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映画『Dr.コトー診療所』

今月は、私にとって、とても楽しみな映画が公開される。

それは、フジテレビで2003年から放送された、吉岡秀隆さん主演の『Dr.コトー診療所』である。

11月下旬から、このドラマのシリーズが毎日のように再放送されているのを、私は録画して観ていたのだが、私は断然、剛洋くんの大ファンである。年齢的にちょっと無理ではあるが、出来れば彼のような息子を持ちたいと、本気で思ったものである。

彼も母親と早くに死に別れなければ、もっと違った子供に成長していたと思うのだが、それもやはり、彼に与えられた運命というものなのだろう。

この作品は、いろいろ一悶着あっても結果、善い人しか出て来ないのであるが、その中でも吉岡さんが演じる五藤健助が抱えていた過去というものが、その後の彼の医師としての生き方に大きく影響するということを考えると、やはり辛い経験であったとしても、それは、その人次第でその後の人生の大きな糧になるのだということを、きっとこの映画版『Dr.コトー診療所』でも表現してくれているのだろうと思う。 

そしてまた、吉岡さんが役者として五十代に入り、とてもいい枯れ方をしているせいか、またあの頃のコトー先生とは違った深みのある、そしてお茶目なコトー先生になっているのではないかと、私は大きな期待を寄せている。

そして何より、私がいちばん会いたかった原剛洋役を演じた富岡涼くんが、この作品に限って役者業を復活させ、十数年の時を経て立派な大人になってスクリーンに登場するということが何と言うか、親戚のおじさんのようなそんな気分に私をさせるのである。

少しぽっちゃりとした、本当に本当に子供らしくて愛らしく、健気だった剛洋くんがまた元気でこうやってスクリーンに登場するということが、この今の時代に、どれだけ尊いことか。

それを思うと、私はまだ彼の大人になった姿を動く映像で観る前から感極まって、写真を見ただけでホロリと涙がこぼれそうになったのだが、それぐらい本当に嬉しい富岡涼くんの役者復帰である。

そして、年齢的に天寿を全うしこの映画に参加することが叶わなかった方々もいる中、時任三郎さんや泉谷しげるさん、大塚寧々さんや小林薫さん、筧利夫さんや柴咲コウさん、皆さんがお元気で第一線で活躍し続けこの作品に揃ったことが、本当に奇跡であると、また同じ話になってしまうがあの、2020年を経た今、集結出来たということは人生腐らずに生きて来た、その強さがあってこそだと思う。

人が毎日、当たり前に生きているということが、どれだけ奇跡的なことなのかということを、やっぱり私は考えずにはいられなかった。

時を同じくして、つい先日までお元気だった、俳優の渡辺徹さんの急死の報せ。

優しい人柄がそのままに、顔に滲み出ている素敵な人だった。人気が出ても一生涯、自分の役者人生のスタートとなった文学座の座員であり続けたその一途さは、きっと彼の誠実さそのものだったのだと思われる。

こういうことが人生、突然にして起こってしまうのである。それを思うと、やはりドラマ制作から十数年の時を経て『映画』と言う形で、一応のフィナーレを迎えられるということは、本当に幸せなことだと思う。

私も映画館へ足を運んで、その幸せをめいっぱい噛みしめて来ようと思う。

そして、この映画には間に合わなかったたくさんの人々、その人々の思いも胸にしっかりと見届けて来たいと思うのである。


2022年12月2日・書き下ろし。



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