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空想パン屋とみかん畑 2

夏は暑い。

そして農家の朝は早い。

暑いのにお天道様が頭の上にのぼっているような時間から農園での作業を始めるのは体力的にも精神的にも厳しい。

だからこそ、大切な時間を最大限に使うために早くに起きて作業を始めるのだ。

上門農園では毎朝、農園主の上門さんを含めたホストファミリーとWOOFERである僕たちが同じ席で今の農園の経営状況や今後の方針などを話合う。
僕がいた時は台湾人の女の子3人も含めてみんなで難しい話も冗談話も真剣に話あった。

そのあとその日の作業場所に移動する。

僕がいた時は毎日みかん畑に赴いては鍬での草取り作業だ。

汗だくで休憩所である加工上に戻るとそこで待っているのはキンキンに冷えたみかんジュースだ。"紅俺ん路"べにおれんじ、というイカしたネーミングで世に出ている。

それにもう一つ、忘れてはいけないのが、"黒俺"くろおれ、だ。

黒糖ベースのシロップなのだが、冬虫夏草が使われている。

上門さんは山で冬虫夏草を見つける名手だ。

お気に入りの女の子だけがその山に連れて行ってもらえるという伝説がある。

汗だくで作業をした後のこの飲み物たちはまさに"有難い"という言葉につきる。

本当に、涙が出る味だ。

それに、僕は知らなかったが、上門農園は日本WOOFホストファミリーNO1.の滞在中満足度150パーセントのホストファミリーなのだ。

なので年中通して世界各地からWOOFERが上門農園を訪れている。

上門さんは常に新しいことをしよう、ないものを生み出そうと努力されていて、最近では自宅に完全燃焼の焼却炉を作りのエネルギーでお風呂を沸かしている。

家は山を切り崩しその頂きに建てており、口では簡単そうに話してくれのだけれども、それは形になっているから言えることなかなか真似できることではないです。

まだまだ興味津々設備が今となってはてんこ盛りだと気付いたので、少し落ち着いたらお手伝いに伺いたいなぁと思っています。

そして、ただの大学生だった僕を今までずーっと気にかけてくれる懐の深さも底無し沼であります。

WOOFで、上門農園を訪れたことも、今の自分にとってはかけがえのない経験だったと今更ながらに目を細め地平線を眺めながら思うのです。

…………

みかんの果汁にパンひたすだけ。

汗水流して働いたあとならこの食べ方が涙が出るくらい美味しい。

過度な美味しさではないけど、美味しさのその先は間違いなくある。

それは宝島で生活していたときも、スペイン巡礼していたときもそうだった。

涙が出る美味しさはその人の経験そのものだったのです。

空想パン屋 薪火野 中山大輔

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