老いる中での戦い方

将棋の羽生さんと話をした時に、記憶力判断力のピークは20代中盤であって、その後は衰退していくので戦い方を変えてきたという話をされていた。伊集院光さんも発想の豊かさは若い時がピークだったとおっしゃっていた。スポーツでも似たようなことはあって、私のベスト記録は23才の頃だった。他の選手を見ても概ね22-27才の間がピークだと思う。

人間には限界がないと言われるが、実際には人は必ず死ぬわけでその意味でも限界はある。更に言えば成長を個体の観点で見ると、可能性を狭めて特化していくことだと言える。赤ちゃんをどの言語圏に置いても適応するのは最初は何も可能性が狭まっていないからだ。その後環境に適応する。言い方を変えれば他の言語に適応できる可能性を狭め主要な言語にリソースを割り振る。

しかしながら年齢を重ねても伸び続けるものもある。例えば洞察力は様々な経験を経ることで高められると思う。単純な能力ほど加齢の影響を受けやすい。

スポーツの世界でいえばバネと言われるような瞬間的に弾む力は若い時の方が優れている。そもそも年齢を重ねるとスポーツ選手は関節がすり減り腱を痛めていくので、ある年齢からは弾めないどころか痛みすら出てくる。そうなると例えば短距離でいえば年齢を重ねた選手は激しく跳ねるように走っていた動きを水平方向にスライドするように変える。出す力全ての前方方向への推進力に変え、効率を高めることで勝負する。

スポーツは単一の能力に支えられているわけではない。例えいくつかの機能が衰えても、総合的には能力が高まるということは十分にあり得る。単一の能力に支えられる強さであれば、年齢とともに衰退せざるを得ない。複雑さが増すほど、身体の単一の能力に影響されにくいものほど、また一人ではなく集団で行うものであるほど、年齢が高くなっても戦える。

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