回転寿司
カウンターに腰掛けて、好きなネタを言って、目の前で大将という人に握ってもらう寿司というものを、私は今まで食べたことはないが、 自分の隣をくるくる回る回転寿司は、何度か食べたことがある。
いつ頃から、回転寿司というものが日本に登場したのか私は知らないが、一皿一〇〇円ちょっとという価格と、デザートや寿司以外の料理も皿に乗って運ばれて来ることも手伝って、一度に大金が飛んでいくカウンターで頂く寿司よりも、私は断然、それなりの味とメニューを提供してくれる回転寿司の方が好きである。
しかし 、寿司は回転して出て来ない方が私はホッとするのだが、回転寿司と名のつくからにはそうはいかない。
私は、この回転寿司とやらで質の悪い客が相手だったら、今はもうこの世にいないかもしれない、そんな失態を犯してしまった苦い経験がある。
今から考えれば、何とも世間知らずだったと恥ずかしい話である。
その日、私はすぐに旅先のロサンゼルスから帰国して、回転寿司屋へ直行した。連れと二人、帰国後の日本の空気に触れる前から、帰ったらいの一番に寿司を夕飯に、と決めていた。
ロサンゼルス滞在の一ヶ月半、私たちは、それはお決まりのアメリカンフードをついばむ毎日で、普段は無口な胃袋もさすがに疲れ果てて限界だったのだろう。脳みそもすっかり、
「さっぱりした日本食、寿司を食べよ!」
とまるで私たちに伝令しているようだった。
その時でさえ、私は回転寿司というものに慣れていなかった。
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