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やまねの塒日誌|vol.32|冬期金継ぎ修行

今年の8月に金継ぎを習いはじめた。
12月に入り、山間部にあるお教室は雪のため休業中。
3月まで長い冬眠に入っているあいだ、自分でも練習してみることにした。

ほつれ、欠け、割れ。

引越し後そのまま倉庫状態となっていた自宅のスペースの一部を作業場化し
(このこともまた書いてみようとおもう)
陶の器3枚を並べ、太陽光の下、しげしげと観察してみる。

ほつれのある濃紺の深皿は、数年前に会社の仲間と那須を訪れたときに
「ポタージュ、カレー、パスタが似合う!」と一目惚れしたもの。
欠けのあるビワの葉を象った皿は、練習用にとお教室でいただいた
関金の窯元さんのもの。
割れのあるねずみ色の蓋つき壺は、
町内のおばあちゃまが蔵をこぼすときに譲っていただいたもの。

高級なものでなくとも、修繕したいのはなぜか。
器にはそれぞれに思い入れも載っているに気づく。

先日、静岡の友人に「金継ぎを習いはじめた」と言うと、
戸棚の奥から、真っぷたつに割れた水色のカレー皿を出してきた。
割ってしまったけど気に入っていて、なかなか捨てられないとのこと。
その後、2歳の娘ちゃん、目の前で薄緑色の皿を、これまた真っぷたつに。
義祖母から受け継いだもので、まだまだ大切にしたいとのこと。
「練習台をくれてやったと思って、もし失敗しても恨まないでね」
という条件付きで、リノベを引き受けることに。
そう、金継ぎ士(見習いぴよぴよ状態)としての初受注(⁈)である。

金継ぎに欠かせない、生漆(きうるし)。

家族のように気心知れた仲ではあるものの、一応他人のものなので
受注したぶんは春からのお教室で先生のご指導のもと、取り掛かるつもりだ。
この冬、じぶんでやる分は、うまくやれないかもしれない。
でも、頼れる先生がそばにおられないいまこそ
習ったことをふりかえり、反復し、その意味を読みなおす。
失敗と成長の好機だと思っている。実験、実験。

釉薬のかかっていない部分はマステで養生して。
これは、普段お教室では先生が準備してくださっているもの。
おいしそうな甘いにおい。なんでしょう?
バイブルとメモを見ながら、おそるおそる埋める。
思わず「先生、すいません」とお呼びしたくなる。
漆を乾燥させるには、湿気が欠かせない。
乾かすための「室」はお気に入りのみかん箱で。

金継ぎは、数年前からずっとやってみたかったこと。
この寅年に縁があったおかげで、はじめることができて、本当に嬉しい。
勉強して、腕を上げて、あわよくばやまねの塒としてのしごとのひとつとして
ひっそりと活動したい。(何年かかるねん…!という感じではあるけど)

モノにいのちをふたたび吹き込むこと自体にも魅力を感じているが
なにより、そこにある人の思いを大切にしたい。
空き家に関わり始めたきっかけになった想いとおなじだ。
それで救われる人のこころも、大なり小なり、あると思うから。

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