慣れと速さ

サニブラウン選手が日本選手権を優勝した。素晴らしいレースだったが周囲とは裏腹に本人はさほど興奮もせず淡々と語っていた。

私が現役の頃、海外でレースをするようになり、帰国する度に気になったのは選手の勢いだ。日本の選手の技術レベルは高い。またトレーニングも緻密で、知識も豊富だ。ただ、勢いだけが違う。その勢いに重さがある。日本が普通の車だとすると、世界は勢いがついた10トントラックのようだった。ぶつかると轢かれそうな重さと勢いがあった。

高速道路を走っていれば目が慣れるように、そんな世界に身を置いているといつしか自分の当たり前がそちらに変化していく。テクニックよりも勢い、軽快さよりも重量感。それを優先して当たり前という考えに自然になっていく。

アスリートといえど毎日見ているもの、聞いているもの、感じているものからは逃れられない。理想ではなく、当たり前によって選手のレベルは決まる。今彼は何が当たり前の世界を生きているのだろうか。





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