小説⑭

「長方形の傷跡だが鑑定したところ、被害者の家に置いてあったトロフィーと一致したそうだ。あれが一つ目の凶器だ。」と犬飼。

小林は飲みかけのコーヒーを溢してしまった。

「え?栗林さんも共犯って事ですか?」

「いや、そうじゃない。栗林にもれっきとしたアリバイがある。別居してからすぐに浮気を疑ったそうだ。会ったときは誤魔化していたがあの涙も嘘泣きだろう。本当は旦那を殺せて清々しているのだろうと思う。悪魔みたいな女だ。栗林の過去を調べたのだが、昔に大学の演技サークルに入っていたらしく演技はなかなかのものだったらしいぞ。」

小林は騙されていたのだ。栗林のあの可憐な表情に。あの涙に。

橘は
「しょうがないさ、男は女性の涙に弱い。ちなみに俺と犬飼は最初からわかっていたけどな」と笑いながら小林の肩を叩く。

「僕は理解が出来ていなくて、一体どう言うことなんでしょうか」と小林の頭にはハテナマークがたくさん浮かんでいる。

そんな小林を見て橘がカラカラ笑いながら
「難しく考える必要なんてないんだよ、小林君。そもそも殺害現場の場所が違うし、凶器は全部栗林の家にある。森を隠すには森ってことだよ」

小林はまだ腑に落ちないそうで、栗林と林を集めて説明をすることになった。

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