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『水深ゼロメートルから』は山下監督の一つの到達点

『水深ゼロメートルから』山下敦弘監督

『アルプススタンドのはしの方』に続く、高校演劇の名戯曲を映画化した『水深ゼロメートルから』。
監督は山下敦弘監督で、『リンダリンダリンダ』などの山下監督の女性映画の中で、現時点の到達点じゃないか?!と思える傑作。

まず、自分も含めて中年男性のクリエイターが若い女性を描く時に陥りやすい「願望」やら「嫌悪」やら「性的な消費」などの気持ち悪い要素が全く無い!!!変に生々しい感じもなくてフラットで心地よい!!!
なんというか、すごいバランスの上にある!!!

演技に「リアルでしょ!」みたいな圧がなく(日本映画の本気度の高い作品にたまにあるが、あれリアルに見えないよね…)、フィクションの中で輝く風通しの良いリアリティって感じ。すごくいい。

物語は「女らしさ」に戸惑う高校生たちの素直な心情がゆっくりと沸点に向かう。
舞台は空っぽのプールが全体9割なのに、撮影の高木風太が切り取るショットの豊かさで、とても映画的な空間になっている。

山下監督曰く、昔は照れたけど、今は素直に撮れるようになったと。背伸びしてない自然体だからこその骨太感が、演出家としてのスケールアップに感じた。傑作。


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