見出し画像

Cannonball Adderley / Somethin' Else

画像1
Somethin' Else / 1958

2004年8月20日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================

テナー・サックスのサウンドはヘビー級のレスラーだ。

ソプラノ・サックスのサウンドはジュニア・ヘビー級のレスラーだ。

では、その中間のアルト・サックスのサウンドは?となると、これが実に中途半端で、ジュニア・ヘビーからヘビーに転向して、悪戦苦闘しているレスラーのようにみえる。テナーよりもスピーディーな動きで悪くはないが、なんとなく技や音が軽いのだ。

そんな独断と偏見が理由で、アルト・サックスにはあまり愛着がない。フィル・ウッズは好きだ。オーネット・コールマンは凄い。ジャッキー・マクリーンもいい。ルー・ドナルドソンのノリも捨てがたい。しかし... なのだ。

さて、キャノンボール・アダレイ。本名はジュリアン・エドウィン・アダレイ。キャノンボール(砲弾)はニックネームで、自慢(?)の巨体が由来ではなく、「キャンニバル:Cannibal:人喰い:大食漢」が由来のようだ。何はともあれ、大食によりアダレイは自慢の(?)巨体を得たのかもしれない。それにしてもジュリアンとは身体に似合わず可愛い名前だ。

体格と体重だけで判断すると、キャノンボール・アダレイはアルト・サックス・プレイヤーながら、スーパー・ヘビー級に属することになる。

そんなキャノンボール・アダレイの代表作は『Somethin' Else / サムシン・エルス』。バックをサポートするのは、マイルス・デイヴィス(トランペット)、ハンク・ジョーンズ (ピアノ)、サム・ジョーンズ (ベース)、そしてアート・ブレイキー(ドラム)、ほとんど当時のジャズ界のオールスター編成だ。

アルバムはシャンソンの代表的な曲《Autumn Leaves》から始まり、コール・ポーターの名曲《Love For Sale》へと続く。

スーパー・ヘビー級のキャノンボールには《Autumn Leaves》や《Love For Sale》などは似合わない。繊細なマイルス・デイヴィスのミュート奏法と付き合う必要はないだろう!と言いたくなる。それほどこの二曲ではマイルス色が強く、だからこのアルバムの実質的なリーダーはマイルスだと言われている。しかしそれではキャノンボールの立場が無く、面目丸潰れだ。

しかし後半はキャノンボールが巻き返しを図る。マイルス・デイヴィス作のタイトル曲《Somethin' Else》からキャノンボールの馬力のある奔放なサックスが冴え渡り、な~んだ、これはやっぱりキャノンボールのアルバムではないかと、妙に納得してしまう。

まぁ、これはプロレスでいうところの名タッグ・チームみたいなもので、マイルスが若いキャノンボールを見事にコントロールし、ちゃんと試合を決めさせているのだ。つまりこれは一応キャノンボールのアルバムだが、マイルスのアシスト無しには名盤にならなかったのも事実。

ジャケット・デザインの素晴らしさも特筆モノだ。

黒をバックに、タイトル等をホワイト・グリーン・ブルーのゴシック書体でシンプルにまとめたデザインは抜群の出来だ。ジャケットのデザイン・ワークが素晴らしいブルーノート・レーベルの中でも、個人的にはベスト10に入ると思う出来だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?