見出し画像

労働時間と生産性

この間のスイスのブログを書き終わった後に、あれ結局、何が言いたかったことだっけと思ったものの、全く思い出せなかったので放置していたのだが、今日ふと歯を磨いていた時に何が言いたかったのかを思い出した。

以前に授業か何かで扱ったのだが、フランスがアメリカとのアウトプットを比較した研究がある。アウトプットは生産性と労働時間の掛け算という定義にしているのだが、その時のフランスの問題意識というのはなぜアメリカの方がフランスよりもアウトプットが大きいのかという点だった。最初フランスは生産性がアメリカの方が高いのが原因なのだと思っていたようなのだが、調べてみると実は生産性にはアメリカとフランスに大きな差はないようだ。そうすると犯人は労働時間なのかということになるのだが、確かに調べてみるとフランスの労働時間はアメリカの労働時間よりもかなり短かったそうだ。

フランスは法律で労働時間が週35時間と決まっており、これは日本の40時間と比べると5時間少なくなっている。また、スイスと同じで夜間営業や日曜営業にも規制があるのだが、今のフランスの大統領のマクロンが経済相だった時代に、通称マクロン法という法律を成立させて、実質的に夜間営業や日曜営業が認められることになったそうだ。この法律が、先ほどのアウトプットを重視する姿勢が理由で制定されたものなのかはわからないのだが、労働時間を実質的に伸ばす方向に舵を切っているのは興味深い例だと思った。

一方で日本は働き方改革などで労働時間はどちらかというと短くしようという流れにある。以下のグラフを見ると明らかなのだが、日本は確かに先進国の比較では労働時間が長い。そしてさらに悪いことに日本は生産性も低い。(二つ目の引用はイギリスの統計局)

以前に元厚生労働大臣の塩崎大臣が大学院にいらっしゃって労働時間短縮の議論をしていた際に、教授の一人から、でも労働時間を短縮したら、アウトプットが下がるのではという質問が飛んでいた。これは上記のフランスの議論では確かにその通りなのかもしれない。ただ、ここで僕が考えたのが(そしてちゃんとデータを追ったわけではないので、あくまで感覚的な推測なのだが)生産性と労働時間の関連性である。何となくではあるのだが、ある程度までは、労働時間が短縮されるほど、生産性は上がるような気がする。これは長時間だらだら仕事をするか、短時間でさっと済ませるかぐらいの感覚的なものなのだが、上記のグラフの場合は生産性の定義が1時間当たりのGDP(国内総生産)となっているので、生産量が変わらなければ労働時間は短い方が、生産性が高いことになる。そして何より、長時間労働は経済の問題を通り越して、人権的な観点から改善されるべきだと思う。厚生労働省によると2016年の過労死・過労自殺者数は191件あったそうだ。

今回スイスに行って、夜間や日曜のお店の閉まり具合に驚いたのだが、お隣の似たような状況にあるフランスは労働時間を延ばす方向にあり、その日本との状況の違いがとても興味深いと思った。もはや、「いやーさすがにもうちょっと働かないとアウトプットやばくね?」ぐらいの勢いで労働時間を延ばそうとしているような気が僕にはするのだが、これももしかすると少し贅沢な政策課題なのかもしれない。いずれにせよ、今回は滞在も短くあまりよく観察できなかったのだが、もう少し掘り下げたいテーマだと思った。

(写真は訪問したスイスの街の様子)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?