ。現在、この部分を作れるのは、職人の中でもクリストフ・ソータールさんのみです。スポンジ生地のケーキ(アントルメ)は日に約20個、「副大統領(Vice-président)」という名のタルト生地の一人用のケーキは日に約30個作られています。ショップのすぐ裏手には2000平方メートルの広大なラボがあり、鮮度管理は万全。クーヴェルテュール、ショコラ、パティスリーの3つに分かれ、ショップと合わせて約50人のスタッフが働いています。

 2013年2月に創業60年を迎えたベルナション。ここのショコラは特別なイベント以外は、フランス国外はおろか、国内でもリヨンでしか買うことはできません。ここでしか味わえない絶品ショコラというわけです。まだまだリヨンで岩倉使節団*のような経験ができますよ。
*1873年、岩倉(具視)使節団一行はフランスでチョコレート製造場を見学し、日本人として初めてチョコレートを試食した。

information

Bernachon
42 cours Franklin Roosevelt 69006 Lyon
http://www.bernachon.com

mémo

隣接するサロン・ド・テ(salon de thé)、レストラン(昼のみ)でも、この「大統領ケーキ」は食べることができます。




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