リヨン旧市街のトラブール

Traboules au Vieux Lyon

通りから通りへのワープ通路
「トラブール」

 リヨン旧市街 Vieux Lyonは、普通に通りを歩いただけではとてもその魅力の全貌はわからない、観光客にはある意味不親切な街です。その理由がトラブール。トラブール trabouleとは、旧市街でよく見かける通りと通り、建物と建物をつなぐ通路のこと。通りに出ることなく、人目につかず隠れて移動できる秘密の抜け道です。

 トラブールの語源は、「横切る」という意味のラテン語、trans ambulareの口語 trabulareから。紀元4世紀、ローマ帝国が崩壊して水道橋が使えなくなった事から、水を求めてフルヴィエールの丘の麓、ソーヌ河に挟まれた、現在の旧市街に住民が大移動。この地の人口が急増したものの、土地が狭いため、高い建物を密集させて建てた結果、このような通路が便宜のために造られたと言われています。19世紀にはプレスキル(中州)地区やクロワ・ルース地区にもトラブールは広がっていきました。

 平時には、人々の通り道としてだけでなく、絹織物などを雨に濡れることなく搬送するためにも使われていましたが、トラブールが真骨頂を発揮したのが戦乱時。迷路のようなトラブールは、18世紀のフランス革命、19世紀のカニュ(絹織物職人)の反乱、20世紀の第2次世界大戦中のドイツ占領時に、レジスタンスにかかわった市民の秘密の逃げ道として使われました。

 現在、旧市街とクロワ・ルース地区を中心に、約500のトラブールが残っていると言われています。ただ、今も建物には住民がいるため、安全や騒音上の問題からほとんどが一般には公開されていません。それでも、いくつかの代表的なトラブールは観光客に開放されています。通りから通りへ、建物から建物へのワープ体験。知られざる魅力を探しにリヨンの裏側を探検してみませんか?

information

見学可能なトラブール

Cour des Voraces
9 place Colbert 69001 Lyon

旧市街の最も長いトラブール
27 rue du Boeuf 69005 Lyon - 54 rue Saint-Jean

mémo

リヨンではトラブールの地図やガイドも書店などで販売されています。


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