リヨンの食堂、ブション

Bouchon lyonnais

リヨンのブションで
リヨネの「ソウルフード」を味わう

 リヨンでは気軽な郷土料理の食堂のことを「ブション(bouchon)」と呼びます。ブションという一風変わった名前の由来は諸説ありますが、食事ができることを示す「ブション(わらの束)」が戸口に掲げてあったからという説が有力です。

ローヌ河とソーヌ河が合流する河川交通の要所に位置するリヨンは、作家ラブレーの時代から食材流通の中心地。リヨンを取り囲む、自然の恵み豊かな土地から良質な食材が集まります。

 リヨンの郷土料理の特徴は、いわゆる「洗練されたフランス料理」の対極にある、腸詰のような保存食や内臓を使った、ずっしりと重い料理。厳しい冬を乗り切るための知恵が詰まっています。リヨンは「フランスの食文化の中心地 la capitale de la gastronomie française」と呼ばれていますが、豚肉や内臓を多用することから、「豚の都」、「内臓の都」とも呼ばれています。

 ブションで出されるリヨン料理は、まず豚の脂を揚げたグラトン(grattons)からスタートです。次いで、アントレはベーコンやポーチドエッグが入ったリヨン風サラダ(salade lyonnaise)か、ロゼット(rosette)と呼ばれるリヨン風サラミ、または、パテのパイ包み。メインは子牛の頭肉煮込み(tête de veau)や、内臓フライ(tablier de sapeur)、内臓炒め(gras-double)、内臓ソーセージ(andouillettes)、ハンペンのようなカワカマスのクネル(quenelle de brochet)など。チーズは、サン・マルスラン(saint-marcellin)か、「絹織物職人の脳みそ」(セルヴェル・ド・カニュ cervelle de canut)という過激な名前を持つ、エシャロットやシブレット入りのフロマージュ・ブランが定番です。

 こうしたリヨン料理には、460ML入りの「ポ(pot)」と呼ばれる底の厚い瓶で供されるハウスワインが付き物。基本的には、白といったらマコン、赤といったらボージョレか、コート(・デュ・ローヌ)の地ワインが出てきます。

 地産地消で土地の味を守り、伝えるブション。リヨンの豊かな食文化が体験できる場所です。老若男女を問わず内臓好きのリヨンの健啖家たちと、テーブルを囲んでみませんか?

information

Le Garet
7 rue du Garet 69001 Lyon

フラン・マション協会
http://www.francmachon.org

mémo

暗いうちから仕事をする絹織物職人には朝からリヨン料理を食べるマションmâchonという習慣がありました。現在でも、フラン・マション協会(フリーメーソンのフランス語、フラン・マソンをもじっています)が定期的に「マションの会合」を開いています。旅行者も参加自由ですよ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?