マガジンのカバー画像

大須健太・作品集 Ⅱ

92
毎週水曜日に掲載している無料エッセイを集めたマガジン。
運営しているクリエイター

記事一覧

バレリーナ・森下洋子という生き方

 世界中にたくさんのバレエダンサーは存在するが、そのダンサーのほとんどは肉体的な衰えを主…

ともしび

 何年か前のことだが、戦前の日本の母は家族の中で誰よりもいちばん偉かったと書いたことがあ…

美容院

 先日、美容院へ髪を切りに行った。  子供の頃、母親が自分の行きつけの美容院へ連れて行こ…

本棚

 私の部屋には、アンティークの木製の収納棚がある。三段式の一枚引き戸になっているのだが、…

つや、ありますよ

 私はポイントが好きである。そのためなら多少の労苦や恥を掻くのは苦ではない。    ポイン…

「世界ふしぎ発見!」最終回に思うこと

 先日、TBSテレビで放送されていた「世界ふしぎ発見!」が三十八年の放送に幕を下ろした。…

夫人と呼ばれた歌人・九条武子

 いつの時代にも、その時代を象徴する人物、目立ちたがり屋ではない本人たちに言わせたら、非常に決まりが悪いと言われそうだが、スターというものが存在した。  今から一〇〇年前の大正時代にも柳原白蓮(大正天皇生母・柳原愛子の姪)、江木欣々らと共に大正三美人と謳われた、歌人で教育者でもあり、著書「無憂華」で知られる九条武子もそのひとりである。彼女は当時、その美貌と人柄ゆえに人々から憧れと尊敬の念を込めて「九条武子夫人」と呼ばれていた。  私がこの九条武子の存在をいつ頃知ったのか、

松井須磨子の微笑

 先日、私は伝説の女優・松井須磨子がカメラに向かって満面の笑みを浮かべ、お茶目な顔をして…

花一輪

 急な来客がある時、茶菓子はあるか、茶葉は古くないか、湯呑みは季節に合った柄が描かれてい…

桜餅

 大人になってから、大人になることとはどんなことなのだろうかと考えた時、なかなか思いつか…

10

パン焼き器

 これまで、あまたの数の家電製品が世の中に出回ったが、その中でも人々が熱烈に飛びついたの…

器を労る

 今年も何の予告もなくあいつがやって来た。招かれざる客のそいつは、知らない間に私の生活に…

潤い

 もう春もそこまで来ているというのに、湿度計を見れば連日のように空気が乾燥している。それ…

初雪

 初雪が降った。  毎日が吹雪という、雪国で暮らしている人たちには申し訳ない程度の量しか雪は降らないのに、雪慣れしていない関東の人間は、数センチ積雪があっただけでも大雪という。同じ関東に住んでいながら、何とも決まりが悪いものである。  カーテンを開けるまでもなく、窓の向こうがいやに明るく見えるのは積雪のせいだと分かってはいるが、久しぶりに見るそれは何だか不思議な光景である。  どれぐらい雪が降ったのかと外に出て空を見上げれば、どんよりと、そこにはいつもの夜空では決して見