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スキンヘッドの強面男へのレクイエム / 山本小鉄とダイビング・ボディプレスの思ひ出

再びプロレスブームが訪れているようです。

しかし私のような力道山が生きている頃からプロレスを観ているオールドファンには、今の派手で煌びやかなプロレスにはなんとなく馴染みにくいものです。先日もテレビで日本最大手のプロレス団体、アントニオ猪木が設立した新日本プロレスの試合をウイスキーをちびちび飲みながら観戦しました。イケメンのレスラーも多く、明るく楽しい、まるで "ジャニーズプロレス" みたいな雰囲気でした。女性ファンが急増した理由も判ります。また試合展開はスピーディーでアクロバティックなムーブが続き、まるでジェットコースターに乗っているようでした。

棚橋弘至という選手が目に止まりました。サイズ的には大型ではありませんが、鍛えられたなかなかの肉体美でプロレスセンスもかなりのものです。棚橋が得意とする技に一つに、リングに横たわる相手に向けてコーナーポストの上から飛び込んで自分の体を浴びせる技があります。その技はハイフライフローと呼ばれています。

時が流れるとプロレスのスタイルやレスラーが醸し出す雰囲気などが変わるのは必然で、それに対して批判的な事はあまり言いたくありません。しかし技の名前も変わるのはちょっとねぇ…. という感じです。野球では、例えばフォークボールは昔も今もフォークです。棚橋の持ち技、ハイフライフローはかつてのダイビング・ボディプレスと呼ばれていました。

その技をハイフライフローと呼べば、それはなんとなく棚橋だけの、棚橋オリジナルみたいな感じがします。しかしその技をダイビング・ボディプレスと呼べば、とても技の説明的な呼び名ですが、誰か特定の選手の技という感じはしません。技の呼び名を変えるのは選手のキャラクターを際立たせるための一手段ですが、釈然としません。こんな古い考えに凝り固まった私には今のプロレスを語る資格は無いのかもしれません…

そんな事をぼんやり考えていたら、ダイビング・ボディプレスを絶対的な切り札として大暴れしていたあの選手を思い出しました。アントニオ猪木と行動を共にし、新日本プロレス設立に馳せ参じた一人、山本小鉄を思い出しました。

2010年9月2日に他のサイトへ掲載した原稿を加筆修正しました。==================================

お盆休みが終わってからもギンギラギンの猛暑日が続いたが、仕事はまるでエアポケットに突入したかのように閑になった。

とにかく暑くて、とにかく閑だ。

そんな腑抜け状態が続いていた時、山本小鉄の訃報が突然飛び込んできた。

殺しても死にそうにないスキンヘッドの強面男、タフで "ダイ・ハード" な山本小鉄が低酸素性脳症で急死するとは。

「やあ、小鉄君こんにちは。僕も最近は少しばかり親切になってね、小鉄君のタフなイメージが損なわれないうちにと思い、ちょっと急で早いけど、お迎えに来た次第さ…」

死神よ、それはありがた迷惑だ。

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私のようなオールドプロレスファンにとって、山本小鉄とは盟友・星野勘太郎と結成した名タッグチーム、ヤマハ・ブラザーズ とほとんど同義語だ。

白いパンツ、白いシューズの山本小鉄、青いパンツ、白いシューズの星野勘太郎。上背こそないものの、この二人がリング狭しとスピーディーに暴れ回る姿を観るのは爽快だった。

炭酸飲料の泡が弾けるような小気味良い躍動感。反則技を交えた小憎たらしいファイトスタイル。ヤマハ・ブラザーズ の試合には、明るくも不良チックな雰囲気が漂っていた。

トリッキーな試合運びで勝ちを拾うこともあったが、多くは潔いほどの玉砕負け。この見事な負けっぷりも ヤマハ・ブラザーズ の大きな魅力の一つだった。

しかし一番最高の爽快感は、山本小鉄の最大であり最高の見せ場、コーナーポスト最上段からの ダイビング・ボディプレス が豪快に決まった瞬間だ。今では単なる痛め技の一つに成り下がってしまったが、かつては "銭の取れる技" の一つだった。

* * * * *

新日本プロレスの設立後、山本小鉄は誰もが恐れる "鬼軍曹" として世田谷区上野毛の新日本プロレスの道場で後進の育成に精力を傾け、藤原喜明や佐山聡(初代タイガーマスク)、前田日明や髙田延彦など多くの名レスラーを育て上げた。

レスラーとしてはナンバー・ツーでもなく、ナンバー・フォーかナンバー・ファイブあたりでキャリアを終えた山本小鉄だが、プロレス界への貢献度は計り知れない。

享年68歳。その早すぎる死が惜しまれる。

A Requiem for Kotetsu Yamamoto
A Member of The Notorious YAMAHA Brothers

Surfing with the Alien / Joe Satriani / 1987

弾けるようなギターサウンドが生みだすストレートな疾走感。《Surfing with the Alien》 は爽快!痛快!豪快!トリプル "快" のこの曲を山本小鉄に捧げたい。サーフボードに乗ることは無かったが、キャデラックが大好きで乗り回していた山本小鉄にピッタリの曲。スキンヘッドのエイリアンもなんとなく小鉄らしい。

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