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おばさんの夏休み工作と妄想

かなり不器用なくせに身の回りのものを手づくりしたくなる性分で、それが大して節約にもならないし、買った方がよっぽどオシャレに収まるのがわかっていても、工作の妄想が楽しくて実にやめられない…。自分の手作り作品は頭の中では完璧、でも、だいたいこの妄想をはるかに下回る出来具合に軽く落ち込んだりすることの方が多い。

今回思いついてしまったのは複数口ある電気タップ&ケーブルカバー。Amazonで見たら2500円ぐらいで買える。(こんな感じ)買った方が早いか…と、何商品かネットでサイズ、金額を検索し見れば見るほど、自分で作れそうな構造。そりゃ、そうだ。ただタップを覆うだけだし、両サイドにコードが抜ける穴、もしくは隙間があればいいんだから。…と思ってしまうと、「よし、やるか!」とまたしても不器用な私のDIY魂に火がついた

TOPに掲げたのはホームセンターでサイズカットしてもらうための図面。今思えば、これで出来ると思い込んでる私の浅はかさ…。

早速、ホームセンターの資材館でこの手書き図面の全寸法が収まる1枚のベニア板を発見、お値段は300円弱。「お、今回はDIYやったもん勝ちの節約になるかも。」と、出来上がる前の皮算用(笑)。こんな板なら木工ボンド貼りつけて簡単につくれそうじゃん…と、軽い気持ちで近くにいたお店のスタッフ(研修中)に聞いてみた。「んー、ボンドじゃ強度が足りないんじゃないかなぁ、たぶん、直ぐ潰れてしまうと思いますよ。…あ、すみません、Wさん、このお客さんですが…」と、もう一人の店員にも私の軽い相談を伝えてしまい、私はやや恥ずかしさを感じた。この資材館はホームセンター本館とは別の建物で、大工や工務店など木材を扱うプロの客が多い。私のような素人相談はさらりとかわしてくれてよかったのだ。

私の相談を共有されてしまったWさんは研修中おじさんより若めで、マスク越しに垣間見える人相は温和な30代後半か。しばし考え込んで、「…そうですね、角材をつけて釘で打つ方がいいんじゃないかな…、角材は何がいいかな…」と角材を一緒に探してくれた。そのうち研修中のおじさんは「ちょっと戻ります」と言ってその場を離れ、資材館は"小学生の夏休み工作"レベルに付き合うお兄さん(Wさん)とおばさん(私)の、たぶんいつもとは違ったゆるーい時間が流れていたと思う。

…が、それもつかの間、いかにもこれからお仕事風な大工ファッションのプロや、DIYに手慣れた男性客が徐々に増え、高度な専門用語を交えた質問を私たちに割込んで投げかけてきたり、さっさと品物を手に取りレジに並びはじめたり、購入した木材のカットを依頼してきたり、資材館本来の要望が戻ってきた。Wさんはその都度「ちょっと、すみませんっ。」と言っては慌ただしく右往左往し始め、私は瞬く間に放っておかれてしまった。さすがに私もだんだんイライラしたが、私のレベルごときで手を煩わせては申し訳ない。車に置いてきた愛犬も気になったので、愛犬連れてホームセンター本館に買い物してくることで、Wさんに時間的余裕をお渡しして、私はしばし資材館を離れた。

15分か20分ぐらいして資材館に戻ると、Wさんはまだてんてこ舞い状態。私が思いのほか早く戻ってきた、ようで、小声で「すみませんっ、まだ出来てなくて。。。」と申し訳なさそうである。そして、従業員用無線マイクで研修中おじさんを何度か呼び戻していて、その内容が「さっきからずーーっと待っているお客さんのカットがまだできてないんだよ」と、明らかにプロ客より私に気を使っている。「…いやいや、いいって。こっちは小学生の工作みたいなもんだから。」と、すでに30分以上待たされている私のイライラ感は、このWさんの焦りに同情していつの間になくなっていた。

私が「こっちも客なんだよー!」と怒るには金額が安すぎるし(金額の問題じゃないかもしれないけど)、「てきぱきやってくれよ!」と腹を立てるのはお門違いってもので、そもそもの私のアイディアが中途半端で起こった出来事だ。そう思うと、この際、Wさんがどこまで私に付き合ってくれるのか最後まで見届けよう、という気持ちになって、また30分ぐらい待ったんだと思う。

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(買った角材とべニア板)

Wさんは薄いべニア板同士を直接ボンドで付けるのではなく、板(面)の長さに併せた角材をまずボンドで貼り付け、そして釘を打って図面のように形成する、という提案でなかなか進まなかったのはカットした私のべニア板を見ながら、それに合う角材のサイズを決めたかったようで、無線マイクで呼び戻されたスタッフ(研修中)が、私のべニア板をカットして、ようやくWさんが進み始めた。

彼は角材のサイズを吟味し、私の手書き図面のサイズを見ながら、彼は独り言をつぶやきながら引き算して角材をカットしてくれたようだ。薄いべニアと言えど、2〜3ミリの厚みはある訳で、角材が各ベニア板と同じ長さでは成り立たない。当然ながら私の図面にはそんな計算など全くナシ。

すべての材料が揃ったと思われるところで、図面を見ながらWさんと一緒に"完成形"を組み立てて各サイズをチェックしたが、どう引き算したのか、1本の角材が明らかに短い…。散々待った挙句だが、小学生並みの工作に真摯に向き合ってくれたWさん、気づいた私が先にその間違いを指摘するのもはばかられる。とりあえず組立てが終わろうとするところでWさんが気づいた。(たぶん)赤面して「あれ、間違えたかな。…だ、大丈夫です。まだ角材余裕あるから、またカットしてきます。」と、再び奥のカット場に走っていく。

「彼は一体、何回カット場とこのレジ場を往復してるんだろう…」と思いながら、以前は3回までサービスだった木材カットが、現在は1回目から料金30円に変更されているレジ脇の貼り紙を見つけた。ベニアで3回、角材で6回+間違い1回…計10回で300円。材料費と同じぐらいのカット代…。ま、いいか、こんなに一生懸命やってくれているだもんな。と、私は心底惚れるぐらい感謝し、彼が最終カットを終えて戻って来るのをまた待った。

そして、ようやくお会計。材料費は確か380円ぐらい、プラスカット代。それでも安く済んだ方だ。結局1時間半ぐらい資材館にいたけど、私も何だかWさんのお客様対応に満足して今や穏やかな心地だった。すべてを成し遂げ、レジに立ったWさんは「今回は本当にお待たせしちゃったんで、カット代はいいです。」と言う。え、マジ⁉️ 何、この人、380円のためにあんなに考えて、時間つかってくれたんかい。マジ神対応じゃんーーー。そして、Wさんは更に、一緒に待ってくれた私の愛犬に向かって「待たせちゃってごめんねー。静かにしててくれていい子だったね。」とまで言った。

わー、マジ惚れる。素敵すぎるよ、Wさん💛。うちの犬がWさんにまとわりついてその場を離れない小技でもしてくれたら…なんてその時妄想もしたんだが、それはなかった。なので、今は出来上がった自作テーブル電源タップをWさんに見せに行こうかと妄想してる。(絶対、行かないけど。)

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