「がんを勉強したい!」新卒から今も変わらない思い

こんにちわ、やくざいしFatsです。
私はとある地方のがん専門病院に勤めてますが、今回はなぜそこを就職先に選んだのかについて、お話したいと思います。

専門病院を志したきっかけは家族のがん

地元のがん専門病院に入職したきっかけは、父方の祖父母がどちらもがんで亡くなり、がん患者さんと関われる病院に行きたいと思ったことです。あとは、漠然と“最先端なこと”をやりたいな〜と思ってました(笑)

就職活動自体はそこまで苦労はしませんでしたが、一部の病院で課題だった薬学に限らない内容のペーパーテストは地味に大変だったかもしれません。

面接は小手先のHow to 本みたいなのを読んでやるのはあまり好きじゃなかったので、小細工なしで挑みました!笑

なぜ地元で就職したかというと、単純に地元が好きで、あまり出たくなかったというのが本音です。あと、最先端医療ってなんかカッコいいし、その経験は絶対に自分の糧になるだろうと思ったのが、専門病院を選んだ理由ですね。

忘れられないターミナルケアの経験

調剤、発注、混注、病棟、いろんなチーム、製剤、治験と、病院薬剤師としての業務はひと通り経験しました。

今の職場だからこその経験は、とにかく人の生死に関わる場面が多いこと。「人生とは、生きるとは、死ぬとは……。」本当に色々考えさせられます。

1つエピソードを紹介すると、自分が初めて「どうやって死にたいか」を聞くことができた患者さんがいました。本人の希望を叶えるため、当時の拙い知識で一生懸命ターミナルケアをやったことは忘れられません。その経験が、今の自分の土台となっています。

このように早い段階から、最先端の医療やがんの終末期にも関われたことは、自分がやりたかったことでもあり、今でもよかったと思っています。一方で、最初からガッツリ専門領域に進んでしまったので、がん以外が本当にわからないのが、自分にとって課題かもしれません…。笑

“最先端医療”ってどんなものか

がん専門病院では、新しい治療や薬剤の投与に携われたり、治験も多くやっているので、未発売の分子標的薬や新機序の薬剤をいち早く勉強できる機会は貴重です。

ただ、実際の現場では勉強したことが通用しない例ともたくさん出合いました。たとえ教科書通りの対応をしたとしても、時によっては上手くいかないところが難しさであり、だからこそ経験が必要で、勉強しがいもある領域だと思います。

とはいえ、教科書知識もベースとしては大切です。例えば、オンコロジー領域では数年前から免疫関連副作用(immune-related Adverse Events:irAE)という免疫チェックポイント阻害薬に伴う有害事象への対応が求められるようになりました。

僕の学生時代にはまだ免疫チェックポイント阻害薬が世に出ていなかったため、当然大学では習っていないのですが、この副作用は自己免疫疾患と関わりが深いことを知り、大学生ぶりにノートをひっぱり出して復習しました(笑)。今になって新しいことを学ぶのは楽しくもあり、なかなかピンとこないことも多くて大変でもありますね。

専門性を高めるためにはCommon知識も必要

専門性を高めようとすると、どうしても周辺疾患やCommon diseaseの知識を磨く必要が出てくるので、むしろ尖った専門性が他領域の知識も引っ張り上げてくれていると感じることが増えました。

専門性を高める手段として、資格の勉強は体系的に学び直す良いきっかけにもなるので、挑戦してみるのはお勧めです。

薬剤の適応・動態などだけではなく、機序から細胞カスケード、標的蛋白の体内分布などまで知ると、なぜそういった有害事象が出やすいのかまで理解できて、より深く薬剤のことを知ることができると感じます。

先に挙げたirAEもそうですが、現場では有害事象への対応が学ぶきっかけとなることが往々にしてあります。特にがんは全身疾患ですから、どうしても付随して色んな症状が出るので、そこからCommonの知識につながっていくことは非常に多いと思います。

例えば、肝転移から肝性脳症のような症状があり、腎不全も合併していてなかなか症状改善がみられなかったケースで、腎機能による排泄遅延を考えてBCAAの投与配分を調整したところうまくいった事例などを経験しました。

トリガーはがんでありながらも、知識としては肝不全・腎不全・栄養などが求められたので、このあたりを深く学ぶきっかけになりましたね。

尖った武器がアイデンティティや自信になる

以前、治験業務に移るため僕が担当していた病棟を離れる際、それまで一緒に働いていた外科医から、「自分は手術室が主戦場だし、今まで『薬剤師が病棟に来る』って言ってもイメージが湧かなかったのが本音なんだけど、来てくれて本当に助けられた。いなくなられたらもう困るというか、いてくれないといけない存在だと思い知らされました。人事のことはわからないけど、是非また戻ってきてね」と言ってもらった時は感激しましたし、より頑張らねばと思えた出来事でした。

一生懸命やっていたら、きっとどこかでこういう経験ができると思いますし、尖った自分の武器を持つというのは薬剤師としてのアイデンティティや自信にもなります。自分自身の尖った武器は何かというと、がんと緩和領域の知識と、栄養管理ですね。また、今は治験事務局業務全般ができるという点も増えました。

治験は実施している施設がある程度限られているので、違う現場で活きる場面は少ないかもしれませんが、病棟担当としては、チームに任せるほどではないレベルの緩和・栄養管理は概ね任せてもらっても、医師に治療に専念してもらえるくらいの自信はついたかなと思っています!

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