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タイムリミットを気にしすぎている(ファジアーノ岡山2023前半戦感想)

※この記事では、2023年J2シーズン折り返しに際しての今年のファジアーノ岡山とその周辺に抱いた管理人のフワッとした感想を綴ります。
戦術的に細かい話は全く触れませんのであしからず…。




J2の15シーズン目(J1昇格未経験)にしてこんなに前面に明確に「優勝」を打ち出したのは初めて

勝ち点は積めないが選手層は厚くなった

「J2の頂へ」というフレーズの下に、クラブ史上初めてJ2優勝を明確に掲げて挑んだファジアーノ岡山の2023シーズン、前半21試合が終了。
その結果は6勝11分4敗、勝ち点29の11位!

これまで他人事としてよく見てきたわけですよ、「今年は優勝間違いなし!」みたいに充実したオフを過ごした感じのチームが、シーズン入ってからなかなか結果が出ないというやつを…。

あ~これか~!!こういう感覚か~!!!

と、当事者になってそのもどかしい感覚をようやく認識した次第です。

そもそも優勝できる戦力なのかという客観的な議論はありますが、少なくとも前年3位(クラブ史上最高)に入って、そのメンバーの大多数が今年も残留しているわけなので、そりゃ優勝を掲げる以外なかろうという感じで、その目標設定に何の異論もないわけです。
結果が出てないだけで。

なぜ勝ち点が上位に届いていないかというと、やはりリーグ最多の引き分けの数の通り「勝てそうな試合を勝ちきれない」ことが原因なのでしょう。

その要因は、ミスからの失点が多いとか色々挙げられはしますが、やはり木山監督がことあるごとに訴え追求している「1点取ったら(守りに入らず)追加点を取りに行くサッカー」が結果に現れてないということ。
シンプルに言うと得点がまだまだ足りない。

頼りにしているFW陣にゴールがなかなか生まれない(得点以外での貢献は大きいけど…)という点と、昨年よりセットプレーがうまく機能していない点はやはり目に付くところです。
どうにかしようと模索しているのは伝わるのですが、やはり生き馬の目を抜くような苛烈なJ2の戦い、昨年できたら今年もできるだろうという理屈は通用しないものですね。
昨年が上手く行き過ぎたのではというのもありますが…

ポジティブな面にも触れると、今のファジアーノ岡山は過去例を見ないほど選手層が厚い。
昨年に比べて離脱者の多い今シーズンであり、試合ごとのメンバーの入れ替わりもかなり多い印象ですが、それでも毎試合クオリティをあまり落とさずに来れていると思います。
ポジションによっては選手の選択肢が多すぎて「この人をベンチ外にしないといけないのか…」という嬉しい悩みも前半戦でたびたび感じましたからね。

でも結局、いくらベンチ外の面子が充実していても、試合に出る11人+交替5人だけで勝利という結果を見せられるかどうかが全て。
選手選択の幅をいかに後半戦に向けてアドバンテージにしていけるか。これが課題であり、大いなる希望だと思っています。

10909人が集まった山形戦。前半ホーム戦で1万人を超えたのは3試合でした


未来は厳しいが、希望に溢れている

さて、今季はチームのパフォーマンスに対して、ネット上で寄せられる不満の声がかつてなく高まっているような印象を受けます。ギスギスしている。

それは開幕前に「J2の頂」を目指すというクラブの煽りと現状とのギャップのせい、と言ってしまえばそれまでだし、こういう期待値爆上げのシーズンというもの自体が初めてなので、歴史を重ねたチームなら毎年当たり前のように味わっているギスギス感が新鮮に感じられている面もあるでしょう。

ただ、ファジアーノ岡山の場合はそれだけでなく、クラブが明確に
「市民クラブとしてJ1昇格できるタイムリミットが迫っている」
と訴え、今が勝負をかける時だとサポーターを巻き込み意気込んでいたから、という背景もあります。

大企業をバックにした資本力のある新興クラブが増えるとともに、Jリーグ自身が一握りの上位カテゴリークラブに分配金を集中させる流れとなっている現状、もう数年以内に資本力のない地方クラブにとってJ1昇格がノーチャンスになってしまうだろう…ということですね。

2022年初の新体制発表会では、クラブ社長自らその点を訴え、だからこそ今一丸となって昇格を果たそうと呼びかけたことが話題になりました。
※たいへんよくわかる解説記事
ファジアーノ岡山北川社長の会見を解説してみた|Zerofagi (note.com)

だからこそ、その「最後かもしれない大チャンスの年」に思ったような結果が出ていない現状に、今年だけでなく、これから先の未来まで閉ざされるような絶望感をにじませたような不満の声が発せられているという面はあると思います。
まるで、今年がこの状況ではもう永遠にJ1に昇格できないみたいな…(そこまで言ってる人はさすがにいませんが)

確かに、今年の結果は置いておいても、地方の中小クラブにとって未来は決して優しいものではないでしょう。
といいますか日本のスポーツ界、もっというと縮小に向かっていく日本社会自体が厳しいわけなんですが。
その現実を正面からサポーター、スポンサー、県民、全国のサッカーファンに共有したファジアーノ岡山というクラブの姿勢はとても正しいものだと思います。

ただ、それは決して未来に絶望するためではなく、危機感を共有した人たちが一丸となって難局を乗り越えて、ポジティブな未来を迎えるための、前向きな訴えなわけで。
目の前の試合の結果への絶望感を深めるためのものではないのです。

厳しい未来を見据えながらも、クラブは地道に努力してその規模を拡大し続けています。県内施設の指定管理の実績も着々と積むなど、県民の暮らしに根付くクラブへの道程を着実に進めていると言っていいでしょう。
そして何より2023年上半期は、クラブが明確に「新スタジアム建設」の訴えを打ち出すという、ファジアーノ岡山の歴史が大きく動いたタイミングです。

ファジアーノ岡山は今サッカークラブとして、間違いなく前へ進んでいます。
ピッチ上の状況だけ見て、応援する側が先回りして勝手に絶望している暇などないはず。(いや一喜一憂はしますけどね、そりゃ)

大仰な話になってしまいましたがつまり、未来は厳しいのだろうけど、もうちょっとクラブを信じよう、そして今のサッカーを純粋に楽しもうということです…。
もちろん今のサッカーはつまらない、楽しめないという人もいるでしょうし、そこはうまく距離を取っていってほしいですね。面白そうな状況になったらまたチェックするというのが趣味としては適切な距離感だと思います。

前半戦のMVP

最後に、前半戦のMVP選手を挙げておきたいと思います。

出場機会を得てそのサッカーのうまさを如何なく見せつけているステファン・ムーク選手、新加入ながらもはやチームの要となっている鈴木喜丈選手なども捨てがたいのですが、やはりここはMF仙波大志選手を推したい。

しゅうじさん 8才 作


その類稀なセンスで見せつけるドリブル突破などはまさに「お金を払って見たい」プレー。
個人的には、彼が良い意味で「王様」のように振る舞えるチームになるといいと思っているんですが。仙波選手が前向きにアクションを起こした瞬間、チーム全体が連動して一気呵成に分厚い攻勢を仕掛けられるようになると、さらに得点機会は増えていくと感じます。

そして何より、仙波選手はクラブに、今までなかった大きなものをもたらしました。
選手とマスコットが絡む文化というものを…


基本ファジアーノ岡山というクラブは、選手とマスコットが絡む機会というのがほとんどなかったのですが、仙波選手はグイグイ絡む。
自身がホームゲームでヒーローになった試合は、ヒーローインタビュー後にお約束のようにファジ丸ともつれあうのが定番の流れになってきています(というかホーム勝利時の仙波選手のヒーロー率がやたら高い)

広島ユース育ちはマスコット偏差値が異様に高いという定説がありますが、仙波選手もまさにエリート中のエリートというわけですね…。
参考:絡むと出世するマスコット・サンチェ~サンチェと仲良しな広島選手まとめ~ : Jリーグマスコットのことばかり考えるブログ(旧館) (livedoor.jp)

そして…

いつの間にか「勝利時のヒーローはファジ丸と絡む」というありがたい流れが出来つつあります。仙波選手が作り出した流れ…!

問題は、この光景がホームで勝ったときしか見られないということですね…。
今年まだホームで4回しか勝ってないので、そういう意味でも後半戦はもっと勝ちまくってください(アウェイでも)。
頑張れファジアーノ岡山!

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